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悪魔の守り人  作者: ロッドユール
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脱出

「しかし、どうやって、ここから脱出するかだな」

 八雲は立ち上がり、あらためて辺りを見回した。しかし、やはり、絶望的にそこはぶ厚い瓦礫で外界から閉ざされていた。二人は完全に閉じ込められていた。

「どうする?」

 八雲はいつかを見た。

「さあ」

「さあって」

「完全に塞がれてるんですもの。どうしようもないわ」

 そう言って、ミニスカートの埃を払いながらいつかも立ち上がった。

「エメラルダスは消えちまったし・・」

 八雲は、首を傾げ考えた。

「助けが来るのを待つか」

「助けは来ないわ」

「なんでだよ」

「静か過ぎる」

「・・・」

 八雲はそこでハタと気づき、耳を澄ます。確かに、あまりに静かだ。真昼間なのに、何か日常が、というか時間がとまっているみたいに静かだった。多くの学生がいるはずの大学の中で音以前に人の動きが感じられなかった。

「これもエメラルダスの影響なのか?」

「多分そうでしょう」

「・・・」

 八雲は、言葉もなく沈黙する。

「打つ手なしか・・、あっ」

 その時、また小規模な揺れが起こった。その時、二人の足元の床がミシッと鳴った。二人は顔を見合わせる。二人は黙っていたが、同じ考えが頭をよぎったのが分かった。

「・・・」

「・・・」

 二人はしばし黙ったまま見つめ合った。

「もしもよ。もしも」

 しばしの沈黙の後、いつかが切り出した。

「う、うん」

 八雲も、おずおずと答える。

「もしも、私が、グラナダでこの床を突いたらどうなるかしら・・」

「・・・」

 八雲は床を見つめ、そして、またすぐにいつかを見た。いつかも八雲を見ている。

「・・・」

「・・・」

 二人は、同時にまた黙って床を見た。それは賭けだった。

「下手したら死ぬよな」

「どっちみちこのままだったら、飢え死によ」

「ああ」

「これしかないわ」

「ああ」

「・・・」

「・・・」

 そうは言ったものの二人は黙った。

「・・・」

「・・・」

 いつかがグラナダを手にした。二人は息を飲み、確認するように、もう一度見つめ合った。

「・・・」

「・・・」

「いい?」

 いつかが八雲を見る。

「あ、ああ」

 八雲が答えると、いつかがグラナダを床に突いた。

「わあああぁぁ」

 その瞬間、ものすごい勢いで床が崩れた。辺りは一瞬で粉塵に包まれ視界が消えた。


「いててて」

 まだ粉塵の舞う中、八雲は、下の階の床に尻もちをついて腰をさすっていた。

「大丈夫?」

 いつかは抜群の運動神経と筋肉で見事に着地していた。

「成功ね」

「うう、まあな」

 自分が痛んでいるのに、これで成功というのがどうも納得いかなかったが、脱出という意味では確かに成功だった。

「いててて」

 八雲は、全身の痛みを軋ませるようにゆっくりと立ち上がった。

「しかし、よく助かったな」

 八雲は自分たちが落ちてきた、天井を見上げた。そこには見事にぽっかりと大きな穴が空いていた。

「・・・」

 下手したら死んでいたかもしれない。八雲は何とも言えない恐怖が背中にせり上がるのを感じた。

「終わりよければよ」

 そんな八雲を見て、いつかが言った。

「まあ、な・・」

 気軽に言ういつかに、やはり、こいつはただものではないとあらためて八雲は思った。


「さて、これからどうするかだな」

 八雲が辺りを見回した。下の階は、完全に塞がれているわけではないようだった。

「よし、階段までは行けそうだな」

 八雲はそう言いながら、早速階段に向かって歩き始めた。

 しかし、八雲が数歩歩いたかどうかといったその時だった。また床がミシっと音を立てた。

「えっ?」

 その瞬間だった。八雲の周囲の床だけが突如抜けた。

「わああああ」

 八雲の目の前が一瞬で真っ暗になった。

「八雲ぉ~」

 突然目の前の視界から消えた八雲に、いつかが叫ぶ。

「八雲~」

 八雲はさらに下の階へと一人落ちた。いつかは慌てて、空いた穴から下の階を覗き込む。だが、激しい粉塵でまったく状況が見えない。

「八雲ぉ~」

 いつかが大声で叫ぶが八雲からの返答はなかった。


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