エメーリナの戦い
アリオスらエメーリナ兵が出兵して15年、マニウス軍も兵の規模が大きくなっていた。そんな中、ガリアでの戦に行く事となる。一方エメーリナでは戦で男手が少なくなった所を野盗が度々襲っていた。
カイウスが病気で倒れ、カムイは少ない戦力で何とか防ぎしのいでいた。
そんな中父達の帰還がと野盗の襲撃が分かり野盗襲撃を阻止するべく、カムイらは奇襲を慣行する、辛くも奇襲には成功するがエンテレウスは傷を負ってしまう。
何日か後に父達が帰って来る、アリオスは村の変わった姿に驚きながらも、カムイの成長を喜ぶのだった。
何日か過ぎ・・偵察に出ていた者が村へ帰還し、野盗が総力を挙げて攻めてくることが分かる、はたしてエメーリナは?そしてカムイらは?
第一章 第二話 ・・・エメーリナの戦い・・・
紀元前104年・・北方西側ガリア戦線・・・
マニウス軍は、十数年にも及ぶ何度かの戦闘で勝利し功績を上げ今では、軍の規模は大きくなり
歩兵、弓、騎馬、重騎兵、併せて一万五千の規模まで増大していた。
十五年前、そうこの始まりはアリオスらを初めとしたエメーリナの二百人の徴兵軍。そして官邸へ集まった徴兵軍と行軍しながら近隣の村での徴兵を併せわずか二千人だった部隊も
今やローマの正規軍に劣る事も無いほどの精鋭部隊となっていた・・・
マニウスは、この軍の初陣でたった二千の兵で勝利しこの軍の最高指揮官になっていたのである。
その後の彼らの働きには、ローマ政府内の元老院達も今ではこの功績がカイザーに認められ中々口を出せない状態であった。
マニウスらは幾度かの戦闘の中で、兵を指揮し功績を上げていた二人の人物を側近にしていったのだった。その中の一人がエメーリナのアリオスである。
アリオスは実に指揮能力が高く騎馬隊三千を預かり、兵達からは信頼され村での自警団の時と変わらない優しさも、持っていた。
そして、もう一人の指揮官はローマより少し北の村の出で、名はガリウス、アリオスとは対照的で大きい体に筋肉隆々でゴツイ顔立ちに髭を蓄えた男であった、だがけして好戦的ではなく、気さくな人物で重騎兵三千を預かる、彼もまた兵達からアリオス同様慕われていた。
そして季節は夏、今回はこのガリア[現フランスはパリ近郊]でのゲルマン人襲撃から発展した戦場に居たのだった。
この戦いでマニウスは彼らに挟撃を指示し、突撃にガリウスら重騎兵、それをバックアップする様にマニウスの歩兵、弓が、最後にアリオスら騎馬が二手に分かれ左右から敵を追い込んでいった。
戦闘が始まってどのぐらいたった後だろう・・・敵が後退し始める、それを見ていたアリオスは騎馬の機動力を生かしすかさず左右に展開し追撃を仕掛けた、そして追いついて来たガリウス、マニウスらと敵を殲滅したのであった。
「全体止まれ」
マニウスが声を上げる、それを聞き全体が止まり戦いが幕を閉じていったのである。
停止の声が掛かって少し経った後、軍全体は列を整え野営地へと帰還して行ったのだった。
その夜、野営地で・・・
マニウスが全軍に向かって話をしていた・・・
「全兵士達よ、本当に良くやってくれた、この勝利はローマの大きな勝利となるだろう」
兵士達から歓声が上がる。
それを見ていたアリオスが歓声の後叫ぶ
「静粛に!まだ指揮官の話は終わっていない、皆静かに聞くのだ!」
この言葉で兵達が静まったのを見てマニウスが続きを話始める・・・
「ローマから、戦いの始まる前通達があった、この戦いに勝利すれば、故郷への凱旋が許されと・・・
皆、今夜は祝杯を挙げ明日は故郷へ胸を張って凱旋使しようではないか」
「本当に皆良くやってくれた、ありがとう」
兵達から大きな歓声と故郷へ帰れる喜びで沸く者、涙ぐむ者、共に抱き合い喜びに浸っていた。
この演説の後、マニウスは、アリオス、ガリウスを自分のテントに招き共に祝杯を挙げていた。
マニウスは、十何年間にも渡ってアリオス、ガリウスらと、時には助け、時には助けられ、命のやり取りをしているうちに、戦友めいた真に何でも話せる、信頼のできる親友のような存在へと、彼らに対する自分の中の気持ちが変わって居る事に気ずいて居たのだった。
「アリオス、ガリウスよ今回も良くやってくれた、本当に礼を言う、ありがとう」
マニウスが頭を下げる・・・
アリオスは、すかさずそれを見て・・・
「マニウス様そんな、もったいないお言葉、それに頭をお上げ下さい」
「そうです、アリオスの言う通りですマニウス様、我々はローマ領に属する者、当然の事をしただけです」
アリオス、ガリウスは言う
「いや君達には、苦労かけた愛する故郷を離れこんな北の地まで・・・」
「それに私は、君達が居なければ今までの戦も勝てなかったと思うのだ、君達が居たから・・」
「今から・・・君達に頼みがある、兵や他の指揮官が居ない時は私の事はマニウスでいい様はいらん!」
「私は君達を本当の命を懸けた友だと思っているのだ、これはお願いだ私と友として接してほしい」
アリオス、ガリウスは困った顔で
「そんな、めっそうも無い・・・」
マニウスは二人の困った顔を見ながら・・・
「私が友だと不服かね?」
二人はさらに困った顔になり・・・
「はあ~マニウス様がそうおっしゃるなら・・・・」
「また、様をつけたな!マニウスで良い、君達には形式ばった言葉で呼んでほしくないのだ」
「これからは、命を懸け合った友だアリオス、ガリウスよろしく頼む・・」
マニウスは二人の手を取り言ったのであった。
「分かりました、マ・マニウス・・・我々は命を懸けた戦友です・・」
「私もアリオス同様、あなたを友とします!」
「ああ、二人ともありがとうw」
こうして、ローマ人と一般の民と言う大きな壁を越え、三人は真の親友となったのであった。
こんなやり取りもあった後、宴も終盤に差し掛かった時、マニウスがアリオスに言う・・
「明日はいよいよ帰郷の為出発となるな、アリオス何年ぶりの帰郷なのだったかな?」
「私は二年振りの帰郷となります」
「そうか、カムイも相当成長したのであろう?」
「ええ、前回帰った時は十三でした、父に剣を習っていて、すでに剣の腕は父を超えていました」
「今回の帰郷、カムイに会うのが楽しみですw」
「父上を?あのカイウス殿を十三の少年が超したのか?剣で?」
「ええ、父はもう私では歯が立たないと言ってました、それを聞いて私も手合わせしたのですが、とても人間技とは思えない剣捌きでした・・・」
ガリウスが驚いた表情で・・・
「アリオス、お前が勝てないのか十三の子供に・・・お前ほどの腕でもか??」
