女子部員達
何もかも放り出したくなる、午後のこの時間。文芸部の活動時間。スーパーカーのイラストを丹念に描くナッツとソファで小説に食い入るなずなちゃんを眺め、わたしは痺れを切らした。
「第一回、暴露大会~~! どんどん、ぱふぱふー!!」
「なにそれ? またつまんないことばかり思いつくのな」
ナッツはこちらには目を呉れず、ブーイングをする。なんて奴だ、せっかく盛り上げてやろうというのに。
「そもそも、退屈なのよね~。この部屋もどかんと壁紙ごと変えちゃえば鬱積した空気も霧散するだろうに。例えば、ショッキングピンクに」
「ショッキングすぎますよ!! ピンクは嫌ですね。……わたしとしては、その、黄緑なんかがいいかなって思います」
「おいおい、張替え前提で話を進めないの! ここは自分たちの部屋じゃなんだぜ? わかってんのか?」
「村瀬環、十五歳!!ぶっちゃけます!! ナッツのパンツは今日は青の水玉!!」
「……なんで知ってんだ、おい!!」
おぞましいオーラがナッツから立ち上るのが見えた。それはそのつまり、単純に机の下から覗いたわけで……。
「ったく、これだから、スカートは好かん! 常に地面に下着を晒すなんて正気と思えない!」
「確かに言われるとそうだ。先人は露出の癖があったのかもしれないですね」
「スカートは輸入された西洋文化だろう? ならば、西洋が変態なんだって」
「それじゃ、悪口ですよ。それにそれをなんの疑いもなくきてる時点でそんなこと言う権利はとうに剥奪されています!」
「あたしは履きたくて履いてるんじゃない。ただ単に校則に従ってるだけで……」
「校則に拘束されてばかりじゃつまんないぜ、ナッツ! もっと広い視野で物事を眺めようぜ、そうスカートが嫌なら、スカートの下に短パンを履けばいいんだ」
「ありなのか? ありならそうしたいところだが」
「スカートが膝丈なら、短パンは隠れるでしょう……」
「その分、エロスは激減しますがね」
「エロスなんぞ求めてねーよ!!」
「ま! 純真な乙女! 中学時代を思い出す。空き地の乱雑に捨てられたエロ本。鼻血を出したウブな少女『夏秋奈津美』」
「うるさい!! 誰が暴露大会の続きをしろと言った! こんなのは金輪際ずっと中止だぁーー!!!」
「おお、恐い。おぞましいね。なずな、わたしが付いてるからね。撫で撫でしてあげるからね」
「二人とも騒がしいです。それに頭を撫でる力が痛い! 環さんはもう黙っててください! 読書の邪魔です!」
「なんだって! この子、ついに反抗期が!? 夏秋さん、どうしましょう」
「お前はおとなしく漢字の勉強さえしてればいいんだよ。そうじゃなきゃ、部室を使うな」
「ひ、酷い! 水野くんに言いつけてやる。ええと、『夏秋さんの今日のパンツは青の水玉……』っと! 送信!」
瞬間わたしの視界は狭まった。伸びてきた腕がこれはまさしくアイアンクロー。痛みと骨の軋みが……!!
「てめぇはどうも早死したいらしいな。今すぐ何とかしろぉ……!!」
「いだだだだだ!! 無理もう無理」
「誠ですか!? 誠ですか!?」
不意に変態が部室に突入してきた。部室の戸をぞんざいに扱った水野の変態は、異様な興奮とともにわたしににじり寄った。正確にはナッツに、だ。
「てめぇの脳内フォルダをまず消去せねばならんようだな、水野くん?」
とんだ威圧感だ。これにはなずなもビビってソファの後ろに隠れ込んでしまった。これから始まる公開処刑に思わず息を呑む。
「え? マジですか? 目がマジですな? え、僕死んじゃうの? まだ、15年しか生きてませんけど」
「安心しろ。記憶だけ破壊する」
水野の頭蓋がミシミシと気味の悪い音を立て始める。それとともに水野の焦点はひっくり返った。大丈夫、死んでない。




