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クリステラ=アマリリスの処刑

 なろうラジオ大賞に応募した作品をリライトして長編にしました。

 『なろうラジオ大賞の応募作へのダイマ』という名目で書いているので、そちらもお願いします。

 憎悪の視線が向けられて、侮辱の言葉を投げつけられて、狂気の沙汰が下されて、彼女はその中心に居た。否、跪かされていた。

 元々は真っ白なドレスだったもの、今は汚れて灰色になっていた。

 皆が褒め称える金色の髪は痛み、色までくすんで見える。

 目は落ち窪み、肌はかさつき血の気は消え、首に掛かる時計の金色だけが不気味に輝いていた。

 『これより、人心を惑わし、数多の命を弄び、王国を混乱に陥れた魔女、クリステラ=アマリリスの処刑を行う!』

 処刑台に大男二人に跪かされ、死刑宣告が厚い雲に覆われた空に響き渡る。

 民衆は他を押し潰さん勢いで処刑台の設置された広場に殺到し、人が押し潰し、押し潰されていた。

 何故そんな事をするかと言えば、皆が彼女の死を待ち望んでいたからだ。

 『傾国の魔女』・『稀代の悪女』・『残虐の大淫婦』『大逆の女悪魔』・『国喰らいの毒婦』・『邪悪の権化』

 そう呼ばれた。それに相応しい極悪人だった。非道の数々故にそれは仕方ない。

 (訳無いですの!)

 処刑台に跪かされたクリステラ=アマリリスは困惑していた。

 身に覚えのない、やった事の無い、何のことか心当たりも無い罪で罰を受けるのだから当然だ。

 彼女が傾国の魔女?稀代の悪女?(フフ)残虐の大淫婦?(ハッ)大逆の魔女?(ブフォァ!)国喰らいの女悪魔?(クク…クッククク)邪悪の権化?(( ̄∇ ̄;)ハッハッハッ!)

 (なんですの傾国って?国どころかここ数年杯さえ傾けた事が無いのですのに!悪女とか、大淫婦とか、毒婦とか、邪悪ってなんですの⁉……………ってまさか!)

 彼女には心当たりがあった。

 被害者の損失が自身の利得に繋がる人間が。

 彼女がやってもいない凶行を彼女がやった様に見せる事が出来る人間が。

 他者に外道を成す事に躊躇いが無く、それを擦り付ける事にも躊躇わない外道()が。

 (ぁぁぁぁぁぁあああああぁぁあんんのクソ旦那ぁぁぁぁあああああああ‼)

 ベリオン=アマリリス。この国の伯爵にしてクリステラの夫。

 高貴で誠実、気高く優しい貴族。社交界の華。

 そんな夫を持った妻クリステラは幸福と言われている……周りからは。

 (私の家は幾つもの派閥に顔が利き、地下資源や水産資源も豊富。正直言ってあのクソ男、私の家の力目当てに結婚しやがってましたの!

 最近家の収入が減って、家所有の鉱山や漁船団が知らぬ間にロエルビンなる輩の名義に変更されてましたけど、やっぱりクソ男の仕業ぁぁ!ですの!)


 ベリオン=アマリリス。陰では外道として有名な男。

 低俗で不義理、卑しく醜く冷酷な外道貴族。

 あちこちで女を作るが愛は無い。

 使えそうなモノは何であれ利用出来るだけ利用して、都合が悪ければ捨てる。

 『クソ外道』という単語の具体例。悪の見本市のようなクズである。


 (今からでも反論を………無理そうですの。)

 クソ外道の特徴:頭は切れるから完全犯罪がデフォルトと言ってもいい。要は今更騒いだところで如何にもならない。

 (魔法や武術で逃亡…私の力じゃ到底無理ですの!)

 クリステラの戦闘力:地力こそ高く、魔法に関してはエネルギー保有量が世界トップクラスだがそれを行使する術が乏しい。

 (助けてくれる相手……も特にいませんの!)

 クリステラの人望:無い訳ではない。が、この状況で彼女を助けてくれるような者はいない。恨まれてこそないが、カリスマが有るとは言い難い。といった具合だ。

 (人生終了のお知らせですのぉおおおお!………というかあんのクソ旦那ぁ!何見てんですの⁉)

 殺意に満ちた民衆の向こうに見えた馬車。その窓から僅かに見えたのは見飽きたクソ旦那(外道)の顔。その表情は悦楽と悪趣味な笑いに満ちていた。

 (許さない!許さないですの!人に悪を押し付けてのうのうと生きて!決して、許しませんの!)


 が、しかし、そんな思いを胸に抱きながらも、何もできないクリステラ。

 その頭上には人間の胴体ほどもある大斧。無慈悲に処刑人がそれを振り下ろした。

 視界が転がり落ち、痛みさえ感じられない。

 彼女が最期に見た光景は熱狂した民衆と、先祖代々を見守ってきた時計だった。

二話目鋭意制作中です。お待ちください。

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