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黒き竜は空を舞い  作者: サモト
番外編
24/44

恋の病

本編終了後の小話。

◆申告

「シャール、私、最近おかしいの」

「お体の調子がどこか優れないのですか?」

「ううん、体は大丈夫なんだけど、精神的に病んでるっていうか」

「どなたかから嫌がらせを?」

「バカなことをいうと思って聞いて。シグのことがお城で一番かっこいいって思っているんだ」

「正しく物事を判別していらっしゃると思いますが」

「ごめん、嘘ついた。都で一番くらいに思ってる」

「間違いないかと」

「ちがうの! 本当はニールゲン一くらいに思ってる!」

「はあ」

「私、のろけすぎだよね?」

「いえ全然? 世界一とおっしゃられても、まあ、許されるかと」

「……」


◆診察

「つまり、アルカ様は現在、恋の病にかかっていると。そうおっしゃりたいわけですね?」

「自分ではかかっているつもりなんだけど」

「他にはどのような症状が?」

「何かにつけてシグのこと考えるんだ。シグルド見ててもシグのこと考えちゃって。シグにそっくりだな~って」

「事実似ていらっしゃいますからね」

「シグに似て強くて賢い子になって欲しいな~とか」

「親だったら誰でも思いますよ」

「シグルドが世界で一番かわいいな~とか」

「アルカ様、それはのろけではなくただの親バカです」


◆症状①

「他にもあるんだよ。シグといると顔が赤くなったり、胸が苦しくなったり、名前呼ばれるだけでドキドキしたり」

「まずまずの症状ですね。後は?」

「シグが一緒だと食事もろくに進まないとか」

「なるほど。まさにこの病らしい症状ですね」

「シグが心配して食べさせようとしてくるんだけど、そんなの余計に食べられないし」

「お腹いっぱいというより、胸がいっぱい、ですね」

「抱きしめられるのもキスされるのも、もう嬉しくて恥ずかしくて死にそうで」

「最近、陛下がお帰りになられると、やけに身構えていらっしゃるのはそのせいで?」

「そうなの。しばらく私を隔離してもらえないかなあ?」

「無理です。陛下も同じ病を発病して、最悪発狂します」

「じゃあせめて、シグに五歩以上はなれて話そうって頼んでいい?」

「陛下が変に曲解した挙句、城から男がいなくなりそうなのでお止めください」

「じゃあ私、どうすればいいの!?」

「耐えてください!」

 世界平和のために、とシャールは拳を握った。


◆症状②

「でも、一緒にいると緊張して仕方ないくせに、いないといないで、不安になるんだよね。城内の散歩中についシグの姿探したり、シグの帰りの予定が遅れると、心配で眠れなくなったり」

「そうなんですか? そんなそぶり、全然、気づきませんでしたけれど」

「ならいいんだけど。私、ついには思い余って……こんなものまで」

「かわいい竜のぬいぐるみですね。これが何か?」

「シグのぬいぐるみ」

「……赤い竜の形していますけど?」

「うん。ヒト型より、こっちの方がシグっぽいかなって」

「アルカ様の中で、陛下はどんな存在なのですか?」


◆症状③

「あとね、シグが女の人と話してると、気になって仕方なくなる」

「陛下の場合、女性の方が言い寄ってきますからね。落ち着かないでしょうね」

「とくにレノーラさんと話してると、本当に気になって。シグも楽しそうだから」

「どんなことを話していらっしゃるのでしょうね」

「大したことじゃないんだよ。ちょっと聞こえてきた会話が、全殺しのが好み、とか、私は生かさず殺さずの方が、とかそういうことだったから。全然心配するような内容じゃないみたいなんだけどね」

「それは別の意味で心配ですよ!?」


◆診断結果

「あーあ。こんなに挙動不審で、私、シグに変な奴って思われて嫌われないかなあ」

「陛下は全然、気にしていないと思いますよ。陛下はアルカ様のどんなことでも受け入れてくださいますよ」

「そうだよね。シグは優しいもんね」

「え? 陛下が優――? これは相当重症ですね……」

「なんで急に!?」


◆処置

「アルカ様、陛下の欠点を思い出されてみてはいかがでしょう。欠点に注目すれば、少しは恋の熱も冷めて、落ち着いていられると思いますが」

「なるほど、欠点かあ。熱くなると我を忘れちゃうところとか、目的のためには手段を択ばないところとか、自分の欲求に素直すぎるところとか?

 でも、とっくに承知のことだし。うん。大して気にならないや。こういう場合、どうしたらいい?」

「処置なしで」


◆処方箋

「いっそ、陛下にそのままおっしゃってみてはいかがでしょう。陛下と一緒にいると、ドキドキして死にそうだって」

「実はもう、一度いったことあるんだ。そしたら、シグ、毒でも盛られたのか!? って大騒ぎして。侍医まで呼ばれちゃって」

「……」

「恋の病です、なんてボケたことも言えない状況になってね」

「どうなったんです?」

「もちろん私の病は原因不明。侍医の人は、しばらく様子見で、何もなければ時間が解決しますよっていってたよ」

「ある意味的確な判断ですね」


 アルカに時間薬が効くのには、そこそこの量を要した。

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