【第6話:外への準備と交易への一歩】
朝日がザルクの廃墟を黄金色に染める頃、工房はかつてないほどの活気に包まれていた。
油果油の瓶は棚にぎっしり並び、乾果や簡易パンも十分に作れる量が確保されている。
アヤネは作業を終え、倉庫の整理を見渡した。
(これなら……外に持ち出せる)
砂漠の外の村々に届ける準備をするため、アヤネは計画を立てる。
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アヤネはノートに整理する。
量の確認:一度に運べる油の量、乾果やパンの数
荷運びルート:砂漠の安全な道筋と休憩ポイント
輸送方法:簡易荷車の改良、ガランの力を最大限活かす方法
交換するもの:砂漠で手に入りにくい物資と交換する予定
孤児たちはそれぞれ役割を覚え、作業の効率が格段に上がっていた。
「今日から外に運ぶ量を増やしてみましょう」
アヤネの声に、孤児たちは少し緊張しながらも頷く。
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今回の輸送には、ガランの力が欠かせなかった。
荷車に油や食べ物を積むと、砂漠の砂に沈まないよう、腕力と工夫で軽く押しながら進む。
「こっちの方が安定するぞ」
孤児たちは素直に従い、荷車は砂漠の砂の上でもスムーズに進む。
作業の合間に、ガランはアヤネに耳打ちした。
「……お前の計画、頭だけじゃなくて、みんなを動かす力もあるな」
アヤネは微笑む。
「ええ、みんなの力があればこそ、実現できるのよ」
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数日後、準備が整った。
孤児たちは荷車を押し、ガランが後ろから支える。アヤネは全体の指示を出し、砂漠の道を進む。
初めての輸送は不安も多かったが、作業の段取りは完璧だった。
途中、砂に荷車が少し沈むこともあったが、ガランの力と孤児たちの協力で難なく乗り越えた。
夕暮れ、無事に砂漠の小高い丘に到着する。眼下には小さな村が見える。
アヤネは胸を張る。
「これで、交易の第一歩が踏み出せる……!」
孤児たちも達成感に満ち、ガランは誇らしげに荷車を見下ろした。
廃墟だったザルクが、外の世界とつながる瞬間だった。