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口にするたび異世界転移  作者: 奈名瀬朋也
逢引-道連れ-
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122回109日目〈8〉

 口の中がひどく気持ち悪い。

 まるで吐しゃ物で歯を磨いたようなスッキリしない気分だった。


 俺は込み上げる吐き気を必死に飲み込みながら、今さっき食べたばかりの食用幼虫の味を思い出してしまう。

 異世界を転移するようになってから色々と食べたが、さっきの虫は今まででも5本の指に入れるまずさだった。

 そんなことを考えていると連鎖的に、昔食べたドラゴンの糞のことを思い出してしまう。

 あれもひどい味だったと過去を振り返りつつ、俺は一刻も早く口直しがしたいと思った。

 これはヒサカも同様だろう。

 そして、俺達が二人して舌を出し、店の前で「うえぇ」とうめき声をあげていると――


「あんたら、あんなもんよく食えたな。久々に笑わせてもらった」


 ――虫を売っていた店主が笑いながら俺達に二つの容器を差し出した。


「ほら、おまけだ。おもしろいもん見せてもらったからな」

「おじさん、何これ? 甘い匂いがする……」


 容器を受け取ったヒサカは、すんすんと鼻を近づけて店主に訊ねる。

 すると店主は自慢げに語り出した。


「さっきあんたらが食った虫をゆでて冷やしたものさ。オウマキゲナハは本来そうして食うものだからな」


 直後、店主に「食べてみろ」と促され、俺達は断り切れずゆでて冷やしたあの『虫』を再び口にするはめになる。

 だが――


「あ! おいしい、すごく甘いよ!」

「ああ。これは、確かに」


 ――調理したオウマキゲナハは生食とは違い、驚くほどうまかった。


 生食の時はただドロドロでヘドロの様だった体液は固まり、つるんとしてのど越しがとても良くなっていたし、他にもざらつくような舌触りがあったのだが不思議となくなっている。

 代わりにぷちぷちとはじけるような粒ができていて、それが触感のアクセントになっていた。


 日本にいた頃の食べ物に例えるなら、タピオカゼリー? が近いだろうか。


「なんにでも食べ方があるんだな」


 そうやって思わず感嘆の声をあげた俺を見て、何故かヒサカがくすりと笑った。

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