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僕らの文芸部活動記  作者: うさぴょん
10/13

夏秋奈津美の夢

今になって見る、小さい頃からのあたしの写真はどれも不細工だ。


というのは、ただカメラが苦手なんじゃなくて、カメラを向ける父が苦手だったからかもしれない。いや実際そうだろう。小学生あたりの写真からは鋭い目つきのあたしは父に敵意しか向けていなかった。父は平気で人を打つ人だった、他人を貶める人だった。身内の母にもしょっちゅう手を上げる父に尊敬などできなかったし、憎しみしか募らなかった。


たまにご機嫌な時がある、そんな時、父はあたしを膝に乗せて、頭を撫でた。下手くそな撫で方に苛立ちを覚えるも小さなあたしには何もできなかった。外面のいい父はたまに遊園地にも連れて行ってくれた。でも、全然楽しめなかった。無理して固まった笑顔をしてご機嫌を取るのにうんざりした。


我ながら冷めた子供だと思う。


父と休日に顔を見合わせるのも嫌だった。だから、外でばかり遊んだ。おもに男子に混じってだ。虫あみ振り回して野山を駆け巡ったし、野球では常に四番バッター。サッカーでは背丈を生かしたゴールキーパーになったし、プラモデルを組み立てて見せ合ったりした。女のお人形遊びにはあまり興味はなかった。


バービーやリカちゃんより、ガンプラを取った。そのことに対して大人は呆れていたがあたしはなぜダメなのだ? と首をひねっていた。


でも、女の子だ。スカートを履いて見たい衝動にかられたこともある。でも、『女の子らしさ』のない自分が履くと恥ずかしくて、鏡に映る自分が気色の悪いものに見えた。この髪の色に、この顔に、ピンクや水色は似合わなかった。あたしはスカートを放り投げた。


スカートは一切履かずに、小学生時代を過ごした。けっこう過酷な小学生時代だ。


まぁ、容姿でさんざん苛められたけど、成長の早かったあたしに腕っ節で勝てる奴は同級生にはいなかった。『男女』『スーパーサイヤ人』『ゴリラ女』などのあだ名には屈しなかった。相手にもしなかったし、なによりもそんな彼らを幼稚に感じた。彼らよりも親が憎かった。いつだったか遊び仲間の連中が決起して、馬鹿にするそいつらと喧嘩したこともあった。まったくお節介。乱闘の中あたしも飛び込んでいった。


そこで勝ってからいじめられることも小馬鹿にされることもなくなり、逆に男子からも女子からも支持を得た。地元では悪童の名が轟いた。その度に父は渋い顔をして、「女らしくしろ」と頭を小突いた。


父とは年に数回話す程度で徐々に関わらなくなった。酒に酔って学生時代の武勇伝を語る父は情けなかった。そのそばで微笑む母も頭がどうかしていると感じた。ともに共依存になりどこまでも落ちていけばいいと思った。


学校でいじめが起きるとあたしはよく主犯をとっちめた。だからか知らないが生徒内でも評判がよかった。学校ではあたしのことを知らない奴はいなくなった。中学生さえもあたしを見るとき遠まわしに距離を置いて、動物園のライオンでも見るかのように好奇の視線をぶつけてきた。あたしにとってそんなのはどうでもよかった。つまらなかった。なぜ、こうも生き辛いのだろうか? 悩んだ。


両親は相手にもしなかった。短絡的で周囲の目しか気にしない。同じ言葉を繰り返す彼らのようにはなりたくないと思った。


そんな時に見つけたのは、男子の持っていた漫画雑誌だった。夢中になった。そこには夢が自由があった。なぜもこう、心動かされるのかと思った。勧善懲悪、絶対勝利。少年の夢が詰まった雑誌。少年漫画は、あたしのバイブルとなった。


将来は漫画家になりたいと思った。


家で絵を描きまくった。学校で友達にも見せた。喜んでもらえて純粋に嬉しかったのを今でも忘れてはいない。ある日、昼ご飯も食べずに描いてると父に取り上げられた。鼻で笑う父が疎ましくて、掴みかかった。首根っこを押さえられ、打たれ、倉庫に閉じ込められた。


後で見つけた、あたしの描いた絵はゴミ箱でぐしゃぐしゃになって見つかった。悔しかった。子供に対して、こんな酷いことをするのは大人ではないと言った。頬をぴしゃりと叩かれた。堪えれた、泣かなかった反撃したかった。


「漫画家になるんだ」


その声はかすれたが、父には届いた。


「下らない」


父はそう一蹴した。父は「いい大学出て、大企業に勤めろ」そんな考えの自分の体裁を守るような人だ。


自室で、三時間ほど泣き通した。憎かった。この世の誰よりも憎いと感じた。いつまでも泣いていると引きずり出され説教を食らった。それから、往復でビンタされた。漫画家になって見返すと誓った。




後日、あたしは男子に暴力を振るうことができなくなっていた。あたしは気の抜けた風船のように大人しくなった。

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