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僕らの文芸部活動記  作者: うさぴょん
9/13

五人目

二日間の休みを挟んで、数日後の放課後。


俺達四人は、ババ抜きを興じていた。


「結局、来ないですね……村瀬さん」


水野から取ったジャックのペアを揃えて山に放る。まあ、そりゃそうだ。賢明な判断だと思う。運動部の奴らから見ると、ただのつまらない部活動に見られるかもしれないしな。でも、それはまだ本領を発揮していないからだろう。


「んが!? 寝過ごした!? まだかぁ? 起こしてよねー五時にはー。あ、でも、目が覚めた。あーあ、目が覚めた」


「先生。髪の毛が……」


なずながポッケから櫛を取り出す。それで先生の寝癖だらけの頭髪をゆっくりと梳かしていく。


「ごめんなさいねー。先生、寝癖ひどいんだわ。週末にバッサリ切ろうかしら?」


「その方がいいですよ。髪が泣いてます!」


「なずなちゃん! カード、カード!」


夏秋が手札を催促する。ずいぶんと馴染んだものだ。すっかり、この空間に溶け込んでいる。


「はい、あがりー。一番!」


「でも、酷いですね! 村瀬さんの勉強に付き合ってあげたんですよ! なのに!」


「まぁ、そういう奴でもあるしね、タマは」




だぁん!!


勢いよく開く戸。


息を切らす黒髪ミディアム。村瀬環だ。肩で息する彼女は手には紙切れを持っている。何が起きたのだとみな、彼女を見つめた。


先生でさえ、突然の来訪者に戸惑っている。


「私、ここに入ることに決めました!!」


声高々に宣言した彼女は紙切れを頭上高くに上げる。


それは紛れもなく、入部届けだった。


かくして、文芸部は部として発端した。





部活動が始まったのだ。俺達は喜び合った。なずなはしくしくと嬉し泣きをし、先生は入部届けを奪って逃げ去った。水野は前髪をかきあげ、涼しい顔をした。夏秋はさすがあたしの友人、と言いたげなしたり顔をした。無意識のうちに俺はガッツポーズをしていた。


「え、見学にも来ないで、どうして突然?」


「えっと、先週の楽しげな仲良さげな感じが好印象だったし、先輩いないんでしょう? 楽じゃん? それに決めてはなんていったって、ここには家庭教師になりそうな水野くんとナッツがいるからね!!」


最後が不純な理由だ。おまけに、『それが決めてかよ!!」と声を荒らげて突っ込みたくなる!


空いているパイプ椅子にどかりと座ると、面々を見渡し、にぃと笑う村瀬。


「よろしくね!!」


ひとりひとりに笑顔を向けるのはいいけど。少し香水臭いです。


「タマ! なんか臭い! 付け過ぎてない? 大人っぽさと品性の欠片が感じられん!」


「え? ホント? 嘘!?」


ブレザーを懸命に嗅ぐ村瀬。当の本人が気づかないなんて。スメルハラスメントの餌食になっていると、先生が戻ってきた。


「部活動の申請書! これで部費も確保できるわ!」


「ブヒブヒ!!」


村瀬が無邪気に笑う。女子率が高くなって、居心地悪いったらありゃしない!


「で、部長はどうやって決めるの?」


村瀬は気分がすっかり良くなったらしく、明るい声ではしゃぐ。


「部長は恭平くん、副部長はなずなさんです」


「えー、つまんない! アミダくじで決めましょうよ。その方がスリルがあっていいじゃん!」


部長の座は譲らん! 鼻歌交じりにアミダくじを作らないでくれ!


「適当に書いたから、好きな場所選んでよ!」


「決まってるからいいじゃん」


「だって、みんな一年生でしょ? いいじゃん、この方がコーヘーでさー!」


物分りの悪い奴だ。いいだろうノってやるよ。俺の全くじ運よ。右手に宿りたまえ!


「さぁ、ピヨ助。選んで!」


「ぴ、ピヨ助だとぉ? 舐めやがって! ここだぁ!!」


五本の一番右。ここにしろと本能が囁いている気がする。


「じゃ、私は左端ー!」


「僕はど真ん中で」


「あたしは残り物でいいよ」


「ふぐぅ!」



「ちゃんちゃーん、ちゃかちゃかちゃんちゃんちゃかちゃか……」


来い、ミラクル! 何のために文芸部に入ったんだ、俺! 菓子食うためか? 昼寝するためか? ええい、部長になるためだろう!!


「あ、部長はピヨ助だ」


「よし、キターーーーーーー!!」


「副部長は、私ね!」


「ふぐぅ!」


「副部長の役割は何?」


「部長補佐? 特にすることないんじゃない?」


「……え、そうなんですか? 先生」


「歴代の文芸部でもそうね。二年目のわたしが言うのもなんだけど、仕事という仕事はないわ。そうね、掃除してもらおうかしら?」


「や、やりたい人ー……」


副部長をしたいと言っていたはずの、なずなは先生の発言を聞いて考えを改め直したらしい。


「決まりましたね。では、部長が恭平くん、副部長が環さんです」





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