序章
ー神界ー
はぁーッ!はッッ!はッ!
とりゃーッ!
ふあッ!!
【ケルディ】
「どうした、そんなものか?シン」
【シン】
「うるせぇ!すぐに追いついてやらぁッ!!」
【ケルディ】
「フンッ、その粋だ」
はぁぁぁッ!!
スーッ
【従者】
「ケルディ王子、お迎えに上がりました」
【ケルディ】
「ん?もうそんな時間か……。悪いがシン、また今度相手をする」
【シン】
「あっ!ちょっとまてよ!!まだ勝負は終わって…」
ゴツン!!
【ケルディ】
「しつこいぞシン、また今度だと言ったらまた今度だ!次に会う時はもう少し強くなっていてくれると助かる」
【シン】
「なっ!俺が弱いって言いてぇのか?」
【ケルディ】
「そう言っているんだ。それじゃあな!」
サッサッサッサッ
【シン】
「ちっ、行っちまいやがった」
【ファージャック】
「むっはっは!シン殿、相変わらず“アランディム神王国”のケルディ神王子にゲンコツをもらってるようじゃのう!」
【シン】
「なんだよ……ファージャックか」
【ファージャック】
「なんだとはなんじゃ!この仙神ファージャックが久しぶりに会いにきたというのに」
【シン】
「アンタも暇なんだな?」
【ファージャック】
「失礼なやつじゃな!仙人道はフレドリックに託してきたのじゃ」
【シン】
「そうかよ!……で、アンタは何しに来たんだ?」
【ファージャック】
「実はな、お主を今日からワシが鍛錬するように言われておったのじゃ」
【シン】
「ん?誰にだよ?」
【ファージャック】
「なぁに、レイス殿じゃよ」
【シン】
「な、なんだと!?……兄上がなぜ俺を」
【ファージャック】
「お主、まさか気付いておらんのか?
今年はお主が成神を迎える年なのじゃぞ」
【シン】
「あれ……そうだっけ」
【ファージャック】
「呆れたやつじゃ、とにかくワシはお主の元で鍛えるつもりじゃから、覚悟せい!」
【シン】
「へっ、望むところだ!」
【シン】
「ところでファージャック、兄上はどれくらい強いんだ?」
【ファージャック】
「お主とは5歳も離れておるからのう、気になるだろう。
レイス殿は成神を迎えられてから瞬く間に成長を成されたお方じゃ、無論ワシの実力などでは手も足も出まい」
【シン】
「ファージャックが手も足も出ないのか?
すげぇ!!兄上と一度戦ってみたいぜ」
【ファージャック】
「シン殿はまずケルディ王子を倒さねばなりますまい」
【シン】
「余計なお世話だ!早速始めようぜ、鍛錬をよ!」
【ファージャック】
「よかろう、では来るがいい!」
そうして二人の鍛錬は始まった
ーー5年後
【ファージャック】
「シン殿、このままではオリエンの聖門が破られる……!すぐに撤退をせねばなるまい!」
⚪︎神暦:二十歳【シン】
「ならん、この地が突破されれば父上に危険が及ぶ。何としても死守するぞ!!」
【ファージャック】
「しかしもはやワシらの手には負えぬ
邪神軍の力は増大でレイス殿の消息も絶たれてしまった今では勝ち目はない!」
【シン】
「黙れファージャック、兄上はそんな弱いやつではない。今はとにかく増援が来るまで待て」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
【???】
「ほう…これは、王神の息子“シン=アルベラン”殿ではないか」
【ファージャック】
「!!?まさか、お主はエルガルド!?」
【天邪神:エルガルド】
「そして貴様は確か、ファージャック=トレオンスか」
【ファージャック】
「エルガルド殿…何をしておられるのだ!?すぐに加勢をお願いしますぞ!」
【天邪神:エルガルド】
「加勢だと?愚かな……私に命令など千年早いわ!」
ゴゴゴゴゴゴゴッ
【シン・ファージャック】
「な、なんなんだこの禍々しい力は!!」
【ファージャック】
「エルガルド殿……まさか!?」
【天邪神:エルガルド】
「消えよ、“孤独の咆哮”」
ドゥオン!ドゥオン!ドゥオン!