「ああ、かなわなかった実際・・・帰れば十五になっているはず、たぶん自警団に入る歳なので入っているかと・・・」
「お前にそんな息子が居たとはな~俺も会ってみたいなお前の息子に・・」
「アリオス?」
「はい?」
「帰郷したらカムイと共に私の官邸へ来てはくれぬか?私も久々の官邸なのでな、おそらく出る事は出来ないだろう、手間をかけるがカムイ、それにカイウス、グラビィアにも会いたいのでな、来てはもらえぬだろうか?」
「はい、すぐにとは行かないでしょうが、帰郷し何日か後でよろしければ、連れて行きましょう」
「おいアリオス、俺も行っても良いか?俺もお前のせがれに興味が沸いて来た、会わせろよな~wマニウスと二人だけで楽しむのはずるい・・・俺もマニウスと官邸に行く」
「お前村に帰らなくていいのか?」
「俺は帰っても待っている家族も居ないしな、帰郷と言っても誰も居ない家があるだけだ、お前達と居る方が楽しい」
「そうだったな、すまないガリウスよ・・では私と共に官邸へ行こう、共に待とうアリオス達が来るのを」
「ああ、マニウス厄介になる」
「気にするな・・・友を招待するのだwしばしの間、戦事も忘れ楽しもう」
そう言うとアリオスの困った表情を見ながら二人は楽しそうに話していたのだった。
一方エメーリナでは・・・・
この村では今、度重なる戦と徴兵で男手が少なく、当初は八十人近く居た自警団も年々減少し今では、カムイら三十人にも満たないほどに減少していたのだった。
そして今では、戦で男手が少なくなり度々野盗に襲われる事件も増えていたのだった。
そんな中、指導者の領主カイウスが病で体を壊し自警団は実質カムイが指揮を執っていたのである。
カムイは少ない自警団の人数をまとめ、村のほぼ中心に自警団の本拠地を構え北の崖近くの川の橋は、
木製の大きな滑車を考え、ロープを巻いたり、緩めたりといった引き橋にし夜は橋を収め敵からの進入を押さえ、野盗のアジトがある北西方向と南側は木製の城壁と矢倉を組み襲撃に備え村を要塞化したのである。
これに対し野盗も中々襲撃しても落とせないで居たが、何度かの襲撃の際、火矢を放ち木製の城壁を壊していたので脆くなった城壁からの襲撃を企んでいた。
カムイはこの事を察知しそれに備えていた、しかしすぐに城壁を補修するほど男手もある訳でもなく
補修作業は難工していたのであった。
補修工事が始まって四日目の朝・・・・
「母さん、昨日見た??」
「ええ、明日ですね・・・」
「うん!奴等は明日、襲撃に来るここに・・・」
カイウスは二人の話を聞き、すかさず返す・・・
「夢で見たのかねカムイよ?」
「うん!じいちゃん明日ここは襲われる、このままだと今までに無かったぐらい被害が出てしまう・・」
「うーん、それで何か策はあるのか?私の体がこんなではなければ・・・」
「あることはあるのだけど・・・」
グラビィアにはなんとなくではあったがカムイがやろうと思っている事がわかったのかも知れない・・・
「カムイそれはダメ!私は許しません」
グラビィアの一言を聞き、カイウスは何かあると思いカムイに問い掛ける
「カムイよお前が考えて居ることを言ってみなさい・・・」
カムイ真剣な顔で・・・
「じいちゃん・・・・今晩、夜の闇にまぎれて夜襲を仕掛けようと思う・・・奴等も僕達まだ年端も行かないやつ達が攻めて来るとは思って無いし、それに今日の夕方から雨が降るから馬の駆ける音や足音も消せるはず、それに先手を打てば明日には襲っては来ないと思う・・・奴等も体制を整えてから来るだろうし
少しの間時間が稼げる、父さん達が帰って来るまでね・・・」
「何?帰ってくるのかアリオス達が?」
「うん、今から大体十数日前後には・・・」
カイウス驚いた表情でグラビィアに問いかける
「本当なのかグラビィア?」
「いえ、私には分かりません・・本当なのカムイ?」
「うん、帰って来る確かに・・・今のこの人数と皆の技量だと奴等を迎えて撃退するのは無理だもっと熟練した技量と人数が居れば別だけど・・・今襲われたら、女、子供、年配者が多いこの村はひとたまりも無い・・頼むじいちゃん夜の奇襲必ず成功させるからやらせてくれないか?」
「でもカムイ、あなたにもしもの事があれば・・・・私は・・・」
グラビィアは泣きながら悲しそうな顔で言った
「待て、グラビィアよカムイが言う事も正しい・・・確かに今この村が襲われればお前もどういう事になるかは分からない訳でもあるまい」
「ですが・・・」
「カムイよ・・・奇襲は何か策があるのだな?」
「うん・・・」
「上手くは説明できないけど、成功すればたぶん・・父さん達が帰って来るまでなんとかなると思う・・」
カイウスは少し考えてからカムイに言う
「そうか、お前が言うのだから間違えはなかろう、危険だがお前はそういう事も乗り越えねばならん、やってみなさい」
「お父様!・・・」
「グラビィアよ、民の中からはカムイとほぼ同年代の子も徴兵で出兵した、民達だけ行かせてお前の息子だけ安全なとこに居るわけにもいかぬだろ?それにこの子は後に道を開く者だとお前は言った、これはカムイの与えられた試練なのだ、分かってあげなさい・・・」
「ああ、お父様・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「カムイ良いですか約束です、決して無理はしないように・・」
「うん、母さん分かったよ・・じいちゃんありがとうw」
こうして奇襲作戦は決行される事となったのである。
カムイは自警団の中で一番足が速く、すばしっこい友達のエンテレウスを呼び作戦を指示し斥候を出したのだった。
エンテレウスはこれに答え、斥候に赴き野盗の動向を探りに行ったのであった。
そして現在野盗達は、村の北西の山間の川辺に野営しており、城壁を壊す為の大きな丸太の先を削った車
二台と、約二百名の人員、それを指揮する大柄な男が居る事をカムイに伝えたのだった。
野盗は全部併せると千人近く居るはずだが、近隣の村を襲撃するため、何部隊かに分けて行動しているようで、ここエメーリナを襲うのはこの中の二百名ほどだった。
すべての野盗の指導者は元軍人で、元はローマの軍の中の一部隊を指揮をしていたらしい、その配下に居た側近達を各部隊の指揮官とし、戦の徴兵で男手が少なくなった近隣の村を個別で襲撃していたのであった。
そしてここ、エメーリナを襲撃するよう指示を受けたこの指揮官は、大柄で力も強く、剣の腕も一級の人物であった。
