幻想の破綻
「亜里抄ちょっと話したいことがあるんだ」
「えっ、何?」
次の日のゼミの後だった。僕は亜里抄を引きとめた。
僕は亜里抄を連れて、学校の近くの公園に一緒に歩いた。夜の公園には人はほとんどなく、噴水の水が月の光に反射して黄色く輝いている。
「僕は亜里抄のことが好きなんだ」
「えっ、何で?私は聖也のこと大切な友達だと思ってたし。大体、今まで隠してたけど彼氏いるんだ」
予想外の反応に僕は怒りが湧いた。亜里抄は単に僕の心を弄んでいただけなんだ。
「じゃあ、亜里抄は彼氏がいるのに僕とデートしていたのか?」
「だって、彼氏と一時期上手く行かなくてそんなときに聖也と出会って。彼氏と仲直りしたけど、聖也といるのがすごい楽しくて」
「お前騙してたのか?」
「そんなことはないよ。気持ちはホントに伝わってきたし、嬉しかった。聖也は大切な友達」
「でも、お前ずっと一緒にいようって」
「今の関係からでも彼氏や友達の超えた永遠の関係が築けると思うな」
「ふざけるな!それはお前の自己都合の正当化に過ぎない」
気づいたとこには、官能的な吐息にも似たうめき声を上げる亜里抄がいた。
「助けて」
僕は亜里抄の首を絞めていたのだ。もしかしたら、彼氏に抱かれている時にも亜里抄はこんな性に満ちた声を出しているのだろうか。エロスとタナトスは表裏一体だ。共にそこに翻弄される愚かな感情があるからだ。気づくと僕の下半身は無意識だったが、湿っていた。
僕は亜里抄を殺した。今、この公園にいる行為者は僕だけ。そして、目撃者も僕だけだ。




