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リバース・ジョーカー  作者: 遥華 彼方
第2章 鳥籠のコルリ
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科哭青花

 職人街から遠く離れた山奥から、降り注ぐ水晶の雨と戦いの行く末を眺めている男がいた。

 セブンスの一人。

 星導生真は、いつの間にか拾っていた水晶を転がしながら、手に持っていた本を開いた。


 「セブンスの一人、科哭青花(しななきせいか)。彼女の人生は、空虚なものだった」


 彼が開いたページは、科哭の半生が記されたページだった。


 科哭青花。

 彼女は、才能に恵まれた子供で、幼い頃から、何をやらせても簡単にこなしてしまった。

 加えて、彼女には、他者を圧倒する強力な能力を有していた。

 それ故に、科哭は、大した努力もせずに、退屈な日々を過ごしていた。


 何もせず、何もなさず、ただただ無意味な日々を過ごす中で、科哭は、あることを考えていた。

 多くの人々から恐れられる自分の能力。

 この能力がどこまで出来るのか試してみたくなってしまった。


 科哭は、その才能を発揮し、多種多様な毒を生み出した。

 研究によって生み出した毒を、様々な人間に投与し、実験を繰り返した。

 それだけでは飽き足らず、彼女は、その毒を使って、山奥の村を一つ滅ぼした。

 以降、彼女はその村に居座り、さらに多くの毒を生み出していった。

 研究の果てに、彼女はセブンスの一人に選ばれた。


 それ以上、科哭青花について語ることはなかった。

 自分の才能の上に胡坐をかき、その才能を、星を殺すことだけに費やした、哀れで怠惰な少女。

 これが彼女の全てだ。


 「……科哭くん。僕の知る未来では、君が生き残るはずだった」


 星導は、本を閉じ、夜空を見上げる。

 そのまま、手の上で転がしていた水晶に息を吹きかける。

 すると、水晶は粉々になり、夜の空へと散っていった。


 「しかし、彼はその未来を乗り越え、君を殺した。……まあ、当然の結果か。科哭くんには、自身の才能しかなかった。そして、鳴神璃空には、それを上回るだけの絆が、繋がりがあった」


 遠く離れた職人街で、倒れ伏す璃空を星導は眺める。

 傷だらけになりながらも、手繰り寄せ、掴んだ勝利。

 そんな彼のそばには、同じく、傷だらけになって倒れている者たちがいた。


 それは、まるで深く黒い空の中で、一際輝く光とそれを支えるように光る星々ようだった。

 鳴神璃空の在り方を表した空に背を向けて、歩き出す。


 「これから先、君がどういう運命を歩んでいくか楽しみにしているよ。──さて、彼にどう報告したものか」


 彼は、変わり始めた世界の行く末を想像しながら、その場から姿を消した。

 後に残ったものは、無情な静寂。

 そして、星導が、怠惰な彼女に手向けた一輪の花だけだった。


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