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口にするたび異世界転移  作者: 奈名瀬朋也
街-休息-
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122回109日目〈2〉

「あ! おいこらヒサカ!」


 仲間の制止もむなしく、ヒサカは馬を走らせ一行の先頭に立つ。

 そして、彼女は晴れやかな笑顔で振り返り叫んだ。


「皆! 街が見えたよ! それも大きい!」

「知ってるよ」


 俺がポツリと呟くと、ヒサカはニカッと笑い街へ向かって馬を走らせた。

 その様子を見て仲間達はやれやれと肩をすくめる。

 そんな中、リーダーのヤサウェイが馬上で街を眺めながら渋い顔をした。


「しかし、街がこんなに近かったとは。これなら昨日わざわざ野営をしたのは損だったかな」


 彼の軽口に仲間達は「確かに」と苦々しく笑う。

 しかし、冒険者をしていればそんな損で済むのは微笑ましい方だ。


「ホント、ふかふかのベットで眠れるのが一日遅れるなんて、竜に食べられた方がマシかもね」


 ヤサウェイの軽口に続いたのはハキという短槍使いの女性だ。


「大きい街だし、ここにはシャワーがあるといいんだけど」


 そう言って彼女は長い髪をかき分けると「先に行くわね」と告げてヒサカの後を追った。

 そんな女性陣の背中を見送っていると、後ろからとりわけ大きな馬に乗った大男――ズグゥが俺の横に並ぶ。


「オレ達も急ぐか。街で待っているのはシャワーやベットだけじゃない」


 彼は野太い声で俺とヤサウェイに告げると、にやりと大きな口を歪ませた。


「金になる冒険をしよう! 仕事が待ってるぞ。討伐任務の一つや二つ引き受けたい。タケもモンスター共と戦いたいだろ? 最近食えるのと出会ってないからな」


 俺がモンスターの肉を好んで食べたがっていると思っているこの大男は「がはは」と笑い「はいやっ!」と掛け声を残すと、女性達の後を追う。


「じゃあ、僕達も行こうか」

「だな」


 残された俺とヤサウェイは特に急ぐこともなく馬を走らせた。

 しかし、大きい街は久しぶりだ。

 ハキではないが、お湯のシャワーを浴びることが少し楽しみではある。

 だが、まだ俺が口にしたことのない食材があるかどうかという期待感はこれっぽちもなかった。

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