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リバース・ジョーカー  作者: 遥華 彼方
第2章 鳥籠のコルリ
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対立

 「鳴神くん、悠乃……!!」


 「はあ……はあ……悪い、待たせた!」


 悠乃の案内で、灯里の部屋にたどり着いた璃空。

 息を切らして部屋の中に飛び込んだ二人は、中にいた灯里と和希に出迎えられる。


 「……つ、疲れた」


 「ありがとな、悠乃」


 走り終わってぐったりしている悠乃の頭を撫でながら、璃空は彼女に感謝する。

 璃空が囚われていた場所は迷宮のようになっており、悠乃の案内がなければ確実に迷っていただろう。

 悠乃は何も言わず、ただ乱れた息を整えていた。

 彼女の頬が少し赤いのは、きっと走って熱くなっているからだろうと璃空は思った。


 「それで、何があったんだ?」


 「……結論から言うと、職人街の人々が全員殺されたかもしれないの」


 「は……?」


 本題に入ろうとした璃空に、灯里は現在の状況を端的に伝えた。

 その言葉に、璃空は固まってしまった。

 一体どういうことなのか。

 璃空が何かを言う前に、和希が口を開いた。


 「俺たちが撤退した数時間後。予想通り、Orpheusが職人街にやって来た。何かあったときのために、こまめに連絡をするようにしておいたんだけど、その連絡が急に途絶えたんだ。七波彩乃に確認したが、どうやら、彼女の「眼」を使っても、職人街の様子が確認できないらしい」


