異世界
天竺葵の花言葉「偶然の出会い」
う~~~ん……。
カオになにかがはりついているような感覚がする。クチの中もザラザラするし。
まぶたが重たくて開かない。
「ぷっぷっ」
吐き捨てた感覚は土のようなものだった。
重いまぶたをこじ開けるようにして視界を広げると、私は地べたにキスをしている状態だった。
ここどこよ……。
体を起こそうとするんだけど、泥のように土と一体化してるみたい。もういっそのこと、この土と同化してしまうんじゃないかと思うようなだるさ。
ん!? くすぐったい!!
再び目を閉じてじっとしていたら、ほっぺたを撫でてる感覚がする。少しザラザラとした心地。
幾分軽くなったまぶたをゆっくりと開けると、そこには三毛の仔猫がいた。
「うにゅあ~ん」
ノドをゴロゴロと鳴らして頬ずりしてくる。毛がふわふわしていてくすぐったい。
「くすぐったいよ~」
そのコを捕まえようと他人の腕のように重たい手をなんとか動かすと、するりと抜けて見えなくなってしまった。
あれ?
よろよろとしながらもやっとの思いでなんとか立ち上がり、少しだけ距離を置いたそのコの姿を認める。
「ミャア」
心地よい鳴き声。
ゆっくりと抱きしめて、自分の格好を確認する。研修旅行で寄ったお店で借りた衣装だ。土でずいぶん汚れてしまっているので、左手で三毛猫を持ち、空いた右手で私はそれをパタパタとはたく。
クリーニング代とられるだろうな。
ここはどこなんだろう。どこかの家の庭みたいだけど。
てか、マジここどこよ。みんなどこに行っちゃったんだろ。
くるりと一周。
少なくとも今の時代では見かけないような建築様式ってカンジ。昔テレビで見たような、日本史の資料集で見ような。古代の貴族のウチの庭先? ああ、うまくコトバにあらわせないけど、そんな雰囲気。もしかして、あの後そういう昔の家屋を再現した歴史資料館みたいなところに移動したのかな?
でも、記憶がない……。
確かあの時この衣装に着替えて、鏡を見たら……?
直前のことを思い出そうとすると、頭がひどく痛む。
智が私を呼んでくれてたような記憶はある。
智、どこ行っちゃったんだろ……。
「あなた誰?」
ドキッ! ミケ(三毛猫だから勝手に命名)を抱いたままキョロキョロしていると背後から声がした。おそるおそる振り返ると、そこには私が今してるのとおんなじような格好をした女性が家の縁側のような場所に立っている。
ゾクッ。背中に冷たいものが通る。だって、その人がまるで鏡に映る自分自身を見ているかのようだったから。
当然、目の前の彼女もおんなじように感じたんだと思う、私の顔をまじまじとしげしげと穴があくほど見つめてくる。
「ひぃっっ。だ、誰か、誰か」
彼女のすぐ隣に立つ老女は幽霊でも見たかのようにみるみるうちに青ざめてその場にへたり込んでしまった。そして、うわごとのように助けを呼ぼうとする。
ちょっ!! ここで人を呼ばれたりしたら、不法侵入ってヤツで捕まっちゃうんじゃないの!? どうしよう!!