この指揮官は何度かのエメーリナ襲撃の際カムイと顔を会わせており、カムイの人並み外れた能力と、指揮に一目置いていたのだった、しかし今回は村への作戦は奇襲それに対城壁攻略用の装備もあって、その日は明日の奇襲に備えて兵達を休ませていたのだった。
「明日はいよいよエメーリナに奇襲を掛ける、皆今晩は鋭気を蓄え休め、少々なら飲酒も許す」
「だが、見張りは付けろ、何せ敵は奴だからな何をしてくるかわからん」
その時雨が降り始めた・・・
野盗の一人が指揮官に言う・・・
「この雨じゃ向こうも何もできませんぜ・・・」
「そうかもしれんな・・・」
指揮官は少々不安を感じながらも強くなってきた雨を避けるようにテントへ入っていった・・・
一方カムイ達は、雨が降って来たのを見計らって、一路野盗の野営地へと向かったのである、
カムイら自警団は敵の野営地の手前で馬を降り、エンテレウスに偵察に行かせたのだった。
そしてどのくらいの時間がたった事だろう、カムイらは装備を整えていた時、偵察に出た、エンテレウスが帰ってきた。
「帰ってきたかエンテレウス、んでどうだった??」
「ああ、見張りが正面と西、東に二名ずつ居る、後は野営地で休んでいたよ」
「そかエンテレウスありがとう、もう少しで雨が上がるそれまで待とう、馬と馬車を隠せ気ずかれたら終わりだ、雨も上がれば馬の鳴き声でも出れば失敗する・・・」
「そうだなカムイ、馬と馬車を隠そう・・・」
そう言って乗ってきた馬と馬車を隠し作戦開始まで見張りの居る近くで身を隠したのだった。
夏の夕立も上がり・・・そして蒸し暑い夏の夜が戻ったのだった。
降っていた雨で幸いにも川が増水し、カムイ達が行動するにはちょうどいいほどに、水の流れる音が大きくなっていた。
雨が上がってから何時間過ぎたのだろう、地面も周りの木々もすっかり乾き、カムイは野営に居る野盗が酒を飲んで寝た頃を見計らって、奇襲作戦を始めたのだった・・・
初めは、カムイ達が川の音に紛れ見張りに忍び寄り六人を・・・次にエンテレウス達がひっそりと繋がれていた何十頭かの馬へ忍び寄り繋がれていた手綱を切っていったのだった、そしてテントまで邪魔になる寝ている兵達に忍び寄り、口を押さえながら声が出ないよう何十人かを殺したのだった。その後エンテレウス達はテントのところまで行き火をつける準備をする。
その様子を見てカムイはジェイコスに火矢を対城壁用の車に放つ準備を指示した。
テントまでの兵達の始末を完全に確認したカムイは火矢を車に放つ、またエンテレウスは幾つかあるテントに一斉に火を付けたのだった、この火を見て馬達は暴れ手綱は切られていたので方々に逃げてしまった。
一方、テントにいた指揮官も剣を持ち慌てて外に出て目の前に広がっている光景に驚き恐怖したのだった
「奴か・・・・」
「皆、落ち着き早く火を消すのだ・・・」
しかしその言葉も空しく、火は消えず驚き焦った野盗達はそれぞれに逃げたのだった、明るさを得た自警団らは残りの数十人の兵士を倒していた、またカムイは一人で数十人をあっという間に倒し、指揮官らしい男の前に出た。
指揮官は剣を構えると・・
「やはりお前だったか、何者なのだお前は・・・」
「僕は領主カイウスが子アリオスの息子カムイだ!」
そういって剣を交えるのだった。
「お前の首、もらう!」
指揮官は言った、しかしカムイのそれは指揮官の創造を遥かに超える動きで、指揮官の剣を弾き遠くへ飛ばしてしまった。
「うう、まさか・・・」
そのときだった、一人の野盗が弓を放ちそれがエンテレウスの左肩に当たったのだった、カムイはすぐに剣を収めエンテレウスの所へ行き助けた。
「カムイすまない・・・」
「気にするな、作戦は成功だ帰還しよう・・・」
こうしてカムイらは、指揮官にとどめを刺せぬまま、ジェイコスの弓の援護をもらいながら引いたのだった。
奇襲を終えた一行はエメーリナへと帰還した。
一方、野盗指揮官は何故襲撃の作戦が分かったのかも謎で、カムイのあの人並み外れた能力に恐怖し、野盗のアジトへと敗走するのであった。
「あの小僧、何故分かったのだ次こそは必ず・・・」
「一度体制を整え他の部隊と合流したのち、必ず落としてやるぞエメーリナ」
指揮官はカムイという存在に恐怖しながらも、心の中では武人としての血が騒いでいる事を確信していた。
カムイらは領主の屋敷に着くとカイウス、グラビィアに作戦の報告と全員無事の報告をしたのであった。
二百名相手に、三十人にも満たない部隊で、壊滅状態に追い込むとは大金星であった。
「カムイ良く無事で全員帰ってきた、本当にご苦労だったな」
グラビィアも涙ぐみながら、無事に帰ってきた事に心から喜んで
「お帰りなさいカムイ、良く頑張りましたね」
優しく暖かい顔とまなざしでそういった・・・
そして・・・
「カムイ、エンテレウスの具合はどうなのです??負傷したと聞きましたが?」
「はい、左肩に弓を食らいましたが大事には至りません、数日もすれば大丈夫です」
「この奇襲、エンテレウスとジェイコスは本当に良くやってくれました、彼らが居なかったらとても、この作戦は成功しなかったと思います。」
「彼らとは僕、本当に友達で良かった、母さん落ち着いたら彼らをここに招待したいのだけどいいかな??」
「当たり前です、あなたのかけがえの無い友達、断る理由も無いでしょう?」
「私からも、そしてお父様からもお礼を言わなければバチが当たります」
「そうだ、グラビィアの言う通りだ私も彼らとは礼をかねて話がしたいので落ち着いたら屋敷に招待しなさい」
「ありがとう母さんそしてじいちゃん、二人も喜ぶと思うよ」
こうして奇襲作戦も終わり一夜明けた・・・
カムイはエンテレウスの見舞いに行き、その後遅れている城壁修復に向かい、皆と共に作業をおこなったのである。
その様子はまるで父アリオスが居るかの様に、野盗との戦いと言う中ではあったが、皆と一時の楽しく笑い声が絶えない作業となっていた。
カイウスはこの光景を見て、息子のアリオスが居るかの様な錯覚にとらわれながらも、息子アリオスの早い帰還を祈ったのだった・・・
そして、この日より三日が過ぎ・・・領主の屋敷・・・・
カイウス、グラビィア、カムイはエンテレウス、ジェイコスを招き宴を楽しんでいた・・・
「二人とも良くやってくれた、今の時期決して安心は出来ないが今日は楽しくやろうではないか?」
二人はかしこまって・・
「はい」
グラビィアもそれを見て・・・