 「誰かが、職人街に干渉できないように細工をしているんだと思う」


 「だから、殺された「かも」しれないってことか……だったら、急がないとまずいだろ……!?」


 簡単な説明ではあったが、事情を把握した璃空は、これが一刻を争う事態であることを理解した。


 「それが……」


 「……七波彩乃は、俺たちが職人街に向かうことを許可しなかったんだ」


 「な、んだと……?」


 七波彩乃と話をした和希は、当然、職人街に向かう了承を得ようとした。

 しかし、彼女が言い放った言葉はひどく冷徹なものだった。


 「既に職人街に匿われていた天霊は保護した。これ以上、余計なことに首を突っ込むな、だそうだ」


 「何だよそれ……!! 職人街を見捨てるっていうのか!?」


 「それが、ゾディアックの方針だ」


 璃空は七波の方針に怒りを露わにした。

 ゾディアックと京都職人街は協力関係にあるはずだった。

 お互いに助け合って、今日までやって来たはずなのに、それを簡単に見捨てられることが璃空には理解できなかった。


 「私たちも、お世話になった職人街の人たちを見捨てるなんてできない。出来ないんだけど……」


 灯里と和希も璃空の考えに近い想いを抱いていた。

 だが、灯里の歯切れの悪い言葉に璃空は首を傾げた。


 「──残念ながら、二人はここから出させないし、ここでの能力の使用も禁止させてもらった」


 灯里が言い淀んだ言葉を、背後から聞こえる声が続けた。

 振り返ると、そこには見知らぬ女性が立っていた。


 「初めまして、だったよね? 私は、筒乃守深雪(つつのもりみゆき)。同じゾディアックのメンバーとして、よろしくね、鳴神璃空くん?」


 筒乃守深雪と名乗った女性は、優しく微笑みながら、手を差し出してくる。

 困惑を隠しきれない璃空は、一応、応じておこうと彼女に近づこうとする。


 「──ダメ!!」


 「っ!?」


 しかし、灯里の必死な声が一歩踏み出そうとする璃空を静止させる。

 そこでようやく気が付いた。

 深雪の身体の周りには、白い雪のように、霊力の粒が浮かんでいた。


 「……余計なことを言わないって制約もつけておくべきだったみたいね」


 璃空の警戒した視線を受けて、深雪は不機嫌そうに差し出していた手を引っ込めた。


 「私の能力名は『繋ギノ契リ(コネクション)』。私の霊力を取り込んだ相手に、何らかの制約を取り付ける能力よ」


 深雪の言葉に、璃空は一歩後ずさる。

 もし、彼女の言葉が事実なら、絶対に彼女に近づくわけにはいかなかった。

 近づけば、灯里や和希と同じく能力を封じられ、ここから出られなくなる。

 その先に待つのは、職人街の人々の死である。


 「そんなの……許せるわけないだろ……!!」


 璃空は、最悪の結末を回避するために拳を振り下ろす。

 雷撃を纏った拳は、床を粉砕し、璃空の身体は穴に吸い込まれるように、下の階に落ちていった。

 和希の能力が封じられてしまったせいで、職人街にすぐにたどり着くことは難しくなってしまった。

 それでも、自分の能力があれば、どうにか職人街にたどり着くことが出来ると判断した。


 「無鉄砲にもほどがあるわ。まあ、高坂くんや灯里に頼れない今、彼一人で出来ることなんてたかが知れてるわ」


 しかし、床に開けられた穴を見つめる深雪や灯里、和希はそう思っていなかった。

 確かに璃空の力があれば、職人街にはたどり着けるだろう。

 ただし、それは、拠点の外に出られれば、の話である。


 「うん。そうかもね。……だけど、鳴神くんは一人じゃない」


 そのために深雪は和希と灯里の助力を封じ、そして、二人は一つの可能性に賭けることにした。


 「悠乃。鳴神くんを助けてあげて?」


 「……え?」


 「君の能力なら、俺と同じようなことが出来るはずだ」


 「ちっ……そういうこと」


 灯里と和希の思惑に気が付いた深雪は、舌打ちをして、悠乃に手をかざす。


 「お願い、悠乃!!」


 「あ……」


 困惑する悠乃の目に映ったのは、深雪の冷たい視線と灯里の真剣な表情だった。

 それは、先ほど見た璃空の表情と似たものだった。

 深雪の視線は、悠乃の中の青い光景を思い出させ、そしてその光景の中にはない灯里の表情に、悠乃は自然と背中を押された。


 「……!!」


 悠乃は、意を決して、璃空が空けた穴の中に飛び込んだ。

 そして、少女がいた場所に、深雪の霊力の弾丸が撃ち込まれた。


 「……やってくれたわね」


 璃空と悠乃がいなくなった部屋の中。

 深雪は、目くばせをする灯里と和希を睨みつけて静かに呟いた。



 「くそっ!! 一体どこが出口だよ!!」


 下の階に降りた璃空は、出口を探して走り回っていた。

 ここに来た時から今日に至るまで、拠点内の構造をほとんど把握できていなかった。

 さらに、移動も和希の能力に頼りきりだったため、どこに行けば外に出られるのか全く分からなかった。

 だが、璃空に立ち止まっている時間はない。

 最悪、壁をぶち破って外に出ればいいだろうと考えながら、璃空は走り続けていた。


 「──っ!!」


 そんな璃空が、急ブレーキをかけて立ち止まる。


 「……そこ、どいてくれるか」


 璃空の前方。

 そこには行く手を阻むように、瓜二つの二人の少年が立っていた。


 「そうしたいのは山々なんだけど、そういうわけにもいかなくてさぁ」


 「悪いけど、三崎さんの命令だ。ここで、倒れてもらうよ。鳴神璃空」


 一人は、好戦的な笑みを浮かべ、右目を中心に青いヒビが浮き上がっている少年。

 もう一人は、冷静な表情で膨大な霊力を吐き散らし、左目を中心に赤いヒビを浮き上がらせる少年。

 明らかに格上な相手の出現に、璃空は、無意識に、雷撃を迸らせる。


 「まあ、一応礼儀として名乗っておこうかな。オレはゾディアックの一人、笹瀬鴻(ささせこう)


 「笹瀬耀(ささせよう)だ」


 「ご丁寧にどうも……!!」


 「さあ、精々楽しませてくれよ? 新入り」



 「──」


 建物の壊れる音。

 ぶつかり合う霊力。

 鳴り響く雷鳴。

 いくつもの音が、眠り続けていた男の瞼をゆっくりと開かせる。


 「……この、霊力」


 男が最初に感じたのは、何年もそばにいた親友の霊力が、巨大な二つの霊力とぶつかり合っているだった。


 「どこに行っても、あいつは面倒な事態に巻き込まれるみたいだな。それにこの霊力……何で、あいつが笹瀬たちと戦ってんだ」


 どうにも不可解な事態に、男はベッドから起き上がる。

 一か月半もの間、眠り続けていた身体は、自分の身体ではないようだった。

 そんな身体をゆっくりと動かし、霊力を全身に巡らせていく。

 数分後、どうにか眠り続けていた身体を目覚めさせた男は立ち上がり、病室を後にした。


 「とりあえず、何が起こってるか確かめるとするか」


 そして、男は風に乗って、雷鳴轟く場所に向かうのだった。


遅くなってすみませんでした!!

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