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【第7話:初めての交易とラディール村】

 朝日が砂漠を染める頃、アヤネは荷車の前に立っていた。

 油果油や乾果、簡易パン――すべて準備は整った。


「今日は、ラディール村へ初めての交易に行きます」

 孤児たちは少し緊張した面持ちで荷車に手をかける。


 ガランは荷車の後ろで力強く支え、砂漠の道を安全に進むために慎重に足を運ぶ。

「砂に埋まらないように、力のかけ方を調整するぞ」


 アヤネは地図を広げ、休憩地点や砂嵐の危険地帯を指でなぞる。

「ここで一度休憩しましょう。このルートなら砂嵐を避けられます」


 孤児たちは初めての長距離移動に息を弾ませながらも、アヤネの指示通りに動く。



 砂漠は容赦なく、熱風と砂粒が顔を叩く。

 荷車が少し沈み、孤児たちは汗だくになりながら押す。


「うわっ、重い!」

 ガランが笑いながら声をかける。

「力を合わせれば大丈夫だ。俺が後ろを押すから、手前で支えて!」


 孤児たちは声を合わせ、荷車を押し上げる。

 砂に埋まる荷車を協力して引き上げた瞬間、小さな達成感が生まれる。


 アヤネは横で微笑みながらも、次の休憩地点に向けて冷静に計算していた。

(体力の消耗を考えると、次の休憩地点まであと500メートル……少しペースを落とそう)



 長い砂漠の道を抜けると、丘の向こうに小さな村が見えた。

 赤い屋根と井戸、煙が立つ家々――人々の生活の気配が感じられる。


「つ、ついた……!」

 孤児たちは目を輝かせ、疲れも忘れたように村を見渡す。


 アヤネは深呼吸を一つして、荷車を押す。

「さあ、ここからが本番です。油や食べ物を村の人たちに見せて、必要なものと交換しましょう」


 ガランも頷き、力を込めて荷車を押す。

「よし、みんな、準備はいいな?」

「はい!」

 孤児たちも元気よく答え、工房で学んだ作業の連携が自然に発揮される。



 村の広場に着くと、住民たちが興味深そうに集まってきた。

 アヤネは笑顔で油や乾果、簡易パンを並べる。


「これはザルクで作った油果油です。料理にも、明かりにも使えます。乾果やパンもあります」


 住民たちは手に取り、味や香りを確かめる。

 そして交渉が始まった。


 初めての交易は小さな成功だった。

 少量の塩や保存食と交換でき、アヤネはメモを取りながら次の計画を練る。


(この調子なら、ザルクの工房も少しずつ町や村とつながれる……)


 夕暮れ、砂漠の風に乗って、希望の香りがほんの少し広がった。

 アヤネ、ガラン、そして孤児たち――小さなチームの挑戦は、ここから本格的に始まった。



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