「そんなかしこまらないでw二人とも、あなた達はカムイのお友達、それに今回の英雄なのですから・・」
「今日は楽しく過ごしましょうw」
母グラビィアの暖かい言葉だった・・・
野盗との戦いの最中だったので・・決して豪華ではないが食事が出され楽しく宴は続いていた、そんな中・・・カイウスが二人を別室に呼ぶ
カムイは不思議そうな顔をしながらも、祖父カイウスの言う事に従った。
「君達二人にはまず、領主として民を代表し礼を言おうw本当に今回はご苦労だったな」
二人はかしこまって
「はい」
「君ら二人にここへ来てもらったのは、君達に知ってもらわねばならん事があるからだ」
二人は不思議そうな顔をしながらカイウスを見た。
そしてカイウスは、カムイの事を話し始めたのである、生まれや神の子だと言う事と道を開く者だという事を、二人はそれを聞き驚いた表情を隠しきれなかった・・・
「これがカムイが生まれて来た訳だ、君達が驚くのも無理は無い、だが君達はカムイのかけがえの無い友達だ、これからもカムイの支えになってほしい・・・」
エンテレウスがすかさず返す
「当たり前です領主様、僕達は生まれた時からずっと一緒だったんです、カムイは僕達の親友そしてここエメーリナの領主様のお孫様です、これからも僕達はカムイを支えずっと一緒に居ます」
「エンテレウスの言う通りです、僕らカムイが好きなんです、時たま何考えてるか分からない時もあるけど、みんなカムイが好きなんですよ、ここに居る人達みんなが・・・」
「そうか、そうか、ありがとう君達がカムイの親友で良かったこれからもよろしく頼む」
二人は大きな声で・・・
「はい」
と笑顔で答えたのだった。
二人の屈託の無い笑顔と返事を聞いたカイウスは部屋の奥から装備を出すと二人に手渡した。
「これは二人の為に作った剣と軽甲冑それとナイフ弓だ、エンテレウスには、この剣と軽甲冑を、そして弓の得意なジェイコスには、弓とナイフを授けよう、これが今から二人の力となるように・・・」
「ありがとうございます領主様!」
話が終わり二人はカイウスに感謝しカムイに、もらった装備を見せたり、構えたりしながら楽しい時間が過ぎていった。
そして二人は屋敷でのカイウスから聞いた話をしながら家路に着くのだった。
「しかし驚いたなあの話は・・・」
「うん、正直信じられなかったけど、考えて見たらあの話でカムイの人並み外れた能力に納得するな~」
「ああ、そうだねでも、カムイはカムイだよ僕らのねwこれからも三人ずっと一緒に居ようw」
「ああ、もちろん」
こうして宴の夜は終わって行ったのだった・・・・
それから十一日後の朝・・・・
「母さんも見えた??父さんが明日帰って来るのが??」
「ええw見えましたよ、明日やっと帰ってきますね」
二人が笑顔で言う・・・それを見てカイウスが・・・
「そうか明日帰って来るか、これで少しは安心だな」
「うん、そうだね」
何時、野盗が襲ってくるかも知れない中、アリオス達が帰って来るのは吉報であった。
次の日・・・・
アリオス達エメーリナ兵約六百名は、マニウスとガリウスを官邸に送り一路エメーリナに向かっていたのだった。
アリオスは進むにつれ、懐かしい匂いと景色に胸が高まって居たが、帰って来る途中で見た各地の野盗襲撃による、荒廃ぶりに心痛めると共に、自分が出兵して留守にしているエメーリナへの心配が高まっていったのだった。
一行がエメーリナの近くまで進んだとき、倒れている一人の少女が居るのに、一人の兵が気ずき、その少女をアリオスの下まで連れてきた、アリオスは少女に水と食料を与え介抱したが、少女は恐怖からだったのだろうか?話も上手く話せないまま脅え震えていた。
アリオスはこの少女をエメーリナに連れて行く事にし帰路を急いだ。
一方、カムイらは村の北側の崖の橋の所に居た。
遠くで薄っすらと一行の影が見え出し、カムイらは喜んでいた。
影はだんだん大きくハッキリと見えるようになり、エンテレウスらは、崖の川の橋を出した。
一行は橋まで来て、その橋に驚きながらも渡りカムイらと合流するのであった。
「父さんおかえり~」
「ああ、カムイ迎えに来てくれたのか?今日帰って来るのが分かったのか?」
「・・・・・」
「ああ、それは愚問だったなお前と、グラビィアには・・・」
「ただいま、カムイそれにグラビィア」
「ああ、あなた本当に良く無事でお帰り下さいました、本当に、本当に・・・」
グラビィアの目からは嬉しくて涙が止まらなかった・・・
「ああ、グラビィア帰ってきたよ、苦労を掛けてすまない・・・ん?・・・父は?」
「お父様は今お体を壊して・・・」
「父は、父は大丈夫なのかい?」
「ええ、今は起き上がって外を歩けるほど回復されています・・」
「そうか良かった・・・」
アリオスはホッとして屋敷まで急ぐのだった。
グラビィアは馬車の荷台で脅えていた少女に気ずいた
「あなた?この子は?」
「ああ、帰って来る途中の野盗に襲われた村から逃げて、ここエメーリナまで来たらしい、すぐここの北の道で倒れていたのだ」
「そうなんですか、かわいそうに・・・」
「グラビィア?」
「この子を家で引き取ろうかと思うのだが・・この子の両親が見つかるまで・・・」
「どうだろうグラビィア?カムイにも妹の様な子が出来るのだ、承知してはもらえないだろうか?」
グラビィアは、にっこり笑うと・・・
「ええもちろんです、カムイにも良い兄弟となるでしょう・・」
こんな微笑ましい会話をしながら屋敷に着いたのだった・・・
夜、屋敷に着いて少し落ち着いた様子になった少女は体をグラビィアに洗ってもらい、カムイが小さい頃着ていた服を着せてもらっていたのだった。
その頃、カイウス、アリオスは屋敷の外に出て今までの経緯をアリオスに話したのである。
アリオスもまた、戦の事と、帰って来る途中で保護した少女の事を話した・・・
「そうですか、この村も・・・私も帰って来る途中の村を見てきましたが、何処の村も野盗の襲撃にあっていました・・・」
「でも驚きです、カムイがまさかこんな城壁と矢倉を考えたなんて・・・」
「ああ、実際凄いものだよ、今この村がたいした被害が出ていないのもカムイらのおかげなのだ・・・」
アリオスはカムイと親友の二人の話を聞いて驚いていたのだった、見ない間に息子が成長した姿に喜んでいたが、今後の野盗の事を考えると胸が痛んだのであった。
一方、自警団の詰め所に居るカムイは、気になる野盗の動向を知るべく、エンテレウスらに偵察へ出てもらう事にしたのだった。
