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おっさんテイマー、もふもふ魔物と辺境ライフ  作者: はぶさん


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幕間:楽園の息吹、それぞれの眼差し

夜の厨房は、囲炉裏の残り火がパチパチと音を立てる以外、静寂に包まれていた。ルナは、洗い終えた食器を丁寧に棚に戻しながら、今日の出来事を反芻していた。ポポルがもたらした奇跡。畑の作物が、あれほど生命力に満ちた姿を見せるとは。ユウイチロウさんが来てから、この村は本当に大きく変わった。


初めて彼に会った日のことを思い出す。森の奥で倒れていた、ひどく痩せ細った見知らぬ青年。最初は警戒心しかなかった。外の世界の人間は、私たちの村を脅かす存在だと教えられてきたから。でも、彼の瞳は、純粋で、どこか寂しそうで、そして、誰かを救いたいという強い光を宿していた。


彼が持ち込んだ「黒鉄」という不思議な素材、そして、私たちの常識を覆す数々の技術。水車、防壁、護身術、そしてあの美味しい料理の数々……。最初は何が何だか分からず、ただ驚くばかりだったけれど、今ではもう、それらが私たちの生活に、当たり前のように溶け込んでいる。


特に、村に響き渡る**音楽**の音色は、ルナの心を何よりも温かくする。子供たちが歌い、大人たちが笑いながら楽器を奏でる姿を見るたび、胸の奥がじんわりと温かくなるのだ。以前は、日々の労働と魔物への警戒で、皆の顔に笑顔は少なかった。それが今では、こんなにも生き生きとしている。


ユウイチロウさんは、本当に不思議な人だ。どこからそんな知識を、そんな温かさを持ち込むのだろう。彼の瞳には、常にこの村の未来が映っているように見える。時に、遠くを見つめ、何かを憂うような表情を見せることもあるけれど、すぐにまた、私たちのために笑顔を見せてくれる。


最近、リーフ様が話していた「異質な力」の兆候が気になっている。この豊かさの裏で、森のどこかに不穏な影が忍び寄っているのかもしれない。もし、この平穏が脅かされるとしたら……。ルナは、ぎゅっと手を握りしめた。


ユウイチロウさんは、いつも「みんなで村を守る」と言ってくれる。その言葉に、私たちはどれほど救われているだろう。彼の背中は、時に頼もしく、時に少しだけ寂しそうに見える。ルナは、静かに誓った。この「楽園」を守るために、そして、彼が一人で抱え込まなくても済むように、自分にできることを精一杯やろうと。彼の隣で、彼が築き上げる世界を、共に守っていきたい。それが、今のルナの一番の願いだった。


---


### グレンの視点:強くなる誇りと、新たな絆


広場の片隅で、ゴブリンたちの隊長であるグレンは、磨き上げた黒鉄の槍を肩にかけ、夜空を見上げていた。今日の訓練は、いつも以上に熱が入った。ポポルの力で育った野菜は、普段よりも力が漲るような気がする。それにしても、あんなにひょろひょろだったあの人間が、ここまでやるとは、全く想像していなかった。


ユウイチロウが村に来る前、俺たちゴブリンは、ただ村の周りをうろつく魔物を追い払い、獲物を狩るだけの存在だった。獣の皮を纏い、原始的な石の武器を使うのが当たり前だった。人間との交流なんて、考えたこともない。奴らは、俺たちを「魔物」と呼び、忌み嫌う存在だとばかり思っていた。


だが、ユウイチロウは違った。俺たちを「仲間」と呼び、同じ目線で接してくれた。そして、あの**黒鉄**という素材。最初に見た時は、ただの黒い石にしか見えなかったが、ユウイチロウがそれを打ち、磨き上げ、鋭い刃や強固な防具に変えるのを見た時、俺たちは震えた。こんな力があるのか、と。


訓練もそうだ。最初は訳が分からなかったが、ユウイチロウが教えてくれる護身術は、理にかなっていて、無駄がない。今では、どんな魔物が来ても、簡単にはやられない自信がある。もちろん、森の奥の「変な気配」は気になるが、もう以前のようにただ怯えるだけじゃない。


そして、**プニ**と**ポポル**だ。最初、プニはただの可愛らしい魔物だと思っていたが、ユウイチロウの念話の通訳をしてくれる賢い奴だ。ポポルも、最初はただのモフモフした塊だったが、今では村の畑をこんなに豊かにしてくれる。今日見た、ポポルの力でみるみる育つ野菜の光景は、忘れられないだろう。奴らも、俺たちの大切な家族だ。


グレンは、手に持った槍の冷たい感触を確かめる。ユウイチロウは、いつも新しいことを考えている。きっと、この先も、俺たちが想像もつかないような変化を村にもたらすだろう。でも、どんな変化が来ようと、俺たちはユウイチロウと共に、この村を守り抜く。この場所を、俺たちの、そして家族の「楽園」を守り抜く。それが、俺たちゴブリンの、新しい誇りだ。


「……ユウイチロウ、あんたは本当にすごい奴だ」


グレンは、そう呟き、静かに夜空を見上げた。月明かりの下、村の灯りが、強く、温かく輝いていた。


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