122回108日目
「……そうか、まだゾンビの肉は食ってなかったな」
俺がポツリと呟く。
すると4人の仲間達はぎょっとして一斉に俺の方を見た。
「おいおい!いくら君でも冗談だろう?」
「そうそう!いくらモンスター食に興味があるからって、それは冗談よね!」
「その内オレ達の肉を食わせろって言うんじゃないだろうな……」
驚きに満ちた仲間達の視線はとても心に刺さる。
仮にも3ヶ月近く寝食を共にし、死線を一緒に潜り抜けてきた仲間なのだから、もう少し温かい目で俺の発言を見守ってくれてもいいだろうに……。
しかし――
「いや、悪かった。冗談だ」
――よくよく考えれば、俺の発言は人の死体を食べたいと言っているようなもので、仲間達が驚き、引いてしまうのも無理はない。
素直に自分の非を認めて、謝ってしまうのが良いだろう。
俺が即座に謝罪をすると、仲間達はほっと胸を撫で下ろしたように各々食事に戻っていった。
そんな中――
「ねぇ、タケ?」
――仲間の一人である、弓使いの少女。
栗の実ような優しく淡いブロンドの髪を持つヒサカが俺に話しかける。
「本当にゾンビの肉が食べたいの?」
責めるような口調ではないが、彼女は俺の発言をずいぶんとおもしろがっているようだ。
「だから、冗談だって」
「ウソ。タケ、なんだか本気の目をしてたよ?」
ヒサカはくすくすと笑いながら、ランランと目を輝かせて俺の隣に腰かけた。
「ねぇ、本当にゾンビの肉が食べたいの?」
そして、不思議そうに俺を見つめながら、改めてそう訊いてくる。
俺は、なんとか話を逸らせないかと考えて……――
「本気だって言ったら?」
――無理だと判断し、逆にそう訊ね返した。
すると、
「なら、あたしが死んでゾンビになったら、あたしのこと食べて良いからね」
少女は、そんなことを言って俺に笑って見せた。
これが122回目の異世界、108日目の夜のことだ。