「すまないエンテレウスまた君に無理な事を言って・・・」
「な~に、この中で一番の早足は俺なんだ動向を探ってくるよ・・・必ず戻ってくるって・・」
「うん、エンテレウス頼んだよ、そして必ず無事に帰って来てほしい」
「ああカムイ分かってる、君は久しぶりの父さんの帰還なんだ、早く屋敷に戻ってあげてよ」
「うん、エンテレウス気をつけてね」
「おう」
そう言って詰め所を出たのだった。
カムイが屋敷に戻ると、一人の少女が居た、カムイは驚いたが、母グラビィアから話を聞き、少女に優しく笑いかけ話すと、少女も少しずつ話始めたのだった・・・
名前はリーネで歳は十歳、ここより北の村に居た事と、両親は目の前で野盗に殺された事と、自分を逃がしてくれた事を泣きながら話したのだった。
それを聞いたカムイ、グラビィアも涙を流し、グラビィアは少女を強く抱きしめたのだった。
「リーネ今日から僕は君の兄ちゃんだ、そして今日からここは君の家なんだよ」
「母さんも、父さんも、そしてじいちゃん、イーメも自分の家族だよろしくなリーネ」
それを聞いて、リーネは嬉しくて今まで緊張していた物が解け、疲れていた物がいっぺんに出て少し経ったら倒れこむ様に寝てしまった。
しばらくして外に出ていたカイウスらが戻り、居間で三人で話をする事となる。
カムイは、今までの経緯と城壁や矢倉、橋の事をアリオスに説明し、今現在修復が必要な事を話した。
アリオスはこの話を聞き明日から帰ってきた男手を率い手伝う事にしたのだった。
その後今現在、エンテレウスが偵察に向かうことを説明した。
「大きくなったなカムイ、本当に立派になった」
「私は嬉しいし、お前を誇りに思うぞ」
「ありがとう父さん、僕も久々父さんの顔が見れて本当に嬉しかったよ、それに父さんが連れて来てくれた妹リーネもね」
「リーネ?あの子の名かい?」
「うん、自分でそういったよ」
「そうか、話してくれたのだな」
「うん」
久々に再会した親子三代は、その夜尽きる事無く話して夜が更けていったのであった。
そして翌日まだ日も昇らぬ早朝・・・・
北西の村外れ、カムイ、ジェイコスはエンテレウスの見送りに来ていた・・・
「カムイ、ジェイコス見送りに来てくれたのかい?」
「ああ、決まってるじゃないかエンテレウス」
「うんエンテレウス気をつけて・・・」
「これを・・」
「ほし肉かあ、嬉しいよカムイありがとう」
「僕からはこれ、はい」
「薬草だね、ジェイコスありがとう」
「必ず動向を探ってくる、待ってて」
「ああ」
「気をつけてな」
そう言ってエンテレウスを見送ったのだった。
村へ帰り、朝が来て詰め所で少しジェイコスと話した後、カムイは屋敷に戻ったのだった。
「早いなカムイ、見送ったのかい?エンテレウスを?」
「うん、父さん・・・」
「無事に帰ってくるさきっと・・・」
「うん」
二人はエンテレウスの心配をしながらカイウス、グラビィア、そして新しい家族のリーネと食事を取ったのだった。
それから・・何時間か経って完全に日も昇って昼前・・・・
アリオスと出兵していた兵は城壁の所でカムイらと修理に取り掛かっていた、アリオスは驚いていた、その修理の的確な指示と作業の振り分け、そして人数が増えた分の仕事の効率さに、カムイは帰って来て負傷してる兵を除き、どれだけの人数が手伝えるか一晩のうちに把握し計画を立てていたのだった。
この、適応能力と状況把握そして計画性に驚き言葉を失っていたのだった。
また、帰還した兵達も、カムイの的確な指示の元、楽しそうに仕事をしていたのだった。
補修、修理作業も、兵達が戻って来た事によって前日までの作業スピードより、数十倍以上になっていた。
「この速さだと後三日後には、作業が終わるね」
「ああ、カムイそうだな、しかしお前は凄いものだな、こんな計画を昨日のうちに立てたんだな」
カムイはアリオスに、にこっと返し作業に戻ったのだった・・・
その夜・・・
「カムイ話がある・・・少しいいか?」
「うん」
「カムイ、監察官のマニウス様がお前に会いたがっているのだ、お前の成長と剣の腕を見たがっていてな、どうだろう会ってはくれぬか?」
「今は・・・こんな状況だし計画を立てた僕が抜けたら・・・」
「そうだな、マニウス様には事情を話し分かってもらおう」
こうして四日が過ぎ城壁の修復と補修が終わり、カムイは来るべき野盗との決戦に向けて新たな装備の製作を指示していた、それは斜めに曲がった長く大きな盾とその頃主流であった大型のクロスボウを小型に改良し命中精度は落ちるものの連射に優れたボウであった、アリオスはこれを見て驚愕した、飛距離が通常の弓の半分しか無いこんなものを大量に作ってどうするのかわからなかった・・・
アリオスはこれをカムイに聞いてみたがカムイもまだ上手く説明できない様子で、そのうち分かるさと言う一言であった・・・
そんな中、偵察に出ていたエンテレウスの使者がエメーリナに帰還する・・・
自警団の詰め所で偵察内容を聞くと、カイウス、アリオスは驚いた。
「ご苦労だったな、でどうなのだ野盗は?」
「はい、野盗は人員を拡大しその数今は二千を少し上回る数が居るかと思われます。装備を整え、このエメーリナに襲撃に来るのは早くて今日より十日前後かと・・・」
「十日・・・思ったより早いな」
「はい」
「しかし、何故この短期間でそんな人数にまで大きくなったのだ?」
「各地で襲撃した村から命と引き換えに集めたものかと・・・」
「ううむ」
「こちらは今、負傷兵を除いて戦える者が約400とちょっとか・・・」
「アリオスよ何か策はあるか?」
「監察官のマニウス様に相談いたしましょう、ですが今は帰還して間もない状況、官邸に居る軍を動かしてもその数八百も満たないでしょう」
「でもこの状況は・・・」
「そうだな、官邸に使者を出してはもらえぬか?」
「ええ、分かりました」
そしてその日の夜・・・
「父さん、官邸には僕が行くよ」
カムイは真剣なまなざしでアリオスに言った・・・
「ん??カムイ何故お前が?」
「マニウス様は僕に会いたがっていたんでしょう?それに僕も会いたいし」
「少し考えもあるしね」
「考え?」
「うん、軍を出してもらう事と装備の事でね」
「お前が考えたのだ、間違いは無いだろう」
「・・・・・」
「うん、行って来なさいカムイ、マニウス様によろしくな」
「うん、父さん・・」
そう言ってその夜は早め床について次の日の旅立ちに向けて休んだのである。
翌日・・・・
カムイはジェイコスと二人で官邸を目指して出発しようとしていた。
