夢幻の日々
それから亜里抄と僕はデートを重ねた。
二人で食事に行ったり、遊園地にも行ったり。もしかしたら、人から見たら付き合ってるようだった。
その日は、二人で夜景の見える新宿のデパートの中華レストランで食事をしていた。
デザートの杏仁豆腐を食べながら、彼女が笑顔で話す。
「聖也といると本当に時間を忘れるくらい楽しい。今まで付き合ってきた男の人より断然」
僕は固まった。予想はしていたが亜里抄には以前付き合っていた彼氏がいたんだ。
もしかしたら、彼女は僕の知らない男の精液に汚されているかもしれない。僕が聞いたことのない獣のような卑猥な声を上げ、男の前で平伏している彼女の姿が僕の脳内を駆け巡る。
そんなことを考えると、僕はいても立ってもいられなくなったんだ。僕は彼女を理解者として認めた。しかし、僕と彼女は付き合っていないんだ。何だか新宿の青く黄色い夜景に反射する彼女の顔がとても穢れたもののように感じた。
「どうしたの聖也?顔が引きつってるよ」
「いや、何にもないよ」
その日のデートは二人で食事をしただけで終わったが、僕は寝る前にもう一度彼女と遊園地で一緒に取った写真をとり出した。
そこには観覧車の前で黒いTシャツを着た無愛想で醜い僕と白いワンピースで笑顔でほほ笑む亜里抄がいた。僕は自然と下半身に手をやった。背徳感とそれを上回る快感が波打つ。僕は果てた。
写真の彼女の顔が白くなっている。これで、僕は彼女を征服したような気持ちになったのだ。だが、それは想像上での出来事であり、現実には何も起こっていない。快感を得た僕の後にあったのは自己嫌悪しかなかった。亜里抄の横にいる写真の僕が憎い。僕は何をやってるんだ。
僕はその写真を破って燃やした。
彼女を僕の中の永遠にするにはどうすればいいんだ?
彼女がこれ以上他の男に汚されないようにするには?
僕は思った。彼女に今の気持ちをハッキリさせなければ。彼女が逃げていってしまう。僕は彼女の中で穢れを知らない絶対者にならなければならないのだ。




