7️⃣6️⃣ 優しく抱きしめた
雪の唇はとても柔らかくて気持ち良い。
「えへへ、でもさ、私達は姉弟なわけだから結婚は出来ないね」
ある日、一輝は雪とは血の繋がりが無いという秘密を知ってしまったけど、雪は未だ其の事実を知らない……はずである。
嫌、俺はてっきり雪は知らないものだと思いながら、一つ屋根の下一緒に生活していたのだ。
一輝と雪は向かい合ったまま、じっとお互いの目を見つめ合った。
「あのさ……」
「ん!? なあに?」
「その、雪は自分の出生について何か知らないのか?」
「……うん、少し知ってる……かな」
どうやら知っているらしい、雪が聞き取れる程度の小さな声で話した。
一輝が雪を抱きしめながら、耳元で優しく話す……。
「実はこの間、夜遅くに、リビングから父さんと電話で会話してる母さんの声が聞こえてきて……つい気になって内容をこっそり聞いちゃったんだよ! だから俺も知っているんだ」
「……!?」
一輝の腕から離れた雪は、驚きと、少し納得したような表情をした後……静かに笑った。
「なーんだ! 一輝も知ってたんだね。えへへ」
「うん、最近だけどな! 話を聞いた時、凄く驚いたんだ。雪はさ、何時から自分の事知ってるんだよ?」
「其れはね、雪が女の子になる三年程前の丁度今頃になるかな……」
「中一の時かよ! 俺より大分先に知ってたんだね」
雪がその頃、トイレに行きたくて夜中に目覚めた時、リビングから物音が聞こえたのでとても気になり、そーっとて行ってみると、ドア近付から母さんと父さんの話し声が聞こえてきてしまい、不覚にも聞いてしまったらしい。
「あの日の事は良く覚えてるよ。トイレには一時間後に行ったんだけど、気付かれないかハラハラしたんだもん。心臓がバクバクしてさ、あんまり良く寝れなかった記憶があるらからね」
「そうだったんだ。それなら、そん時に俺にも教えてくれたら良かったのに……」
(──あん時は言える訳ないじゃん──)
言える訳が無い──。
家族仲は他の何処の家庭より、とっても仲良しだと思っている。何時も皆で食卓を囲んで笑ってる家族だから、今だってこの家族の関係……絆を凄く大切に思っている。
だからあの時は、その事を一輝が知ることで、仲良しだった家族間に、変な空気が生じて壊れちゃうんじゃないかって思った。仲良し家族のままでいたいけど、私だけが仲間はずれになりそうで……凄く怖かった。
其れから、気づいたら私が女の子になっちゃって、何故か他のみんなは私が元々女の子だった扱いになってて驚いたけど、家族仲は壊したくないから……結局、その事は話さないって決めた。
ママやパパからもその事に対して何にも話はしてこないし、まして、私が一輝を好きになっちゃってたから……。
「私は一輝が知らない内容だと思っていたの。だから、好きになっちゃう事も可笑しなことだと思って言えなかったの」
泣きながら雪が話しをするので、一輝はもう一度、今度は雪の震える身体を優しく包むように抱きしめた。
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