「おにいちゃん、気をつけてねw」
「ああ、ありがとうリーネ」
「カムイ気をつけてね、マニウス様に失礼の無い様にね」
「うん、分かった母さん」
「カムイ?」
「うん?」
「官邸にはガリウスと言う男も居る、大きくてとても強い気さくな奴だ、そして私の命を懸けた戦友だ、彼にもよろしく言ってくれ」
「うん」
こんな会話をしカムイ達は官邸があるアジェーラに向かった。
官邸に向かう途中幾つかの村を通り過ぎたが、どの村も野盗の襲撃で無残な姿があった。
「ひどい・・何故同じ人間でこんな事が・・・」
「うん、そうだね・・・でも今はカムイ、僕らの村を守るため官邸へ急ごう」
「ああ」
そう言って二人は、官邸への道を急ぎ馬を走らせたのだった・・・
翌日・・・・
カムイ達はアジェーラに着き官邸前に居た
官邸門番にカムイはエメーリナの使者で、アリオスの子だと告げ、マニウスとの面通しをお願いしたのだった。
それを聞いた門番が急ぎ官邸のマニウスに言い、マニウスはすぐさま官邸の客間に通したのだった。
客間の椅子に座りカムイらはマニウスの来るのを待っていた。
少しして、扉が開き子供の頃見たマニウスより、少々しわや年齢線がハッキリして来たマニウスと、大柄の男が入ってきた。
「良く来たねカムイ、懐かしいあの時以来だね、しかし大きくなった」
マニウスは子供の時に見たカムイより成長したカムイを見て、あの時の目を思い出したのだった。
それを見て見透かしたようにカムイは・・・
「どうかされましたか?マニウス様」
「いや、なんでもない、それよりわざわざここへ、遊びに来た訳でもあるまい?何かあったのかな?」
カムイは今の村の現状と兵の派遣を説明した。
「ううん、事情は分かった・・・しかし今ここの軍を動かすのは・・・」
「何悩んでんだマニウス、アリオスとその村の一大事だろ??」
「分かってはいるのだが・・・」
「相手の戦力は二千・・・ここの軍を動かしても八百にも満たない・・・勝てるものかどうか・・・」
カムイ煮え切らないマニウスを見て・・・
「それでは必ず勝てるならどうでしょう?マニウス様は私の成長を見たがって居たと父より伺っております、この戦私に策があります、そして考えた作戦も今後のマニウス様の戦にも何かしら約に経つことでしょう・・・それから私の腕も見たいと言う事でしたね?ではそこに居るガリウス様と手合わせをお願いできないでしょうか?ガリウス様には申し訳ありませんが、一瞬で倒して見せましょう、いかがです?」
「なに?小僧いくらアリオスの子とは言え、今の言葉は聞き捨てならんぞ?わびを入れるなら今のうちだ?」
「カムイまずいよ、いくらなんでもこれじゃ喧嘩売ってるのと一緒だよ、誤らなきゃ」
「ジェイコス、僕は彼らに対し実際に喧嘩を売って居るんだよ、このガリウス、マニウスにねw」
「なっ、貴様いくらアリオスの子とは言え、俺らを呼び捨てか、もう許さんすぐさま表に出て私と死合え」
「では、お二方にお聞きします?今しがた、戦力がとおっしゃいましたが、父アリオスもお二人も今までの戦は自分達の軍の数が相手に勝っていたから勝利してきたのですか??もしそうならお二方や私の父が強いのではない、ただ数が多かったから勝てただけの事、そんな方々に私は負けません、村の民の為にも試合では無く死合いをしたいのなら、今すぐ行いましょう、そして私は、あなた方に恐怖を見せましょう」
「この小僧、後で泣きずらかくなよ、マニウス俺は全力で行くぞ止めるな!」
「ああ止めはせん、私も今の言葉には、いくらアリオスの息子で私の命の恩人でも、死んでいった兵の事を思うと、ゆるせん」
「ガリウスよ思う存分やるが良い」
「ええ僕も手抜きで勝ったとなれば父達に合わす顔がありません、殺す気でやってもらわねば、勝っても目覚めが悪い」
「このガキは~」
カムイのそれは完全に喧嘩をローマの最高指揮官とその側近ガリウスに売ったのだった。
こうして中庭に出て死合いとなった。
カムイが構え、ガリウスが構えた・・立ち会っていたローマ兵が二人の構えを見て叫ぶ。
「死合い始め」
ガリウスはこの言葉を聞きカムイに襲い掛かった
「ほらほらどうした?こんなもんかお前は?さっきの威勢は何処行った?」
カムイはガリウスの剣を受け流しながら耐えていた・・・少し経って距離を置いた時、カムイが口を開く
「ガリウスさん父より強いと聞いたんですが、こんなもんですか・・・残念です・・・」
「何?このガキはまだそんな減らず口を~」
再びガリウスがカムイに襲い掛かかったその時だった、カムイはとんでもない速さで剣をかわし、ガリウスの後ろに回り柄でガリウスの後頭部を叩く、ガリウスたまらず前に倒れそうになりながらも、止まり再び剣を構えようとした時、カムイが自分の剣でガリウスの剣を弾き飛ばした、そして腹部にとんでもなく重い蹴りを一発、次の瞬間、物凄い速さでマニウスへ向かっていき、危険を感じた数人のローマ兵を剣と技を持って弾き飛ばし、マニウス前へ、マニウスは剣を抜き構えようとしたが、カムイに剣を弾かれ飛ばされてしまう、そして・・・・あの幼き時と同様に、マニウスに切っ先を出し構えマニウスを見下ろした・・・
マニウスはあの時見た目を、もう一度見る事となる・・・マニウスは言葉も出ないまま恐怖した・・・
「これであなたは、あの時から僕に二度殺されていますね・・・ガリウスさんあなたも自分の主を守れず死んでいたのだ・・・」
「これで分かったでしょう、あなた方が強いんじゃない、命を懸けた兵と軍の数が強かったんだ」
カムイはそう言って剣を収めた、マニウス、ガリウスも何も言えないまま無言になった
そしてカムイは、またいつもの優しい表情に戻り・・・
「これで援軍お願いできますね」
と、にこっと笑って見せたのだった、マニウス、ガリウスはあっけに取られたが少し間を置いて
マニウスが口を開く・・・
「すごい物だなカムイよ、ガリウスも決して弱くは無い、実際戦場では何度も襲ってくる敵を倒し、幾つも功績を上げている猛者だ」
「だがお前は、今まで見て来たいかなる者の強さとは遥かに違う、この私もガリウスもこのような恐怖は味わった事が無い」
「一体お前は何者なのだ?」
「ただの人の子ですよ、ここまで急いで来たものですから、ろくに食事もしないで馬を飛ばしたので、少々腹が減って気が立っていただけです・・・」
「お二人には本当に失礼しました・・・ですがそれだけエメーリナは切羽詰っているのだけは、お分かり下さい」