【シン・ファージャック】
「ぐぁッ!!!」
【ファージャック】
「なんだ!?この重圧は……!!」
【天邪神:エルガルド】
「我が名は天邪神エルガルド。貴様たちも早く邪神の力を受けるがいい」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
【ファージャック】
「ぬぅ……!!シン殿、ここはワシが食い止める!シン殿は王神界に行って報告を頼む!」
【シン】
「くっ……!ファージャック、ここは頼んだぞ!」
タッタッタッタッ
【天邪神:エルガルド】
「逃すものか!」
【???】
待たれよ、エルガルド!!
“四方結界”!
【天邪神:エルガルド】
「なっ……なんだと!?」
スィーン スィーン スィーン スィーン
エルガルドの周りには正方形の四角い結界が張り巡らされた
【ファージャック】
「あなたは?」
【ヒュトロス】
「私は結界神“ヒュトロス”だ。ディージャード様の緊急命令により邪神を結界に閉じ込めるよう仰せつかった」
【ファージャック】
「助かりました!!他の邪神についてはまだ遭遇しておりませぬ」
【天邪神:エルガルド】
「おのれ……小賢しい真似を!!……だが、到着されたようだな」
我らが“クュルティン”様
【ヒュトロス】
「何っ?クュルティンだと!?」
【クュルティン】
「ダメじゃないかエルガルド、その結界は一度閉じ込められたら暫くは出てこれないんだよ」
【天邪神:エルガルド】
「申し訳ありません、一体どれほど掛かるのですか?」
【クュルティン】
「残念だが私でも解くことはできない、彼ヒュトロスにはかつて私も捕らえられた借りがある。そこから出るには数百年は掛かる」
【天邪神:エルガルド】
「な……なんだと!?おのれぇ……ヒュトロス、キサマァァァァッ!!!」
【ヒュトロス】
「また現れたか、“獄国の闇”クュルティン!」
【クュルティン】
「貴様は気付いていないかもしれないが、私は
貴様への憎悪で膨れ上がっているんだよ、ヒュトロス君」
【ヒュトロス】
「黙れ、ディージャード様を裏切った者が!」
【クュルティン】
「もういい、貴様は私の前から消えてくれ」
“支配ノ刻”
黒き渦巻く黒い闇がヒュトロスたちを襲う
ブオォォォォォォ
“導光”!
シュォーーッ
【???】
「大丈夫か?ファージャック、ヒュトロス」
【ファージャック】
「レイス殿!ご無事で何よりでございます!ワシらは間一髪助かりました」
【クュルティン】
「今の能力は何だ……?いや、それよりも君は何者だ?」
【レイス】
「俺の名は“レイス=アルベラン”王神の息子で次期王神の後継者だ」
【クュルティン】
「王神の息子……そうか、あの時の能力と同じだと思ったら奴の息子だったか」
【レイス】
「どうやら各地で神々が堕落していると聞いている、お前は一体何をするつもりだ?」
【クュルティン】
「私はお前たちを今度こそ完全に支配し新たな世界を創造する。その為の準備は既に揃っている!」
【レイス】
「世界を創造したらどうするつもりだ?」
【クュルティン】
「私こそがすべての神々の頂点に立つ、お前の父親が王神である存在を私は許さない」
【レイス】
「ふざけるな、父上はこの世界で最初に誕生した者として全ての神々への責任を持っている、
なりたくて王神になったわけじゃない」
【クュルティン】
「黙れ小僧、私はやつと同じ瞬間に誕生して過ごしてきた。私がこの世界の王になろうとした時、やつが阻止してきたのだ。数千年の間、獄国で永遠に解放されることなく捕らえられていた私の気持ちが貴様などにわかるか?」
【レイス】
「俺が聞いている話では父上を裏切ったのはお前だと聞いている。すかさず父上はお前の悪意を見抜いて捕らえたにすぎん。その憎悪が無くなれば解放はされていたはずだ」
【クュルティン】
「要は貴様ら親子は私を完全に排除したいらしいな、ならば私が今度は貴様たちを利用させてもらうぞ」
【レイス】
「完全に排除したいと思ったら存在ごと消すはずだ、それをしない理由くらいわかるだろう?」
【クュルティン】
「貴様らは私の存在を消す以前に苦痛を与え続けた。もはや問答は無用と知るがいい」
“支配ノ刻”!!
