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リバース・ジョーカー  作者: 遥華 彼方
第1章 泣き虫の雷星
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そして物語が始まる

 「はい、いいよ。楽にしてて」


 その一言で、璃空は閉じていた目を開け、ぼやけた視界で眩しい光を見る。

 いくつかの検査を終え、最後の検査のためにベッドで横たわていた璃空は身体を起こし、検査の結果をまとめる女性、フェリル・レインハートの方に顔を向けた。

 彼女の能力は、構造や身体、理論などありとあらゆるものの欠陥が見えるというものだった。

 そのため、彼女はゾディアックのメンバーの診察を任されていた。

 彼女も元はOrpheusの人間で、七波の誘いに乗って同じタイミングでOrpheusを抜けた。

 どうやら彼女にはOrpheusでは出来なかった自分の研究テーマがあり、そのために七波の誘いに乗ったらしいが、それ以上のことを璃空は知らなかった。

 というか、何となく知らない方が良いような気がしてしまった。


 「そうね……。断裂してた筋肉やら血管やらも治ってるし、無理矢理動かしてた骨ももう平気みたいね。」


 暴食との対峙から一か月半。

 あの日、戦いを終えた璃空を待っていたのは、意識を失うほどの激痛だった。

 目を覚ました璃空に告げられたのは、筋肉と血管の断裂、複数の骨折、そして大幅な視力の低下だった。

 骨折に関しては、奏城との戦いの後からずっと折れたままだったらしく、そんな状態で何回も戦った挙句、自分の限界を超えた動きをしてしまえば、一歩も動けなくなるのは当然だ。

 璃空は完全回復まで一切の行動を禁止され、その間に何度も悪戯を仕掛けられたのは言うまでもないだろう。


 「ただ、やっぱり視力は元に戻らないみたいね」


 フェリルは自分の正面に座りなおした璃空の目をもう一度しっかりと見た。


 「いい? もう二度と、自分の限界を超えて能力を使用しちゃダメよ。度を超えた力は身を滅ぼすなんて分かりきった話でしょ。あなたの場合は、身体的な負担だけじゃなく視神経も擦り切れる」


 ぼやけた視界でもフェリルの顔は真剣な顔がはっきりと映り込む。

 その顔に、璃空は自分の力不足を自覚した。

 今の璃空の限界はすぐそばにあって、自分を見失ってしまえばまた同じことを繰り返してしまうだろう。

 もっと強くならなければと璃空は拳を握った。


 「まあ、そんな無茶、あの子がさせてくれないだろうから心配してないけどね。それに傷を治したのも私じゃないしね」


 フェリルは璃空の後ろにある扉に目を向ける。

 璃空も視線をそちらに向けると、誰かの影があった。

 その人影が誰かを察した璃空はフェリルと顔を見合わせて苦笑いをした。

 毎日悪戯をしに来てくれた誰かが、ずっと自分のことを心配してくれていたのは知っていた。

 早く元気な姿を見せたいと思い、璃空は椅子から立ち上がった。


 「それじゃ、お大事に」


 「うん。ありがとう、フェリルさん」


 璃空はフェリルにお礼を言って、部屋を出る。

 その背中に彼女は手を振った。

 これから彼が歩く苦難な道のりを、どうか無事に歩いてくれますようにと願いを込めて。



 「──あ。終わった?」


 「うん。もう大丈夫だって。ただ、これからは眼鏡が必要だなぁ」


 璃空の予想通り、部屋の外で灯里と灰色の兎が待っていた。

 兎の頭を撫でながら、璃空は検査の結果を灯里に伝える。

 灯里は一瞬心配そうな顔をしたが、璃空の元気そうな顔を見てすぐにいつも通りの表情に戻った。


 「眼鏡かー。鳴神くんなら似合いそうだね」


 「玖遠さんも似合うと思うけど」


 「……だったら、いっそのことファッションショーでもしに行く? 丁度新しい洋服欲しかったし、鳴神くんも着替え欲しいでしょ?」


 「え? まあ、確かに欲しいけど……。でも……」


 璃空は少しだけ返事に困ってしまった。

 楽しそうな表情をする灯里を見れたのは嬉しいのだが、璃空も灯里もOrpheusに狙われてしまっている。

 そんな状態でフラフラと街に出歩けるわけもなく、灯里の提案は却下するしかなかった。


 「よし! じゃあ、行こっか。さっき高坂くんがちょうどいい任務を受けてたんだよね」


 「え!? ちょっ、玖遠さん!?!?」


 しかし、璃空が何かを言う前に灯里は璃空の手を引いて歩き出す。

 その拍子に、兎が璃空の肩の上に登り、くつろぎ始める。

 困惑していた璃空だったが、段々と璃空の口元はほころんでいく。

 

 この先に待っているのは恐らくつらく険しい戦いの日々だろう。

 だが、今の璃空は一人ではない。

 真っ暗闇の中に一筋の光を見出した璃空はもう立ち止まらない。

 泣き虫で情けない自分に別れを告げて、璃空は少しだけ躊躇いながらも灯里の隣に並んだ。

 そんな璃空の顔を見て、灯里は意地の悪い笑みを浮かべた。

 だから、璃空は何か言われる前にずっと聞きたかったことを灯里に質問した。

 

 「──っていうかさ、この兎って何なの?」


 「あれ? そう言えば、説明してなかったっけ? あとで話すよ」


 璃空と灯里は何でもない話をしながら、二人で歩き始める。


 こうして、鳴神璃空の物語が幕を開けた。


これにて第一章完結です!!次回から第二章の開幕です。章タイトルも展開もまだふわふわしてるので今から考えます

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