「ああ、こちらこそ遠方より遥々来てくれたのに食事も出さず申し訳なかった・・・」
「ああ~俺にも少しいいですか?・・・カムイお前の腕が凄いとはアリオスから聞いていたが、これほどとはな・・・驚いたよまったく、歴戦の俺がまったく歯が立たなかったんだからな、一体どんな訓練してきたんだか・・・マニウス、俺らは負けた完敗だ、ここはこいつの言う事聞こうじゃないか?・・・と言うか、俺はお前が行かなくても行くからな、アリオスの元へ止めても無駄だぞ・・・」
「はっはっは~止めはせんよ、私も行くアリオスの元へカムイと、そして見せてもらおうじゃないか、野盗とカムイの戦いを」
「おおw見たいなこの小僧が戦う姿を」
カムイが嬉しそうに・・・
「それでは援軍の件、承知していただけるんですか?」
「ああ、このマニウスとガリウスが引き受けよう」
「ありがとうございます、マニウス様」
こうしてカムイは援軍の約束を得てこの日は豪華な食事に囲まれながらマニウスらと話しに花を咲かせたのだった。
カムイがこの官邸へ来て二日目の朝、軍の遠征の準備も終わり約八百名を連れエメーリナへと向かったのだった。
そんな中、道中ガリウスが腹に手を当てながら・・・
「ん~まだかなぁ~つつう」
カムイはそれを見て・・・
「ガリウスさん、どうかしたのですか??お腹に手を当てて、お腹でも壊しました??」
「壊しました?だあ~お前が蹴ったんだろうが・・・まったく・・・初めてだぜ、他人の蹴りごときで二日も痛むのは・・・どんな蹴り入れたんだよ・・・」
「ああ、あの時の・・すいません力を少々入れてしまいました、もう少し力を抜けば良かったですね、ごめんなさい・・・」
「ああ?少々だと?んじゃまさかあれで手加減したのかよ・・・お前どんな力してんだ?あのくそ重たい一発が、まだ手加減した状態だったとは・・・まったく末恐ろしいにもほどがあるぜw」
「あっはっはっはっは~」
「マニウス笑い事じゃね~実際食らってみろよどんだけ辛いか・・」
「すまん・すまん、私は食らわなかったのが本当に幸いだと思っている・・・」
「くそ~人事だと思いやがって・・・」
こんな会話をしながら壊滅している幾つかの村を通り一行はエメーリナに入ったのであった・・・
村の橋の所には見張りが居てカムイ達の帰還を確認すると、援軍に村が沸きあがったのであった、村に入るとカムイは二人を屋敷へ案内しジェイコスと詰め所へ向かった。
一方、マニウスらは久々に会う親友と再会し、領主のカイウス、グラビィアそして新しい家族のリーネと挨拶を交わし、アリオスとガリウスは外に出て話をしていた。
「そんな事が官邸であったのか?」
「ああ、お前の息子は本当に凄いものだな、まったく歯が立たなかった、お前には悪いが俺は本気だったよ、でも軽くあしらわれてしまったよ、あ~あプライドが傷つけられたぜまったくよ」
「すまなかった、ガリウスまさか、そんな事になってるとは思っても見なかった・・・申し訳ない」
「ああそうともさ、まったく親が親ならって奴か・・・」
「すまん」
「バカ!、嘘だよ嘘!」
「ん??」
「俺はカムイに惚れたぜw変な意味じゃないぞ、男としてだよ!あいつはここらの領主に納まる器じゃないって事さ、俺もあいつの戦う姿見たくなったから来たんだ、たぶんマニウスも同じだと思うぜ!」
「そう言ってもらうと助かる、ありがとう」
「いやいいって!実際本当の事だしな・・・」
そういって二人は話すのだった・・・・
カムイは詰め所でボウの製作具合を確認しながら明日には予定の数三百が揃うのを計算していた
少し経ちジェイコスらと会話した後、屋敷に戻り着てくれた皆と食事し会話するのだった、
マニウスら皆一堂の前で、カムイは言う
「今回の戦い、父さん僕にこのエメーリナの兵を貸してくれませんか??」
「ん??カムイ何か策があるのか??」
「ええ、それもあるんだけど、そこに居る二人に約束したんだ少ない兵でも勝てるところを見せるってね」
「お前聞いたぞ、官邸で無礼な事をしたそうじゃないか?」
「ああ、ごめんなさい」
「まあ、まてアリオスあの場合はこっちが煮え切らず悪かったのだ彼のせいじゃない」
「それに、あれが無ければ我々も動かなかったかも知れん、実際心も体も動かされたのは、カムイの行動と発言だったのだよ」
「申し訳ありませんでしたマニウス様」
「アリオス、様はいらんと言っただろう・・・」
「ああ、すまんつい・・・」
「カムイ兵は道具じゃないそれは分かってはいるな」
「うん」
「それならいい、やってみなさい」
「うん、ありがとう、そしてマニウス様今から作戦を言います、よろしいでしょうか?」
「ああ、今回はこのエメーリナに援軍に来たのだ何でも言ってくれカムイよ」
「ありがとうございます」
そう言ってカムイは頭を下げ作戦を皆に語ったのであった。
皆は話を聞き、とても十五の子が考える作戦だとは思えぬほど精密に練られた作戦だった
次の日・・・・
南の広場に集まったエメーリナ兵百数十人に大きな曲がった盾と残りの数百人にボウを持たせ訓練が始まった・・・・
カムイの的確な指示と訓練内容の効率さに一同は驚いていた。
マニウスはアリオスにこの事を話し、またアリオスから今までのこの村の経緯を聞かされ驚きとその行動の早さ的確さに感服するのだった・・・
こうして訓練が開始され、五日が過ぎていった・・・
エンテレウスからの使者が再び村へと帰還し野盗軍が、ここエメーリナに二日の距離まで迫ってる事を報告した。
それを聞いたカムイは使者へエンテレウスとエメーリナ軍が合流する場所を伝え、使者をエンテレウスの下へ再び帰したのだった。
カムイはマニウスらにこれを話し、来たる野盗との決戦へ向けて作戦を伝えたのだった。
戦闘は、ここより北西へ一日ほど行った所にある草原[草はそれほど大きくなく、戦が無く平和ないつもなら、牛達の放牧場になっている場所]で行う事として、地形上向こう側とこちらから草原の中心に向かって下り坂になる場所を対峙する場所に選び、軍の配置を支持したのだった。
まず、先頭にガリウスとカムイが重騎兵と歩兵で突っ込み後ろから、マニウスらの弓が援護し、重騎兵、歩兵の両脇の斜め上に新しく作った盾、ボウの部隊を自警団のジェイコスとその部下に、そして騎兵にアリオスを当て、作戦を指示したのだった。敵に向かっては三日月の欠けている部分が向いてるような陣形であった。
そしてこの場所に誘い込むべく、カムイらが囮を行う事を伝え、奇襲したときのカムイとエンテレウスら自警団が囮役を務める事にしたのである。
