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魔王編.3

<4幕>


僕が引き取られたこの孤児院は小さな施設で、僕を含め4人しかいない。

まずは孤児院を管理している老人「ゲーテ」、7歳になる少女「アストレア」、同じく7歳の少年は「アストラ」

アストレアとアストラは双子の姉弟で先の魔物との争いの中で両親を失ったそうだ。



「ねぇねぇ、君名前はなんていうの?」

「ねぇねぇ、君どこから来たの?」

「ねぇねぇ、どうしてここに来たの?」


アストレアの性格は明るく好奇心の塊だった。常に質問を投げかけられる。

おかげで言語の習得にはとても役立った。



「そろそろそこらへんでやめてあげなよ。ねえちゃん、、、」

「そろそろ謝っておいた方が良いよ。ねえちゃん、、、」


アストラの性格は大人しく木陰で本を読みながら暴走しかけた姉を止める。

本の虫の彼のおかげで僕は人間世界についての知識を多く学ぶことができた。


孤児院での生活は貧しいものだった。

日の出ている間は庭の畑でゲーテの手伝いをしながら野菜を育てる。

夕方以降は各々自由な時間を過ごす。

僕は夕方になれと毎日アストレアから逃げるように書物庫に行き本を読み漁る。

時折、理解に苦しむ場合はアストラの力を借りた。

アストラは姉のそばに常にいるため、しばしばアストレアに捕まることもあった。


そんな日々が続き半年が経つ頃には人間の言語をある程度まで話せるようになっていた。

もちろん会話がスムーズになった僕をアストレアはより質問で攻めてくる。

彼女から隠れるように屋内に逃げ込むとゲーテが書斎で新聞を広げて椅子に腰掛けている。


『ゲーテは一体何をしているのだろうか、、、たしか目が見えないはず、、。』


好奇心に駆られてついに聞いてしまった。



「ゲーテ、何を読んでいる。」


「文字だよ。目が見えないはずなのになんで新聞を広げているんだ、とでも思ったんだろう?」



心が見透かされているような感覚に襲われる。ゲーテはこちらを見ることなくじっと紙面を見ている。


「う、うん、、、どうやって読んでいる?」


「簡単だ、、、心の目で読むんだ、、、、ふっはっはっ。なんてなぁ。」


「どいう意味だ?」

戯けているのか本気で言っているのか真偽を確かめるため追求する。


「まあ、そのままの意味だ。お前にはその内わかるかもな、、、。」


「あっ!こんなところにいたっ!!ほーら、こっちきて一緒にお話しましょ!!」

ごまかしながら答えるゲーテを訝しげに見ているとついにアストレアに見つかってしまった。


「ちょ、ちょっと、、、」

気になって仕方のないゲーテの答えに重ねて答えを問おうとする僕の手を

アストレアは無理やり引っ張っていく。

ついぞ彼女の強引さに負けて庭まで連れて行かれてしまった、、、。


「さあて、今日こそ色々答えてもらうんだからね!」


「な、なあ。ちょっと僕からも聞きたいことがあるんだ。」


「なーに?私の質問に答えてからならいいよ!」


「いや、僕のに答えてくれたらなんでも質問に答えるよ。どうかな、、、?」


「もー、仕方ないなぁ。それで何が聞きたいの?」


ーーーー


無邪気に受け答えをしてくれる彼女は清々しいほどになんでも答えてくれる。

アストレアの話によるとゲーテという老人はかつて有名な戦士だったらしい。

その昔存在していた女神に仕えていたらしく、ある時期を境に視力を失いこの村に住むようになったという。

彼は目が見えないはずなのに常人以上に物事がよく見えていることから村の住人からは少し不気味がられている。

そして彼はこの村に来てすぐに孤児院を設けたということを最後にそれ以上は特に知らないようだった。


僕には少し気になる部分があった。

かつての女神、、、それはあの勇者に付いていた女神のことか?

あの老人の過去を知ることは、どうも不思議なほどに必要なことに感じられたのだ。

僕は村人からも話を聞くため、時折町に出かけては情報を集めていった。

それから10年が経過した、僕は16の歳を迎えた。

双子も共に大きくなり今では孤児院に住む人数は8人にまで増えている。

だが変わらないものがあった、ゲーテも確かに歳をとっているはずなのに見た目や能力は全く変化がない、

まるで年齢が変わらないようだった。


僕はいよいよ確信を持つことができた。


『ゲーテは女神の恩恵を受けている。その女神があの女神と同じかわからないが

 恩恵を受けているのは間違いない。』


その確信に至ったところを察しているかのようにゲーテから書斎に来るように声がかけらる。

「クロム、ちょっと来てくれ、、、お前に伝えたいことがある。」


この日を境として僕は、運命の歯車の一部として役割を全うすることとなる。


<4幕終>


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