瀬戸内レモンタルタルベーコンてりたま
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てりたまバーガーがマクドナルドに出ると、「春だなぁ」と感じる。
夕飯は何にしようかと冷蔵庫の中を見ると、見事に何もない。
ふと、そういえば、最近、マクドナルドでてりたまが始まったのを思い出した。
LINEを開いたら上の広告にショートケーキパイとやらが表示されて、これはちょっと気になるなと思っていたのだ。
とはいえ、今から着替えるのも面倒くさいが、でも、冷蔵庫の中は空っぽだし…
しばらく、往生際悪くうだうだとしていたが、「いや。春はてりたまを食べないと」と、重たい腰を上げた。
外はもうすっかり暗く、昼間の暖かさが嘘のような冷たい風に身をすくませる。
ちょっとそこまでがずいぶん遠く感じるなと思いながら、車のライトが流れていくのを見るともなしに見ながらもたもたと歩く。
そろそろ帰宅ラッシュの時間だ。
ひっきりなしに向かってくる車の流れの先に、あのお馴染みの黄色いMが泰然と立っているのが、夜の暗さでいっそう目立つ。
指先を凍えさえながらたどり着くと、ドライブスルーに長い列ができていた。
しまったと一瞬眉をひそめたが、ここまで来たら、もう並んででも食べたい。
仕方なしに中に入ったが、意に反して、店の中は閑散としていた。
どうやら、混んでいるのはドライブスルーだけだったらしい。
ホッとしながらタッチパネルの前に立つ。
タッチパネルが押しても反応しない時の気まずさと言ったらないが、今日は大丈夫だ。
メニューから、「瀬戸内レモンタルタルベーコンてりたま」を選ぶ。
飲み物は、ショートケーキパイを食べようとしているのだから、ここはやっぱりホットコーヒーだろう。
ポテトは「塩なし」が選べたのでそうする。ケチャップを付けて食べたいが、ケチャップは選べるところがなさそうだったので、支払い時に口頭で頼んだ。
レジの担当者が若葉マークを付けているのを見て、「そんな時期か」と感慨深くなるのは、歳をとったということだろうか?
若葉マークのこが少し迷う素振りをすると、教育担当者がサッと横に着く。
「今ドリンクはこれとこれでしょう?この時は、まずこのサイズのこれを出して…」それからね、と、手取り足取りかなり甲斐甲斐しい。
若葉マークのこにはメモを取る素振りはなかったが、それでも素直に頷き、聞いている。
私の時代には、「メモ!」とか言われたり、自分から聞かないのに来てくれるなんて奇跡だったものだが…。
しかも、今、指導中だと見るや、近くのスタッフがサッときて、他の袋詰めまでし始めるではないか。
すごい…。
「なんだかんだと言っても、《令和》って良い時代になったんだなぁ」と、つい実感し、なんだか嬉しくなってしまった。
「お待たせしました」
受け取って席に着き、早速、瀬戸内レモンタルタルベーコンてりやきを開けた。
緩めのタルタルだ。
パクリと一口食べたら、歯茎がズキリとした。
…そういえば、痛めたのだ…。
気をつけて食べ出したが、強く噛むとズキッと痛みが走る。
痛みを我慢して噛みながら、「おや?」と首を傾げた。
食べ進めれば進めるほど、なんだか食べたことのある味だ。
思わず検索すると、よく見れば画像の横にある文字は「新」ではなく「復活」だった。
通りで…とは思ったが、でもパンが柔らかく、歯茎を痛めている今はそれがなんとも地味に嬉しい。
ショートケーキパイは、とにかく色味がかわいい。鮮やかな濃いピンク色のパイの春らしい色合いに、気分がパッと華やぐ。
一口齧るだけで、歯茎に即衝撃がくるほどサクッとあがったパイの中から、トロッとしたイチゴジャムがこぼれた。
でも、――ショートケーキ…?
スポンジっぽい部分と白いミルクっぽい部分はあったが、あまり噛めないせいか、全体としてはイチゴジャムが勝つ印象で、ショートケーキかと言われると、――どうだろうか?
なんでマックにきたのだろう?
やわやわと気をつけて噛みながら思わずそう思ったが、てりたまとショートケーキパイを食べ終えたら「こんなに寒くても、やっぱり春は春だなぁ…」と思って、現金にもなんだかホッとしてしまった。
やっぱり行ってよかった。
ただ、今度は歯茎を痛めてない時に食べようと思う。