「うた、お静かになさい」
「しかし、姫さま」
”うた”と呼ばれた老女は私とそっくりな”姫さま”と呼ばれた彼女の足にしがみついて、すっかりうろたえている。
ミケは私の手からすり抜け、彼女のもとに駆け寄ると、彼女の足元をスリスリしている。
「ねえ、あなた」
うたさんとは対照的にどっしりと構えて私を見据えながら、たおやかにしなやかに形の整った唇を開く。ゾッとするほどキレイ。うりふたつだけれど表情はまったく違うから、別人のようにも見える。
「はぁ……」
「名はなんと言うの?」
「……美姫です」
「どのように書くの?」
きた、この質問。いつもきかれるチョー苦手な質問。
「……”美しい姫”と書きます」
自分で言ってて恥ずかしくなる。どのクチがそんなことを言ってんだ。だけど、これがストレートに伝わるのだから仕方がない。
「まぁ」
彼女は決してバカにしている様子ではなく。小さく驚いたあと目を細め、「良い名をいただいたのね。やはり、私と似ているからかしら」と自慢を含んだ言い方をする。
「……そう、ですね」
曖昧に笑い返した。
まぁ、姫なんて呼ばれてるくらいだしね。
私だって容姿はそれなり褒められてきた。その私とそっくりな上に、表情は私なんか及ばないほどのキレイさ。生まれもって備わった品みたいなものが、私にも感じる。
そして、このいかにも温室育ちのちやほやされた感満載の彼女にしたら、自慢を自慢として言っているつもりなんてサラサラないのかもしれないな。
「どのようにしてこちらへ来たのですか?」
柔和な表情の中に鋭い視線がある。いくら守られて生活しているからといっても、身の危険を感じた経験はしたことがあるんだと思う。
だけど、どうやってって言われてもなぁ。私がききたいくらいだし。
「……私の問いの意味がお分かりにならなかったのかしら?」
笑ってはいるけれど、目の奥が笑ってない。
「いえっ!! 決してそのようなことではなくっっ」
「では聞き方をかえますわ。……あなたはお一人でこちらまで入ってこられたの?」
だから~! 逆に私がききたいんだよ、それ。
「……わからないんです」
「この期に及んで、そのようなっ!!」
老女が目を吊り上げる。
「そう」
一方の彼女はぷっくりとした形のよい唇を少しだけ動かす。疑るというより理解してくれようとしている感がある。そして、決して動じる様子はない。
「ねえ、うた。この方を上げて頂戴」
「姫!? なにをそのような物騒なことをっ!!」
「どう見ても他に使者や付きの者もない様子。可哀想に土でひどく汚れていますわ。着替えたほうがいい」
「しかしっ」
「それに、私にそっくりの容貌よ。神の思し召しかもしれないわ。邪険に扱うとおそろしいことが起こるような気がするの」
「……」
昔の人はやっぱり神とか祟りとか今よりもずっとおそれているんだろう、うたさんはすっかり口をとざしてしまった。
「これは私の命よ。従ってちょうだい」
「……承知いたしました。美姫殿、こちらへ」
家の中に入る許可を得て、そのまま縁側のような場所から上がらせてもらう。
「ありがとうございます!」
私が頭を下げると、ニッコリと品良く笑みを浮かべる。
ホント、自分と似てる。でも、そんな表情は別人そのもの。
うたさんは私をじろじろと値踏みするように警戒しながら、少しだけ距離を置いて歩く。
「はぁ~、姫さまには困ったこと。まったく、うちの姫ときたら……」
ぶつぶつと明らかに私にきこえるように不満をつぶやいている。
この様子だと、こういう困りごとは日常茶飯事なんだろうな。
土間のような場所に案内される。
そこには木でできたバケツのようなものに水が張っていた。
「そちらでお顔や手を洗われてください。お召し物はこちらを用意させていただいております故。私、近くで控えておりますので、着替えがお済み次第お声掛け下さいませ」
どこの馬の骨ともわからない小娘に対して丁寧に話してくれる。怪しいながらも、仕えてる姫の命令は絶対なんだろうから、大変だなぁ。
姫の衣装と比べると質素な服を身にまとっているうたさん。
これって身分の差とかなんだろうか?
そんなことをぼんやりと考えながら、服を脱いで汚れてる部分を水で洗い流す。
口すすぎたい。けど、水はこれしかないし。
水道? ないし!
このバケツの水を口に入れるのは抵抗あるし!
あー、もうっ!! 夢の中までこんな不快感、リアルじゃなくていいっつうの!
てか、これって夢を見てるんだよね?
