シャールと新婚生活
「結婚式から数日経つけれど、新しい生活はどう? シャール」
「アルカ様――じゃなかった、銀竜様、ご心配頂き、ありがとうございます。まあ、なんとかやっておりますよ」
「仲良くしてる?」
「喧嘩はしない程度には。銀竜様、何か目が異常に輝いていません?」
「だって、シャールとエイデさんって美男美女でお似合いだから、結婚生活も大人な感じでステキなのかな~って」
「べつに。普通ですよ」
「普通って?」
「普通は普通です。一般家庭と変わりありません」
「ほほう、シャール。一般家庭と変わりなく、妻が帰ってきたら、夫は妻の剣帯を外したり、上着や荷物を預かったり、キスしたりして、食事も妻の好みが優先、酒蔵には妻の好きなものばかりをとりそろえたりして」
「ちょっ!? 陛下、何を!」
「食事の後は湯あみやらマッサージやら奉仕し、朝は自分の着替えもそこそこに妻の衣装を選ぶ。一般家庭とは、そんなものなのか?」
「わ~、もうホント、シャール一途だね~! エイデさんって尽くすタイプなんだね」
「毎日毎日、エイデのやつは私にのろけまくりだぞ。
どうだ、シャール。私の言う通り、エイデと結婚してよかっただろう。あいつは私と同じで一途に純情に尽くすタイプだからな。浮気の心配もゼロ。この先、何も憂うことはないぞ。安心して一生を委ねるがいい」
「式の間中、エイデさん、ずーっとシャールのことみつめていたものね。すごく好きなんだねえ」
「私としては、もっと放っておいて欲しいのですけれどね」
「残念だったな。さっきエイデにせがまれて、仲直りはキスで、なんていう命令を二人に対して出させられたからな」
「はい!?」
「至上命令だ。果たせよ。でないと私は、大変心苦しく遺憾だが、二人をまた投獄しないといけなくなるんだ」
「なぜ陛下が私生活に干渉してくるのです。職権濫用ですよね!? そんなおねだりを聞くなんて」
「仕方ないだろう。かわいい部下の頼みだ。私も最愛がそばにいたらそのくらいするし。したいし。むしろ命じられたいくらいだし」
「陛下とエイデは、気質が同じなのですね…」
「エイデやゼレイアと愛妻家同盟でも発足しようかって話しているんだ。加入条件は正直妻を独占したいくらい好き。どうだ?」
「どうぞご自由に。こちらは嫁逃げ同盟を発足いたしますので。加入条件は夫の不当要求には断固反対する、で」
「……私も入っていいかな、シャール」
「もちろんです」
何が不当なんだと憤るシグラッドに対し、主従は固く手を握り合ったのだった。




