科哭青花
職人街から遠く離れた山奥から、降り注ぐ水晶の雨と戦いの行く末を眺めている男がいた。
セブンスの一人。
星導生真は、いつの間にか拾っていた水晶を転がしながら、手に持っていた本を開いた。
「セブンスの一人、科哭青花。彼女の人生は、空虚なものだった」
彼が開いたページは、科哭の半生が記されたページだった。
科哭青花。
彼女は、才能に恵まれた子供で、幼い頃から、何をやらせても簡単にこなしてしまった。
加えて、彼女には、他者を圧倒する強力な能力を有していた。
それ故に、科哭は、大した努力もせずに、退屈な日々を過ごしていた。
何もせず、何もなさず、ただただ無意味な日々を過ごす中で、科哭は、あることを考えていた。
多くの人々から恐れられる自分の能力。
この能力がどこまで出来るのか試してみたくなってしまった。
科哭は、その才能を発揮し、多種多様な毒を生み出した。
研究によって生み出した毒を、様々な人間に投与し、実験を繰り返した。
それだけでは飽き足らず、彼女は、その毒を使って、山奥の村を一つ滅ぼした。
以降、彼女はその村に居座り、さらに多くの毒を生み出していった。
研究の果てに、彼女はセブンスの一人に選ばれた。
それ以上、科哭青花について語ることはなかった。
自分の才能の上に胡坐をかき、その才能を、星を殺すことだけに費やした、哀れで怠惰な少女。
これが彼女の全てだ。
「……科哭くん。僕の知る未来では、君が生き残るはずだった」
星導は、本を閉じ、夜空を見上げる。
そのまま、手の上で転がしていた水晶に息を吹きかける。
すると、水晶は粉々になり、夜の空へと散っていった。
「しかし、彼はその未来を乗り越え、君を殺した。……まあ、当然の結果か。科哭くんには、自身の才能しかなかった。そして、鳴神璃空には、それを上回るだけの絆が、繋がりがあった」
遠く離れた職人街で、倒れ伏す璃空を星導は眺める。
傷だらけになりながらも、手繰り寄せ、掴んだ勝利。
そんな彼のそばには、同じく、傷だらけになって倒れている者たちがいた。
それは、まるで深く黒い空の中で、一際輝く光とそれを支えるように光る星々ようだった。
鳴神璃空の在り方を表した空に背を向けて、歩き出す。
「これから先、君がどういう運命を歩んでいくか楽しみにしているよ。──さて、彼にどう報告したものか」
彼は、変わり始めた世界の行く末を想像しながら、その場から姿を消した。
後に残ったものは、無情な静寂。
そして、星導が、怠惰な彼女に手向けた一輪の花だけだった。