自分がどこにいるのか。もうワケがわからない。
智がいないから、夢だと思う。
さて! ウダウダ悩んでも仕方ない。とりあえず服着るか。
だけど、私。この衣装、自分一人では着れない……。
「あの~」
綿の下着だけを身につけて途方に暮れた結果、うたさんに声を掛ける。
「終わりましたか?」
物陰に隠れるようにしていたうたさんがぬっと現れ、私の姿を見ていぶかしげな表情を浮かべる。
「あ、あの、着替えさせてもらえますか?」
「……かしこまりました」
半ばあきれたように小さくため息をついて衣装を手にする彼女は慣れた手つきであっという間に着せてくれた。しかも、レンタルで借りた時に着せてもらったよりもずっとうまくて、ちゃんと締まるところは締まっていて、でも、動きやすいように着せてくれてる。
今回着たのはレモン色のあざやかな衣装。
うたさんについて再び姫と出逢った場所に戻る。
彼女は縁側のようなところから私が倒れていた場所の奥に咲いてる薄いピンクや白の花を愛でながら、ミケを膝の上に置き、撫でていた。
私とうたさんが戻ってきたことに気づき、こちらをゆっくりと振り返る。その所作はやっぱり生まれついてのものなんだと思う。小首をかしげるようにしてこちらを見ている様は私と容貌こそ似ていて非なるもの。
「さ、こちらへ」
彼女にすすめられるまま、隣に腰を下ろした。
ミケが気持ちよさそうに喉を鳴らしてる。
「本当にうりふたりのようだわ」
コトバもゆったりとしている。
彼女は私を値踏みするように見つめる、その目つきは妖艶すら感じる。やっぱり、こういう表情も私にはとても及ばない。熟れた女性の薫り。
「ねぇ、うたもそう思うでしょう?」
ふふふと口元をおさえながら、瞳を弧のようにして笑みを浮かべる。
「えぇ、そうですね……。長年姫さまのおそばにいさせていただいていますが、このように似ている方に私はお会いしたことはございません。あなた様のお母様も若い頃はあなた様とそっくりでございましたが、それを優に超える。おそろしいほどでございます」
そのコトバをきいた姫はハッとした表情を浮かべたあと、口元をおさえると意味深な笑みを浮かべた。
なに?
「ねぇ、うた」
うたさんもなにか彼女が企んでいるように察している。私よりも付き合いが長いのだから、きっと今から彼女が発することはうたさんにとってはよからぬこと。困ったような表情を浮かべながら、「はぁ」とたよりなげに返事をした。
「お兄様はすぐに見抜けるかしら?」
うたさんが一瞬ぎょっとしたのを私は見逃さなかった。すぐに表情を改めたけれど。そんな彼女の表情を見る限り、ロクなことを考えていないことは私にも充分理解できた。
「……さぁ、どうでございましょう」
うつむきがちに答えるうたさん。
「ねぇあなた」
今度は私に視線が向けられる。それは不自然なほどの笑顔で妖艶で、背筋が凍るほど。
「はい」
「美姫とおっしゃったわね」
「はい」
「今日一日、私の身代わりになっていただきたいの」
「へ?」
「うふふ。大丈夫よ、今日は特別にお勤めなどもないし。それに、これはあなたにしかできないことなのですから」
「……はぁ」
「ねっ」
彼女は邪気を隠して私に同意を求める。
私は自分でもわかるくらい眉間にシワが寄っていた。それをおもしろくないと思った姫の表情は般若のようになる。
「私の言うことがきけないとおっしゃるのなら、私は一向に構わないわ。すぐに罪人として突き出すだけだから」
言い切ると、勝ち誇ったような目つきで私を見る。
マジか。
いくら夢でも犯罪者としてひっ捕らえられたくはない。まして、こんな時代って罪人に対して血も涙もない罰とか与えそうだし。生きたまま焼かれたりしそう!
