【第9話:複数村との交易と経済頭脳の試練】
ザルクの工房で生産された油果油、乾果、簡易パン。
初めてのラディール村への交易を経て、アヤネたちは次のステップに進む準備を整えていた。
「今日からは、ラディール村だけでなく、周辺の小さな村々にも交易を広げます」
アヤネは地図を広げ、砂漠の道を指でなぞりながら孤児たちに説明する。
「距離や道の状態、村ごとの需要を計算して、効率よく回ります」
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細身で知的なソフィアは、交易ごとに村人と直接交渉し、最適な交換比率を引き出す。
「この油の品質なら、この乾果との交換が一番合理的ですね」
アヤネはメモを取りつつ、村人の反応や需要を分析する。
ソフィアの提案で、村ごとの最適な取引量や物資の優先順位を決めることができた。
孤児たちは荷車の運搬や商品整理に集中でき、ガランは砂漠の運搬を安全に管理する。
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砂漠の炎天下、荷車は沈みやすく、風も強い。
アヤネは作業中も計算を欠かさない。
(この距離だと、水分補給や休憩時間を正確に取らないと、体力が半減する……)
荷車の順序や積み方を工夫し、孤児たちが無駄な力を使わずに済むよう調整する。
ガランは力で補うだけでなく、作業効率まで意識して協力する。
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最初の村では乾果と油を少量ずつ交換し、保存食や砂漠で貴重な水を入手。
次の村では、ソフィアの交渉で少量の金属製器具や道具と交換できた。
アヤネは計算する。
(これらの物資をザルクに戻せば、工房の生産効率をさらに上げられる……)
交易の成功は単なる物資の入手だけでなく、周辺村との信頼関係を築くことにもつながった。
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夕暮れ、砂漠を抜けた丘の上で荷車を休める。孤児たちは疲れながらも笑顔だ。
「今日は本当にたくさん運べたね!」
アヤネは頷く。
「ええ、でもこれはまだ序章。もっと大きな流通を作るための準備です」
ガランも満足げに荷車を支えながら言った。
「お前の頭脳と、このチームの力……相性がいいな」
ソフィアは微笑み、アヤネの肩を軽く叩く。
「次はもっと効率よく、利益も最大化できるわよ。またラディールに来るのを待ってるわ。」
ソフィアはラディール村へと戻っていった。
砂漠に沈む夕陽に照らされ、ザルクの小さな工房チームは確実に力をつけ、異世界での経済的挑戦を本格化させ始めていた。
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