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つまらぬ男  作者: kiyohiro
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男 一

つまらぬ男


しみったれにしみったれた、東北の、内陸。

閉鎖的な通りの、つまらぬボロで灰色のアパートの二階、男が一人、午前四時、頼りない窓柵に寄っかかって、煙草を吸っている。左から見て、すさんだ黄色い洗濯屋、道路挟みで、塀に囲まれた紫のきたねえ家、英字看板の、美容室か、なにか、嫌に小奇麗な豆腐のような、建物。男は、朝のこの辺りが好きだ。昼は嫌いだ。夜も嫌い。朝ならば、人間はおらず、車はおらず、あるのは木枯らしと、どこかから聞こえる選挙車の、むかむかするような演説口上など(実はそんなものは聞こえていないのだが、昼間の記憶から引っ張り出してむかむかしている)そんなものばかり。男は、二十八だが、選挙というものに行ったことがない、行こうと思ったことも、ない。会社に勤めていたころは、第一行く時間がなかった。三年前に会社を辞め、蓄えを喰い喰い、今日まで生き永らえてきたが、いよいよ、家賃も滞り、様々な社、または局とつくところから、変な封筒も届くようになり、金を借りてまで生きたいという気も、また、再び職を探そうという気も起らず、日々はつまらぬし、外は寒いし、死にたくはないが、仕方がない、死ぬしかないのかな、と一人で合点して、しかし、死ぬのも億劫だ、畜生、癌になって、ぱあと死にたいぜ、などと、分からぬ考えを巡らせたのが、春ごろ。じつに九か月、つまらんつまらんと言いながら、死ぬことも、猛烈に生きることもなく、正月を迎えた。男は健康である。身体のみでなく、頭にも病気や欠陥はない。ただ、特技がなく、長所のないというだけなのである。男の一日は、実につまらぬ。ソファから身を起こすところから始め、人通り、車通りがあるまで煙草をふかし、唾を吐き、舌打ちをする。以前ならば(学生の頃ならば)、実にいやらしく、通行人に見せつけるように、それらを行ったであろうが、男には、そんなやくざを演じてみる気力も、意義も全く見失い、いまや、それらはただのくせとして残るばかりである。男に収入はないが、酒も煙草もやる。それは、男の、社会への抵抗であった。テレビを付ければ、酒を飲むと何々という病気のリスクが何十倍ですとか、煙草をやると寿命がこれだけ減りますであるとか、どうも男の目には、酒も煙草も社会、して世間から敬遠されているように見えたので、世間がよせと言うならば、何もばか正直によす理由もないか、そんな思いから、特段好きでも何でもないそれらに、安くない金を出しているのだった。もちろん、男が煙草をやれば、誰に迷惑がかかるという訳でもないが、やはりそこは、と言ってみても、格好のつく口上はなく、ただ、世間様と間違ったことをしてみたいだけであった。ここまででお気付きであろうが、この男は、薄っぺらで、つまらぬ、女も男も嫌いで、老人も子供も嫌いで、慣習も流行も嫌いで、その割、自らの路も見つけられず、探さず、好きなことは何一つなく、友人はいても親友はおらず、喧嘩をする度胸もなければ、ネットにおいても批判もできず、世間を嫌い、恐れ、蓑隠れし、自分より下を探し、その下においても、自分より優れた部分を見出してしまうと、たちまち落胆し、せめて風変りになろうとして見ると、今度は人から白い目をされ、いよいよ、だめと言う他ないのであった。

現代人に対する偏見を、文字として並べてみました。続きが出るかどうかは、分かりません。よい展開が思いついたら、続くかもしれないし、続かないかも…

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