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おっさんテイマー、もふもふ魔物と辺境ライフ  作者: はぶさん


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第二話:ゴブリンの親子とユウイチロウ印のスープ

本日二話目の投稿です。

森の中を歩き続けるうちに、陽も傾いてきた。腹の減りも限界だ。このままでは、異世界転生初日に飢え死に、なんて不名誉な記録を打ち立てることになる。

「プニ、何か食べられるもの、見つかるか?」

『うーん……、あっちの方、なんかいい匂いする!』

プニはプルプルと震えながら、小さな体を揺らして指差す。方向を示すだけなのに、妙に説得力があった。

「よし、行ってみるか」

プニの示す方向へ進むと、確かにかすかに香ばしい匂いが漂ってきた。焚き火の煙だろうか? となると、誰かがいる可能性が高い。人か、それとも魔物か。警戒しつつも、匂いに誘われるように足を速めた。

しばらくして、開けた場所に出た。そこにいたのは……。

「ゴブリン……!?」

木の棒のようなものを持った緑色の小鬼、ゴブリンが数体。そして、その中に一際ひときわ小さなゴブリンが震えているのが見えた。どうやら親子らしい。焚き火の周りには、粗末な獣の肉が刺さった串がいくつか転がっている。

彼らは警戒心丸出しの表情で、こちらを睨みつけていた。特に、小さなゴブリンを守るように前に立つ一匹は、かなりの殺気を放っている。

『こ、こわい……』

プニが俺の足元に隠れるように震える。うん、確かに怖い。ラガーマンとして多少の修羅場はくぐってきたが、武器を持った魔物に囲まれるのは初めてだ。

だが、あの小さなゴブリンの震えている姿を見たら、放ってはおけなかった。

「なぁ、お前たち。別に危害を加えるつもりはない。ただ、腹が減ってるだけなんだ」

そう言いながら、俺は両手を上げて、敵意がないことを示す。しかし、ゴブリンたちは一向に警戒を解かない。それどころか、先頭のゴブリンが唸り声を上げて、一歩踏み出してきた。

「ちょっと待った!」

このままでは戦いになる。いや、俺が一方的にやられるだけだ。何か、彼らの警戒を解く方法はないか?

その時、ふと、ある考えが閃いた。

ポーチに入っていた、あの魔物用の餌。あれは、魔力のあるものを引き寄せる匂いがあるのかもしれない。そして、もう一つ。

前世で培った、料理の知識。

「いいか、俺はただ、お前たちと同じで、腹を減らしてるだけなんだ」

そう言うと、俺は地面にしゃがみ込み、ポーチから薬草をいくつか取り出した。それに、森で見つけたキノコのようなものも加える。ゴブリンたちは怪訝けげんな顔で見ていたが、俺は気にせず続けた。

「これを見ろ。俺は、お前たちとは違うものを食う。そして、これは……美味いんだ」

俺は持っていたナイフで、キノコと薬草を細かく刻み始める。周りのゴブリンたちは、好奇心と警戒心が入り混じった目で、じっと俺の作業を見つめている。特に、小さなゴブリンが興味津々といった様子で、親の陰から覗いているのが見えた。

次に、水筒から少し水を取り出し、手持ちの小鍋(どこで手に入れたかは不明だが、転生時に持っていた)に入れる。刻んだキノコと薬草を投入し、焚き火の近くで温め始める。

湯気が立ち上り、森の中に優しい香りが漂い始めた。

ゴブリンたちの鼻がピクピクと動く。先ほどまでの殺気が、少しずつ和らいでいくのが分かった。

『……いい匂い』

小さなゴブリンから、そんな感情が伝わってきた。どうやら、彼らもこの香りに誘われているらしい。

「ほら、匂うだろ? これは『森の恵みスープ』だ。身体が温まって、元気が出るぞ」

俺は鍋の中を混ぜながら、それっぽい名前を付けてみる。そして、ポケットから小さく包んであった塩(これも転生時になぜか持っていた)を少々加え、味を調える。

「さあ、できた。よかったら、どうだ?」

小鍋をゴブリンたちの方へ差し出す。先頭のゴブリンが警戒を緩めず、じりじりと近づいてくる。小さなゴブリンが、その親の足元で、早く食べたいとでも言うかのように、そわそわしている。

ついに、先頭のゴブリンが恐る恐る鍋に手を伸ばした。すると、小さなゴブリンが我慢できなくなったのか、サッと前に出て、鍋の中を指差した。

『父ちゃん、食べたい!』

ゴブリンの親は、逡巡しゅんじゅんした末、小さなゴブリンに譲るように鍋を差し出した。小さなゴブリンは、恐る恐るスープを一口。

その瞬間、小さなゴブリンの目が大きく見開かれた。

『……おいしい! おいしいよ、父ちゃん!』

満面の笑み、とでも言うのだろうか。小さなゴブリンが、何度も何度もスープを口に運んでいる。その姿を見て、他のゴブリンたちも警戒を解き、一斉に鍋に群がってきた。

あっという間に鍋は空になった。そして、彼らの目には、もう警戒の色はなかった。むしろ、飢えを満たされた満足感と、俺への感謝の感情が満ちていた。

先頭のゴブリンが、小さなゴブリンを抱きかかえながら、俺の前にひざまずいた。そして、頭を下げて、何かを訴えかけてくる。

『……ありがとう。俺たち、あんたについていく』

再び、脳裏にシステムメッセージが流れる。

【ゴブリン(個体名:ゴブタ)をテイムしました!】

【ゴブリン(個体名:ゴブコ)をテイムしました!】

【ゴブリン(個体名:ゴブゾウ)をテイムしました!】

……一気に三体もテイムしちゃったか。しかも、あの親ゴブリンが「ゴブタ」か。力仕事が得意そうな体格だ。

「よし、よろしくな、ゴブタ。他の奴らも、今日からよろしく頼む」

『おう!』

ゴブタが力強く頷き、他のゴブリンたちもガッツポーズを取っている。彼らはこれから、俺の農作業の強力な味方になってくれるだろう。

プニも俺の肩の上でプルプルと嬉しそうに揺れている。

異世界での初めての食事は、魔物たちとの出会いと、俺の料理の腕が繋いだ絆の味だった。

「さてと。そろそろ、ちゃんとした人里を見つけないと、な」

俺の異世界スローライフは、思いのほか賑やかになりそうな予感がした。

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