表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさんテイマー、もふもふ魔物と辺境ライフ  作者: はぶさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/98

第十三話:モフモフの来訪者と、癒しの実(前半)

朝の光が村を包み込む。ユウイチロウの畑は、七色の輝きを放つ光る実と、活気あふれる村人たちの笑顔で満ち溢れていた。グレンの腰の痛みを和らげた光る実の力は、村中に希望の波紋を広げていた。

ユウイチロウは、いつものように朝食を終え、プニとゴブリンたちと共に畑へ向かった。昨日の夕方、畑の奥で見つけた奇妙な足跡が、彼の心を捉えて離さない。プニが感じたという「フワフワした匂い」と「美味しい匂い」。それは、新たな仲間との出会いを予感させていた。

今日の空は、抜けるような青さで、爽やかな風が畑を吹き抜けていく。光る作物の実は、さらにその輝きを増し、まるで七色の宝石が揺れているかのようだ。

「よし、今日も頑張るぞ!」

俺が気合を入れると、プニが「うん!」とばかりに嬉しそうにプルプルと震えた。彼の体は、光る実の影響か、以前にも増して瑞々しい。

ゴブリンたちも、手慣れた様子で鍬や水桶を準備している。彼らの間では、昨日の『豊穣のシチュー』の話で持ちきりだった。ゴブタがゴブコに、シチューの味を熱心に説明している姿は、すっかり人間らしい会話に見える。彼らの知能も、日々の生活の中で確実に向上しているようだ。

【モフモフの気配】

畑に着くと、ユウイチロウはすぐに昨日の足跡を見つけた場所へと向かった。ルナも、その正体に興味があるようで、古文書を抱えながら俺についてきた。

「ユウイチロウさん、この足跡は、やはり普通の動物のものではないようです。土の掘り方が、とても特徴的……」

ルナが、足跡を熱心に調べている。彼女の探究心は、学者顔負けだ。

『お兄さん! 匂いする! 前より、もっと近くにいるよ!』

プニが、興奮した念話を送ってきた。彼の体は、フワフワした匂いを感じ取ったかのように、わずかに揺れている。

プニの指し示す方向を見ると、畑のすぐ外側、森の木々の間に、何か白いものが一瞬、見えた気がした。しかし、すぐに隠れてしまい、その姿を捉えることはできなかった。

「やはり、いるのか……」

俺は、村人たちに、畑の開墾作業を続けるよう指示し、プニとゴブリンたちを連れて、その白いものが見えた方向へと、慎重に近づいた。ルナも、古文書を片手に、少し緊張した面持ちで俺の後ろについてくる。

森の中に入ると、ひんやりとした空気が肌を刺す。木々の間から差し込む陽光が、地面に斑模様を作り出していた。辺りには、小鳥のさえずりや、風が木々を揺らす音しか聞こえない。

その時、ゴブタが、鼻をヒクヒクさせながら、何かを指差した。

「ユウイチロウ、あそこ!」

ゴブタが指差す先には、小さな低木の陰から、丸い、白い塊が顔を覗かせていた。警戒しているのか、すぐに引っ込もうとする。

俺は、ゆっくりと近づいた。その塊は、全身が真っ白でフワフワした毛で覆われており、小さな耳と、黒い瞳が特徴的だ。まるで、巨大な綿菓子のような見た目をしている。そして、その白い塊の足元には、昨日見つけたものと同じ、小さな穴がいくつか開いている。

「フワフワウール、かな……?」

ルナが、古文書の挿絵に描かれていた魔物の名前を呟いた。古文書には、その毛皮が非常に希少で、温かい衣料品になること、そして非常に温厚な性格であることが記されているという。

白い塊は、俺たちが近づくと、さらに身を縮ませた。怯えているようだ。

【信頼の証と癒しの実】

俺は、これまでの経験から、無理に近づいてはいけないと判断した。まずは、相手に警戒心を抱かせないことが重要だ。

「プニ、少しだけ、このフワフワウールに、優しさを伝えてあげてくれないか?」

俺がプニに頼むと、プニは「うん!」と頷き、彼の体から淡い光が放たれた。その光は、ゆっくりとフワフワウールの白い体に触れる。すると、フワフワウールの体が、わずかに震え、警戒していた黒い瞳が、少しだけ和らいだように見えた。

『お兄さん、この子、すごく怖がってるけど、お腹も空いてるって言ってる!』

プニからの念話に、俺は納得した。畑の土が掘り返されていたのは、空腹を満たすためだったのかもしれない。

「そうか、お腹が空いているのか。よし、待ってろ」

俺は、リュックから、昨日焼いておいた**『ハチミツパン』**を取り出した。この世界のハチミツは、濃厚で栄養価も高く、パンと合わせると絶品だ。優しく、ゆっくりと、フワフワウールから少し離れた場所にパンを置いた。

「大丈夫だ。怖くない。これを食べてくれ」

俺は、そう言いながら、一歩、また一歩と後退した。フワフワウールは、パンと俺を交互に見て、警戒を解かない。しかし、その黒い瞳は、パンに向けられている。

その時、グレンが畑から、小さな木の実を持って近づいてきた。彼は、俺たちが森に入っていくのを見て、様子を見に来たのだろう。グレンは、フワフワウールを視界に入れると、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに俺の意図を察したようだ。

「ユウイチロウさん、これは……」

「グレンさん、この子、お腹を空かせているようだ。もしよければ、何か食べられそうなものを、もう少し持ってきてくれないか?」

俺が言うと、グレンは頷き、すぐに村へ戻っていった。彼の顔には、もう魔物への警戒心はなく、ただユウイチロウへの信頼と、新しい命への好奇心が宿っていた。

しばらくすると、グレンが、アイリスとリリ、そして数人の村人を連れて戻ってきた。彼らの手には、村で採れた新鮮な根菜や、穀物のクッキーなどが持たれている。リリは、小さな手を振って、フワフワウールに「おいしいものだよー!」と声をかけている。

その時、リリの隣にいたゴブコが、フワフワウールに向かって、小さな草の束を差し出した。ゴブコは、フワフワウールの怯えた様子に、心を痛めているようだった。

フワフワウールは、リリとゴブコの無邪気な姿に、少しだけ身を乗り出した。そして、ゴブコが差し出した草を、おそるおそる、しかし一口で食べた。

『美味しい!』

フワフワウールから、プニを通して、そんな感情が伝わってきた。そして、白い体から、わずかに喜びの感情が溢れ出ているのが分かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