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二度目のダンジョン・オチ

「お? もう戻ってきたのか。速いな」


 ダンジョン入り口の陽炎の前で光の粒子が現れる。ウラディミルは出席簿を閉じて帰還する生徒たちを迎えた。

 光の粒子が消え、出てきたのは九人の生徒。


「三人パーティにしては人数足りてねぇな。まぁいいか」


 戻ってきた生徒たちを一人ずつ見ていく。しばらく眺めた後、笑みを浮かべて肯いた。


「帰還魔術の第五強制発動での発動を確認だ。よくこの短時間で次の階層への階段にたどり着けたな」

「先生、第五強制発動ってなんすか? あと、階段を上ろうとしたら帰還魔術が勝手に発動したすけど……」


 手に剣を持った緑髪の男子生徒が手を上げて尋ねる。ローブを上下にわけたような防護服は所々破れていた。その男子生徒だけではなく、他二名の男子生徒の服も同様だった。


「その階段をあがろうとして発動するのが第五強制発動さ。あとの強制発動は制限時間を過ぎた時、とかそんなんだ。サカタキ、お前ん所は四人だったろ? あとの二人はどうした?」

「……制限時間が来れば、戻ってくると思います」

「なるほどな」


 ウラディミルが出席簿を開き、ペンを取り出して何かを書き連ねる。


「にしても同時ってのもすげぇ偶然だけど、マジで速かったなぁ。制限時間の半分も過ぎてないぞ。もう今後の授業でもこのパーティにするか?」


 笑いながら言うウラディミルに、生徒たちはそれぞれ表情を見せた。六人の男女は期待に満ちたもので、二人の女生徒は驚きと不満が混じったもので、ユーガは僅かに顔をしかめさせた。


「せ、せんせえっ!」

「あの!」


 驚きと不満が混じった女生徒が声を上げる。一人は幼い見た目で、女生徒の中で唯一防護服が汚れているツインテールの少女。もう一人は不思議な金髪と黄と青のオッドアイを持った少女だ。


「ん? なんだ、ライドウ、ヒナモリ?」


 しかし、ルカとチヤが次の言葉を出す前に、ユーガが横から口を挟む。


「バラキン先生。このパーティでの決定はしないでほしい」

「お? なんだ、サカタキ。不満か?」


 ウラディミルの視線が二人からはずれ、ユーガに向かう。ルカと同じパーティの男子生徒が面白くなさそうな顔をするが、ユーガは構わずに続けた。ルカとチヤの驚きと期待の視線すら、見ない。


「ダンジョン内でヨシムラと一緒に戦ったので分かったのですが、俺の戦い方は彼女にかける負担が大きい。なので、ヨシムラには……敵からすぐ離脱できるようなヒットアンドアウェイが得意な生徒と組ませてあげてください」

「へぇ……」


 ウラディミルがニヤリと笑う。

 そこでアヤナがユーガと向き合った。


「あ、ま、待ってください、サカタキくん。わたしなら平気です。これからも一緒に……」

「ヨシムラ。俺の戦い方では君の足を引っ張りかねないんだ」

「そんな……あ、わ、わたしと組みたくないんですか……?」


 俯くアヤナ。小さく震える肩に、ユーガが手をそっとおいた。

 

「それは断じて違う。今回のダンジョンでも俺は君の援護で大分楽だった。だが、俺の戦い方に合わせていたら、ヨシムラは自分の戦い方が出来ない。俺はそれが嫌なんだ。君が強くなる邪魔を、したくない」


 真っ直ぐ見つめてくるユーガの目を、アヤナもじっと見返す。そして、一度俯いて、またユーガを見上げた。


「じゃあ……わたしが、誰も巻き込まないくらい自在に風を操れるようになったら……そのときは一緒に居てくれますか?」

「もちろんだ。俺もその時までには、もっと強くなっておこう」


 アヤナはぱっと笑顔を浮かべて、杖を握り締める。


「約束しましたからっ。今度は忘れたなんていわせませんからね!」


 それじゃあ、わたしこれ返してきます。と付け加えて、アヤナが走り去っていく。

 その背を見送ってから、ユーガは振り返った。そして、一瞬だけ体を震わせる。


「な、なんだ?」


 そこに居たのは、ニヤニヤと笑みを浮かべるシノハラと、面白くなさそうな顔のコウノ、きゃーきゃーと悲鳴を上げながら固まって小さく会話する女子三人。

 そして、微笑んでいるのに目が微塵も笑っていないルカとチヤだった。


「おいコウノ。今日は暑いな」

「けっ、暑すぎてウゼぇくらいだぜ」


 男二人が手で自分の顔をあおぐ。それにあわせて女生徒三人もクスクス楽しそうに何かを話す。


「それじゃあ、冒険購買部に武器と防護服を返しに行きましょうか」

「うんーそうだねー。防護服着てるからものすっっっごく暑いし、このままだと誰かさんを思いっっっきりぶん殴っちゃいそうだもんねー」


 目が笑っていない微笑みのまま、ルカとチヤがユーガの横を通り過ぎ、それに五人の男女が続く。


「…………なんなんだ?」


 一人ぽつんと残されたユーガの肩を、ウラディミルが軽く叩いた。






『二度目のダンジョン・終』

読んでいただきありがとうございます。

能力とか魔術とか、無意味に小難しいですね!もうさらっと読んでくださって問題ナッスィンですよ。

今回は二度目のダンジョンということで、ユーガたちが別の人と組んだらこんな感じという、ちゃんと他の生徒もいるんですよーみたいな雰囲気を出したかった…んですが、出てるかどうかは…。


今後とも彼ら彼女らには色々降りかかります。色々起こります。現実は小説より奇なりなんていいますが、奇ばっかりなのはやっぱり妄想もとい想像の醍醐味ってなやつですよね。


ともあれこれからもぜひお付き合いください!

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