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13 ユニークスキル生活魔法

 魔王様の部屋は、エントランスの中央から伸びる廊下を進んだ奥にある。


 同じ3階の奥。

 昨日、レイ君がオススメしていたのも、3階の奥だ。

 まさか、と思わず呆れ気味になってしまった顔でレイ君を見ると、ニコッと笑顔を返された。

 レイ君の中で、私が魔王様を赤面させる玩具として定着している気がせんでもないが、私の与えられた部屋も三階の奥なのだから何も言うまい。


 沈黙を貫きながら向かった先。廊下の奥、黒い金属で作られた重厚な扉の先が魔王様の部屋。

 そんな重そうな扉をレイ君が易々と開けると、その奥には50畳以上はありそうな広い一室が広がっている。


 その部屋で一番に目に入って来るのは天面まで金属で作られた黒い長テーブル。

 それが部屋の中央に鎮座していて、上座と下座の2席だけしか椅子がないからか、壁には明るい窓が並んでいるのに、この部屋はどこか暗く、寂しく見えた。


 そんな部屋には更に奥へと続く扉があるけれど、入れて貰えるのはこの部屋が限界なんですよ、と私に顔を寄せたレイ君がコソッと呟く。


「レイはもう下がってよいぞ」


 そう言って魔王様は部屋の奥にある上座の席に座るが、レイ君は下座の椅子を引いて私を座らせ、自分はその横にピタリと立った。


「レイも居ます!ユリエ様には昨日許可を頂きましたので!」

「む。よいのかユリエ。レイが我儘を言ったのではないか?」

「あ、いえ、大丈夫です。私は無知なので、相談出来る相手は多い方がいいなって」


 ユリエがそれでよいのなら、とちょっと渋々と言った感じで魔王様は懐から何かを取り出した。

 それは私の見慣れた物。


「スマホ?」

「ユリエはこの魔道具を知っているのか?」

「魔道具? あ、いえ…前の世界で似た物を使っていたので、そうなのかと思って」

「ああ、これは勇者が残した物だからな。詳しくステータスを表示出来るらしいので、同じ異世界人ならば使えるのではないかと借りて来た。やはりユリエも知っている物か」


 そう魔王様は頷いて、黒いスマホをふわりと浮かせて私の元に届けてくれたそれを手に取ると、久々に触ったような懐かしい感覚を覚えるけれど、スマホでステータス見れるって、異世界仕様のスマホは進化が凄いな。


「けど、前の世界でステータスをスマホで見れたりはしなかったので…その、どう使うか分からないのですが…」

「ん?そうなのか?」


 そんな異世界仕様のスマホさんは、試しに電源やホームボタンを押してみても長押ししても、画面は黒いままで何の反応もない。


「ええっと、それは、丸い部分に魔力を流すのだ、その、下の…丸い…」


 4メートルはある長いデーブルの端から、魔王様が手ぶり素振りで操作を教えてくれている。きっと伝えたいのはホームボタンの事だろうけど、その前にもっと分からない事がある。


「魔力って、どうやって流すんですか?」

「ん?…ああ、ええと、こう…魔力をスッと出す感じで……」


 ああ、天才肌の説明か。と困った顔になった私に、横で黙っていたレイ君が溜息を吐いて口を開く。


「魔王様、全然分かりません!」


 代弁、ありがとう。


「そもそもユリエ様は魔法のない世界からやって来られたんですから、もっと分かり易くお願いします!」

「う、うむ。すまない…」


 そう注意された魔王様がどう言ったものかと考えた後、こちらを向いてしっかりとした説明をくれた。


「魔力は、魔力回路を通して血と同じように体を廻っている。体内にある魔力回路を巡る、血液とは違う流れを感じ、それを制御するよう体表に出すのだ。出し過ぎてはいけない、血と同じだと思えばよい」

「血液…」


 魔王様の説明に目を閉じて体内を意識してみると、確かに何かサラサラフワフワした物がゆっくり体を廻っている。

 弾力があるような、ないような、形があるような、ないような。体の形をなぞりながら全身を流れるそれが魔力なんだと認識すると、その形の中から手に持つスマホに向けてそろっとフワフワした魔力が流れた。


 その感覚に閉じていた目を開くと、手に持ったスマホの画面には明かりが点いていて、白い画面の中には小さなアイコンが並んでいる。


「うむ、ユリエは呑み込みが早いな」

「ユリエ様の魔力は澄んでいますから、反応がとても早いですね!」


 2人を待たせる事にならなくて良かったと胸をなで下ろし、改めてスマホの画面を見ると、【鑑定】【通話】【メモ】と3つのアイコンが並んでいる。


「3つ絵柄があるのが見えるか?」

「はい。鑑定と、通話とメモがあります」

「うむ、やはり読めるのだな」


 ああ、確かに。表示は日本語だし、こっちの世界の人には読めないのか。


「[鑑定]は知りたい内容を表示し、[通話]はどうやら勇者がこちらの言葉を理解するのに必要だったらしい。そして[メモ]は文字を残しておけるようなのだが、私達には読めない言語だったので内容は分からん」

「なるほど」

「その、メモの事なのだが……後日でよいので、ユリエに時間がある時にでもその内容をプリシラに教えてやってはくれないか?」

「ええと、はい。大丈夫だと思いますけど、プリシラ…さん?」

「ああ、勇者の嫁だった者だ。そのすまほ?もプリシラから借りたのだ。きっと読めたら喜ぶと思うので」

「分かりました」


 そう少し笑った魔王様の優しさに私もつられて笑顔になる。

 その優しさ、尊い。


「あの、ユリエ様のステータスを見るのでは?」

「あ、うむ、そうだった。ユリエ、その[鑑定]に触れてみてくれ」

「はい」


 ほんわか笑いあってた所を一番しっかりしている子供に注意される大人。すいません。


 そう心の中で謝罪しながら、改めて画面にある【鑑定】のアイコンを押すと、スマホの画面には私のステータスが表示された。


【名前】綾取友里恵

【種族】半人

【年齢】50

【ランク】F

【適正魔法】

【スキル】

【ユニークスキル】生活魔法


 あ、年齢、そのままなんだな。

 まだ若返った事には慣れていないけれど、事実若返った体と変わらない年齢を見て、自分がこの世界に変換されたのだと、もう前の世界の住人ではないのだと表示された気がして何とも言えない気持になる。


「ユリエ? ステータスは見えたか?」

「あ、はい。表示されました」


 黙ってスマホを眺めていた私に魔王様から心配そうな声が掛かって、「大丈夫です」と笑って見せると魔王様は安心した笑顔を返してくれる。


「ではユリエのユニークスキルはどうなっている?」

「見てみますね……え…んん?!」


 リンク先でもあるように、文字色の変わっていた【生活魔法】の文字を押した瞬間、スマホの画面には怒涛の情報が表示された。


【ユニークスキル】生活魔法

 語学 文字・言語を理解できる

 算術 計算・暗算ができる

 清掃 個別・範囲でキレイにする

 整理 乱れた状態を整える・不要な物を取り除く

 料理 疲労回復・気力回復・健康促進・健康維持

 洗濯 水中の素材を最高の状態に整える

 貯金 金を貯める事ができる

 製造 作った物に願った効果が発揮される

 修復 壊れた物を直す

 運転 乗り物を操作できる

 速読 早く読める


 え? 待って?

 も、もしかして、生活魔法って


 私が向こうの世界で生活してた事が魔法になってるの!?






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