予習
五百年。世界が激変するのに有した時間である。
人外。異形。悪魔。魔獣。モンスター。様々な呼び名を持つそれらは突如として世界に現れ、人類を文字通り駆逐し、一瞬にして人間が永きに渡り居座り続けた頂を奪い取った。
しかし、座することが出来たのはたったの百年。
追いやられ、隠れ、餌となるだけになった人間が次々に超常の、はたまた異能の、もしくは神の加護なのだろうか。
人外のそれらと対するだけの力に目覚め始めたのだ。
後に人々はこの力を『能力』と称するようになる。
『能力』を獲得した人類は瞬く間に反撃を開始。兆に及ぶ人外と激突した。
拮抗する力。それは戦争と言えるものではない。
人外と人間の喰い合いは永久に続く。炎は森林を焼き、風は山を削り、水流は大地を激し、そして大地は使役される。
母なる大地はかつての美しさを無くし、ただ荒廃した文明だけが遺った。
――以上、中等部四年生用『歴史』の教科書二十三頁より抜粋――
――以下、初等部一年生用『かてい科』の教科書四十五頁より引用――
いまのわたしたちがすんでいるばしょは、前はたくさんあった大りくが一つになった大きなしまの上です。
ばらばらにすんでいた人たちはみんなでいっしょに住むことになりました
それがここ、『ちょうきょだいとしツキノイショウ』です。
ツキノイショウは12のとしに分かれていて、みんながすんでいるところは『エンヨウ』とよばれています。
ほかにも12のうちまん中にある『ショヨウ』、一ばん上の『チュウヨウ』、チュウヨウから時けい回りに『ゴヨウ』、『リクヨウ』、『レイコウ』、『ランシュウ』、『ケイシュウ』、『ビョウショウ』、『コハル』、『ヒッコ』、『ボサイ』があります。
わたしたちの『エンヨウ』は、『レイコウ』と『ランシュウ』のあいだにあり、『だい六とし』と言われています。
――以上、引用終わり――
――以下、中等部一年生用『能力』の教科書四頁から七頁より抜粋――
『能力』は戦う力でもある。
能力の詳細は多岐に渡り、まさに多種多様である。人類が『能力』に目覚めて四百年たった現在もその種類は増え続けている。
『能力』はその者の個性でもある。
能力は二つ以上開花することはない。一人につき必ず一つ。似たものはあれど、同じものなど一つもない。
『能力』は心の象徴でもある。
能力はその者の個性であると前記したが、その者の心を現したものでもある。
潜在意識、無意識、深層心理。もしくは恐怖、喜び。能力はその者の心の、何を現しているのか。それは分かりえない。
しかし、ただ一ついえることは、『願望』で能力は決定されないという点だ。
――以上、抜粋終わり――
――以下、中等部五年生用『魔術』の教科書二頁より引用――
『魔術』とは身体、または万物に流れる生命エネルギーである『マナ(もしくは魔力エネルギー)』を『魔術エネルギー』に変換し、超常現象、身体能力の向上などを引き起こす技術のことです。
先の超常現象という言葉から分かるとおり、魔術は『能力』に酷似したものが多くしかしそれらを上回ることができない故、『劣化版能力』と揶揄される場合があります。
しかし、一点特化型の『能力』と違い幅広く様々なことに対応できることから汎用性は『能力』を軽く凌駕しています。
決して、『魔術』は『能力』に劣ってはいません。
しかし、魔術は行使する際『属性』に縛られるという欠点があります。
『属性』とは『能力』が開花した時点でその人物に現れるもので、『火』、『水』、『風』、『土』、『無』の五属性が確認されています。
属性に縛られるのは魔術だけではなく、行使する術者も同様です。これらの属性は全て先天性で、自らの属性以外の魔術を行使することが出来ません。
また属性はその者の身体で確認することが出来、主に頭髪といった体毛に現れます(火ならば赤、水ならば青)。
例外として先天属性が『無属性』の者のみ、属性に縛られることはありません。ですが、全ての属性と相性が悪く、最悪の場合無属性以外の魔術が行使できません。
――以上、引用終わり――
――以下、中等部用『魔能科学』の教科書目次前頁より引用――
かつて人類は科学を用い機械の文明を築き上げた。
しかし、幾たびの戦闘と、魔獣による資源地の占領等で機械を作るための鉄や銅が不足しだす。
そこで先人たちは不足した資源分を魔術と能力で補うことにした。
そうして生まれたのが『魔能科学』である。
今や魔能科学は我々の生活と密接に関わっており、今後も発展を続ける『相棒』となるだろう。
――以上、引用終わり――
――以下、エンヨウ学園高等部一年D組出席番号女子十三番の生徒のノートの色んな頁から抜粋――
すごく昔にまじゅうが現れた!こわいね(よく分からない絵が描かれている)
でも昔の人めっちゃがんばる! (大きな矢印があり) みんなやっつけちゃえ!
それでも決ちゃくがつけられなくて今もまじゅーとはたたかってます! (よく分からない絵が書かれており噴出しで『がんばろー!』と付け加えられている)
そしてみんなばらばらだったらサビシーってことでいっしょにくらしてる(よく分からない何かが嬉しそうにわらってる)。みんないっしょのほうが楽しいから(とぐろのようなものの周りに沢山の棒が飛び出している絵が書かれている)。
のう力はいっぱいあるよ! 変化けー(これはユーちゃん)とか干しょうケイ(ボクとルカちゃんとレーちゃんはこれ)とか!
と市もいっぱいある。たくさんあっておぼえきれない(よく分からない何かが涙を流している絵)
おしまい(桃色に塗りつぶされた大きなハートマークがかかれている)
――以上――
はい、コヅツミです。やっちまいました。やっちまいましたよ!
何新シリーズとか出しちゃってるんでしょうね?でもぶっちゃけこれずっと書きたかったものなんですよ!我慢できずについ、てへ☆
実は狼殺しより前に考えてたものだったり。…第二部も書かんと、一体なにしてるんでしょうねぇコヅツミは。
…え、えー、こんな駄目作者ですがこっちもぜひお付き合いください!ではでは!