122回109日目〈6〉
「ああ、そのつもりだ」
ヒサカの質問が何を指しているのかすぐにわかり俺は素っ気なく返答する。
すると彼女は「やっぱり」という反応を見せ、その表情は俺の目にとても煮え切らないように映った。
もしや、ヒサカは俺から『あれ』に誘われるのを期待しているんじゃないか?
自分からは言い出し辛いが、俺の方から誘われたならやぶさかでもない……そんな印象を抱く。
だから。
「なあ、ヒサカ。今日はどうする?」
俺はそれとなく彼女を誘ってみた。
直後、ヒサカは躊躇したように俺から視線を逸らす。
しかし――
「……まあ、いいよ。うん、付き合ってあげる」
――すぐに俺と目を合わせないまま答えた。
「わかった。すこし待ってろ。すぐ済ませる」
ヒサカの覚悟めいた言葉を耳にしたあと、俺は開いていた手帳に《《いつものように》》それを書き込んでいく。
〈122回109日目、昼食。
調理済み、肉(ブタ系統)
生食、果実(リンゴ系統)
生食、野菜(系統雑多)〉
そして、諦めにも似た慣れ切ってしまった想いで、事務的に文末を締めくくった。
〈転移せず〉と。
「よし、いくか」
パタンと手帳を閉じて立ち上がると、ヒサカがそそくさと後に続く。
俺はそのまま彼女を付き従え、冒険者ギルドを後にした。