【レイス】
「くっ、お前の心はもはや邪悪に満ちている!」
“導光”
【クュルティン】
「仕方がない、貴様に見せてやろう。私が王神である証を」
“邪悪光”
【レイス】
「なんだ、それは?」
【クュルティン】
「なに驚くことはない、貴様たち親子が使う能力の真似事だよ」
“導光”!
禍々しい闇の光はレイスの光を包み込む
【レイス】
「あり得ない、相殺できないだと?」
【クュルティン】
「私の憎悪が強大すぎて貴様の能力では押し返せないようだな」
【レイス】
「黙れ、俺はまだ全力ではない」
“導光”!!
闇の光が徐々にレイスの光に包まれていく
【クュルティン】
「ほう……さすがは王神の息子だ。ならば徹底的に王神の証(力)というものを見せなければならないようだ」
“能力無視”!!
シュッ
レイスの放った光が一瞬で消えてしまった
【レイス】
「何が起こった……?」
【クュルティン】
「終わりだ、王神の息子よ」
“憎鎖”
クュルティンの身体からとっさに黒い鎖が凄い速さで出現し、レイスの身体を縛りあげる
【レイス】
「ぐっ、しまった!」
【クュルティン】
「私の能力は憎悪そのものだ。掻き消したいほどの憎悪さえあれば、貴様らの能力は容易く消せる」
【レイス】
「そんなことが……できるはずがない!」
【クュルティン】
「それができるのが私の素質だ」
“支配ノ刻”
【クュルティン】
「安心するがいい、やがて貴様の父親も同じようにしてやる」
【レイス】
「くそッ!ファージャック、ヒュトロス、逃げろ!!」
【クュルティン】
「無駄だよ、私からは逃れられない」
【ヒュトロス】
「ファージャック!お主をディージャード様のもとへ送る!」
“結界転移”
ヒュトロスはファージャックを王神の元へと送り届けた
【クュルティン】
「一体は逃したか……。君の能力は私でも消すことができない、だからもはや君の存在自体を消すことにしなければ厄介と見た」
“消滅ノ刻”
【ヒュトロス】
「その能力はこの結界には効かない!」
“四方結界”!
【クュルティン】
「それはどうかな?」
ヒュトロスが張った結界の内側から突如黒い闇が現れた
【クュルティン】
「私の支配ノ刻では君を支配することができないことはわかっていた。だが存在そのものを消滅させるこの能力であれば、君の能力は無に還る」
【ヒュトロス】
「そんな……バカな……!ディージャード様……申し訳ありません……!!」
うぁぁぁぁぁぁッ!
レイスは闇に支配され、ヒュトロスはその場から消滅した
【クュルティン】
「さてエルガルドよ、その結界が解けた後は天界を守護せよ」
【天邪神:エルガルド】
「承知いたしました」
【クュルティン】
「さぁ……王神の息子レイスよ、新たな同胞として歓迎する。お前にはこの神界の守護についてもらう、よいな?」
【堕神:レイス】
「はい、クュルティン様」
【クュルティン】
「ではこの世界は任せるぞ」
クュルティンは神界から移動した