「わかりましたっ!」
ゾッとして慌てて返事をした。
「わかればいいのよ。ふふ」
私の返事をきき、表情は一変、お花畑で戯れるかのような笑顔で立ち上がるとその場でクルクルと回る。
その様を見ながら、うたさんは小さくだけどおおげさにため息をついている。
彼女、薄々わかってはいたけど自由奔放なんだろうな。
っていうか。マジで、そもそもここはどこなんだろうか。
夢なんだろうか。現実なんだろうか。
いや、リアルではありえないよな。
だって、みんないないんだもん。……智も。
でも、夢だって言っても、こんなにリアリティのある夢はこわい。ひどく心細い。
せめて、智が一緒にいてくれたなら夢だってこわくないのに。
いつのまにか赤の他人以上に遠い存在だと感じていた智だけど、こんな時にはやっぱり智が一緒にいないことがどれだけ私にとって恐怖なのかを実感してしまう。
「とりあえず、今日は夜まで特別にすることはないから、ねえお話しましょうよ。あなたのこと色々お聞きしたいわ」
「はぁ……」
そう言って私を部屋へと導いて向かい合わせに座る。昔の人ってみんな正座してるのかと思ったけど、彼女、スカートみたいなのでよく見えないけど、多分片膝を立てて座ってるっぽい。
行儀悪いのかなぁ? でも、それだったら、うたさんが指摘しそうなもんだけど。彼女が特に怒ってないところを見ると、これもアリなのか?
まぁラクだしね~。私も正座は苦手だし。
とりあえず、さすがに私はそんな座り方をするのも悪いなぁと思い、横座り。
「ねえ、あなたおいくつ?」
「十六です」
あ、数え年っていうので言ったほうがよかったのかな? ま、いっか。
「まぁ、そうなのね。私はもうすぐ十七になるわ。年齢までほとんど同じだなんてやはり素晴らしいわ」
そう言って彼女は私の手を嬉しそうに取った。
「はぁ」
感情表現は豊かだなぁ……。私とはこのあたりも全然違う。
彼女の手はもち肌のスベスベした手だった。きっと彼女は生まれてからずっと守られて成長してきたんだろうな。
「ねぇ、あなたはどこからお見えになって?」
どこから、ねぇ……。
「遠く遠く果てしない、月の向こうからといっておきましょうか。ハハ」
「まっ、おもしろいお話ね」
クスクスと小さく笑う。
この時代でもまだ竹取物語は知られてないんだっけ? ただ純粋に笑ってるところを見ると。
「……本当のところはどこなの?」
目が笑ってない! もう冗談は言っちゃいけない空気が流れる。
「まぁ、おそらくこの国の東の小さなところです」
「……そうなのね、倭国にも色々あるようですものね」
私の目をじっと見つめた後、ウソを言っていないと踏んだ姫は何度も小さくうなずく。
この時代はまだ日本のことを倭と呼んでたの? ってことは多分平安時代よりも前の時代だよね。
てか、そもそもマジでここどこよ!
「あのっ、ここはなんというところですか?」
姫は一瞬きょとんとして、やがてクスクスとホントにおかしそうに笑い出す。
「あなた、本当にご自分がどのようにここまで来たのか覚えていらっしゃらないのね?」
「はい、まったく……」
「ここは、……難波よ」
姫は”難波”という言葉を少しだけイヤそうに強調した。
難波、今の大阪か。でも、なんでイヤそうに言ったんだろ。
「あなたのいたところよりきっとずっと栄えているわよ」
イヤそうにしてる理由をきこうと彼女を見返した時にそう言われ、なんとなく訊きそびれた。
「……でしょうね」
ぼんやりと返す。
そりゃそうだ。関東なんて鎌倉幕府やその後の江戸幕府が開かれるまで、ううん、もしかすると、明治時代になるまで? とにかく、関西から見たら昔はチョー田舎扱いだったことぐらい知ってる。
「あら、そのようなことは覚えてらっしゃるの?」
あ、ヤバ! 姫が怪訝そうに私を見てる。
「いやっ、そういうワケではなくて、なんとなくこの立派なお住まいといい、そうなんじゃないのかな~と」
「そう?」
少し疑わしそうにしているものの、それ以上は深く追及してこない。
ふぅ~危ないな。ホント、うかつなこと言うとしょっ引かれるぞ。
とりあえず、わかったことを整理しよう。
まずここは難波。今の大阪。
で、時代はおそらく平安時代より前。ここが都で難波に都があったのは奈良時代? いや、飛鳥? とりあえずそのあたり。
目の前の人はおそらく高貴な人で、お兄さんがいるらしい。そして、若い頃のお母さんとこの姫は似ているらしい。
これって私の日本史の知識をテストされてる夢?