翌日・・・・
一行ら千二百名弱の軍は北西の草原近くに待機し、エンテレウスらと合流したのだった。
エンテレウスは、もうすぐそこに野盗の軍が居る事を伝え、カムイと囮作戦を開始したのだった。
カムイら自警団は敵の陣へ急ぎ、無理と分かるように敵に自分の姿をさらし敵を引いたのである。
敵の指揮官と軍も、カムイらを追い草原まで来たとき、エメーリナの軍が居た事で目を疑ったが、数上では自軍が上回っている事を確認し指揮官は少しホッとしていた。
その日は、両軍ともにらみ合ったまま、お互いに警戒し合い、日も落ちてきた事もあって、そのままそこで夜が明けるのを待つ事にしたのだった。
アリオス騎馬隊は、この間カムイの作戦通りにエンテレウスと二手に別れ、左右に大きく展開し戦闘が始まるまで敵に気ずかれぬよう身を隠したのだった。
一夜明けて昼少し前・・・・
マニウスが弓兵に火矢を敵に放つように命ずると兵は敵に向かって火矢を放ったのである。
こうして、野盗との戦いが始まった。
ガリウスとカムイは重騎兵と歩兵を指揮しまっすぐ敵へ丘から坂を下りながら進んで行き、正面の兵とぶつかり戦ったのであった。
ガリウスとカムイはここで兵たちと少しの間、戦闘を持ちこたえ脇から来た新しい装備のジェイコスが来たのを確認し、引いたのだった、それを見ていた敵の指揮官は、正面の部隊へ追撃を指示した、しばらくして兵が追ってきたその時であった、両脇の盾の中から夥しい数の弓が発射され野盗の正面の部隊は次々に倒れていった
そして弓の掃射が終わりカムイらは、すかさず転進し敵に迫っていった、これを見てジェイコスらは正面に進み敵の弓隊近くまで急いだのであった、敵の弓隊もこれを見て両弓隊に弓を放ったが、折れ曲がった大きい盾に降り注ぎ、弓も効果は無く、その盾に守られるようにボウ隊は進んで行ったのだった。
ジェイコスらボウが弓隊に迫ったとき、さらにその両脇の森で潜んでいた騎馬隊のアリオスらが戦場へ入ってきたのだった、これにより弓隊は壊滅、残る歩兵もあとわずかとなった時、カムイは馬を駆り敵指揮官がいる本陣へ、まるで平原に突如として吹いた突風の様に真っ直ぐに、そして目を疑うほどの速さで迫っていったのだった。
野盗指揮官は、これを見て撃退を指示したが迫り来るカムイは止められなかった、マニウスはまたしても、カムイのあの目と行動に恐怖を感じながらも、弓隊に前進と援護射撃を指示するのであった。
ガリウスもまた、カムイを追い敵歩兵を倒して行った。
カムイは、敵指揮官と対峙したとき、あの奇襲時にいた大きな体の指揮官が前に立ちふさがった。
「お前も私もここが正念場だな」
「ああ、そうだな・・・」
「また、その目か・・・ガキのくせして恐いな~・・・だが俺のこの血は再び、お前と戦いたくてな熱くなっているのだよ・・・」
「ええ、あの時の決着付けましょう・・・」
「僕も貴方とここで遊んでる訳にはいかないので・・・」
「もう俺を倒した気でいるのか?フフ、俺もなめられたもんだよ・・・まったく・・」
そういって二人は戦った・・・何度かのつばぜり合いの後・・
「終わりにしよう・・・」
カムイがポツリと言った瞬間・・・一瞬だったそれは・・・・カムイは敵の指揮官の剣ごと体を切ったのだった・・・
「剣ごと切るかよ・・・俺じゃお前にはかなわなかったな~」
「ああ・・・」
そういって後ろにいた、野盗の最高指導者に向かっていき、怯える指導者を切り捨てたのだった・・・
アリオスはそれを見て戦闘中止の声を上げ、野盗との何年かの戦いが終わった・・・
カムイらの軍は歓声を上げていた。ただカムイはこの戦いで戦の空しさと悲しみを知り、喜べず考えに悩み苦しんだのだった・・・
その夜・・・
「父さん僕は今日沢山人を殺した、野盗とは本当にこんなやり方で解決するしかなかったのだろうか?」
「もっと違うやり方もあったんじゃないかな・・・今となってはもう遅いけど・・」
「カムイ・・・」
「そうかも知れんな・・・しかしなカムイ・・・話し合いで解決できれば本当は良いのだけど、相手が武器を持って我々の村を攻めて来ていたのだ、それに彼らはとても話し合いで解決できるような奴らじゃなかったろ?そんな時間も無かったしな、ただカムイ・・・私らは決して戦を仕掛けたんじゃない、これは自分達を守る、いや防衛の為の戦、時には戦わねば守れぬ物もあるのだよカムイ・・・」
「うん・・・」
「悲しいね・・・父さんはこんな事を何年も続けて来たんだよね?僕より何回も何年も・・・」
「ああ、辛い戦いだった・・仲の良い友も兵も沢山死んでいったよ・・・」
「そして思うのだ早く平和になって、早くお前ら家族の元に帰る事をね・・・」
「うん」
その後ろでマニウス、ガリウスがこんな親子の話を聞いて二人も思うのだった、平和な世の中が早く来るように、そして戦いが終わるようにと・・・
次の日、マニウスとカムイらは村へ帰還し、この事をカイウスと村人に報告し宴が模様された。
この日より二日後マニウスらはアリオスとエメーリナ兵を残し官邸に帰って行った。
再びこの村に平和な時がおとずれて、約一ヶ月の時がたった、官邸から伝令がやってきて、アリオスらは再び戦地へと出兵する事となった。
村では、野盗との戦でカムイらの活躍の話を聞き襲われた各村から、ここエメーリナへの移住者が増え村は活気に溢れかえっていた。
これにより、人数が少なかった自警団も人が増え、カムイらは当初八十人弱から三十人弱になった自警団の人数も百五十人を超えていた。
アリオスもこの人数を見て安心し、次の戦場へと向かうため官邸へと兵を行軍させるのであった。
「また留守にしてしまうな、カムイよ・・・」
「うん」
「父さんと、母さんを・・そしてここエメーリナを頼むぞ」
「うん、分かってる」
「グラビィア、そしてリーネ行ってくる」
「ええ、あなたお気をつけて・・・そしてお早いお帰りを待っております・・・」
「ああ」
「アリオス様行ってらっしゃい」
「リーネ、君はもう家の子なのだ、父と呼んでくれ・・」
「はい、お父様行ってらっしゃい」
「うん、カムイらの言う事を聞いて良い子でな・・・」
「はいw」
こうしてアリオスは全体に大きな声をかけ軍は進み始めエメーリナの北方へ消えていったのだった。
カムイらもこれを見えなくなるまで、見送っていった・・・・
再び父と出会うその時を思いながら、カムイは一行の安全を願うのだった・・・・
第一章・・・・第二話 エメーリナの戦い・・・・・
・・・完・・・