122回109日目〈5〉
「こいつを新調してくる」
ズグゥが手に持つのは簡素な片手剣だ。
しかし、巨漢の彼が持つとそれはまるでバトルナイフにさえ見えた。
「もう刃こぼれしちまったからな」
ズグゥが凶悪そうに笑って語るこの瞬間だけは、まるで武器を壊すことを楽しんでいるみたいだ。
「もう少し丁寧に扱ってやれよ、この馬鹿力」
「がはは! おめぇにだけは言われたくないな!」
豪快に笑って彼はバシバシと俺の肩を叩く。
これが痛いなんてもんじゃない。
「あと、武器を新調した後はまたいくつかギルドを回ってみるつもりだ」
言うなりズグゥは大口をにやりと歪ませた。
それは彼の「集合に遅れるかもしれん」という意思表示に他ならない。
直後「またぁ?」と、呆れたようにヒサカがげんなりと声を出した。
「お前も酔狂な趣味をしてるな」
「がはは! 何、おめぇにだけは言われたくねぇよ。それに、情報は生きるのに多すぎて困ると言うこともないからな」
彼の持論に俺は反論せず「じゃあ、また後でな」と言って去るその背中を静かに見送る。
ヒサカも「遅れないでよー」と念を押すだけで、ズグゥの趣味……そして、集合時間に遅れるかもしれないということを強く咎めはしない。
実際、彼の情報収集癖に助けられる場面も多いからだ。
俺は大男の背中がギルドの外に消えると、再び手帳に視線を戻した。
すると――
「ねぇ、タケ? その……今日も、するの?」
――どこかもじもじと、言いよどむようにヒサカが訊いてきた。