でも、具体的に何年ぐらいなんだろう?
だけど、年号で答えられても私もさすがにわかんないかもしんないし。
西暦で教えてほしいけど。そんなこと絶対にムリそうだし。
あ!
天皇のこときけばいいのか! 在位してる天皇きけば、私でも大体わかる。
日本史得意でよかった~。
ん? 逆にわからなすぎたほうがこの夢を純粋に楽しめるのかな~?
「あのっ!」
「はい?」
「時の帝はどなたなのですか?」
「……私のおじ様よ」
姫はじっと私を見つめ、”難波”と答えた時よりももっとイヤそうにまるで吐き捨てるようにして答えてくれた。
「はぁ……」
てか! アンタのおじさんって誰よ!
「おじ様、ですか……」
「孝徳帝にあられます」
私の後ろからそっとうたさんが答えた。
「孝徳!?」
思わず大声を上げる。
「しっ!そんな軽々しくおっしゃらないでいただきたい」
ピシャリ。うたさんがとがめるようにして制する。
私は慌てて口元を抑えた。
ちょっ、ちょっ、ちょっと待って! ちょっと待ってよ~!?
ということは!
目の前にいるのはもしかしたら天智天皇の妹の間人皇女!?
じゃあ、お兄さまって言ってたのはあの天智天皇のこと!? いや、この時代孝徳天皇が在位してて天智天皇はまだ即位してないから、正確には中大兄皇子。
頭がクラクラする。
私、夢にまで見るなんて。しかも、彼女とそっくりなんていうハナシ。どれだけ自分の意識を投影させてる夢を見てるんだろう。
智に逢いたい。智が恋しい。
もしかしたら、現実逃避してるのかな。
「なんですの?私が偽りを申しているとでも?」
ギロリと睨みつける姫。
「い、いえっ!そんな!ただっ」
「ただ?」
「そんな高貴な方とうつふたつだなんてあまりにも光栄なことで」
うっわー! よくもまぁ、都合良く言えたな。私。
だけど、とっさの機転。ここだともってないと命があやうい。
「ふふふ、そう言っていただけるのは私も光栄ですわ」
けっこう単純なのか、それともあえてそう言っているのかわからないけれど、彼女は私の返答に一応納得してくれている様子。
自分の日本史の知識をフルに活用。
えっと、孝徳天皇が即位してるってことは乙巳の変【※】はもう終わってるってことだよね。
【※】乙巳の変
中大兄皇子を中心に宮中で蘇我入鹿を暗殺して蘇我氏を滅ぼしたクーデター。
乙巳の変当時は皇極天皇【中大兄皇子・間人皇女の母親】が即位していたが、その後軽皇子【皇極天皇の兄】へ譲位し、軽皇子は孝徳天皇として即位。
政変後、中大兄皇子は皇太子として「大化の改新」【政治改革】を断行。
一般に首謀者は中大兄皇子と言われているが-実際に手をくだしたのは中大兄皇子-、一部では孝徳天皇が影の首謀者ではないかと言われている。
「あなたのことはなんてお呼びしたらいいですか?」
「そうね、皆と同じように姫と呼んでくれたらいいわよ」
「わかりました」
そんな風に色んなハナシをしてるうちに、夕食の時間になった。
あ、なんか思ったより普通の食事!
ご飯に焼魚、枝豆?、汁物、鍋、山菜etc
旅館とかで出てきそう。
ご飯は紫がかった色で食べてみると少しかたくてしっかり噛むとじんわり甘みが出てくるし、どれも普通に食べれるものがほとんど。
ただ、今夜出された鍋は肉の臭みが気になって残してしまった。
智、こんな食事苦手だから、もし智がこの時代の食事を出されたら全然手をつけられないんだろうな。
あーあ。
私、智のことばっかり。智とはなればなれってことはこんなにも恋しくさせるものなんだ。
間近で、智が他の人の手をとることも苦しかったけど。智が私のそばにいないこともそれはそれで苦しい。
どうしたら、私は智のことで苦しくなくなるんだろう。