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お姉様と妹1


「ふっ、ふっ、ふっ」


林の中、妖精の遊び場、などと言われる木や草がない開けた場所で一人の少女が剣を振るっていた。

その振りはそこそこ鋭い。

とはいってもそこそこ程度でしかない。同年代では上位に入るであろうが、その程度。

大人と比べられるほどではない。


まあ、それも当然である。

まずもって体格や筋肉がが違いすぎる。

この世界にはそれを覆すようなレベルなどといったシステムはないのだから。

ちなみに少女に師や教師というものはいない。

過去に騎士団から連れてきた指南役を首にしてから独学で剣をふるっている。

そもそも少女が剣をやっていることを両親は賛成していない。

今でこそ反対はされていないが、剣をはじめる前は断固として反対されていた。


「ふっ、はぁ、はぁ。」


少女の息が荒くなってくる。

鍛えているとはいえ、やはり体力的にはそう多くはない。

今でこそあまり体力や筋肉に差こそないものの、将来的にはどうしても差が出てくることを少女は知っている(・・・・・)

また、幼いうちに体に無理をさせるのもいけないと知っている(・・・・・)ため、少女はほどほどで剣を振るのをやめた。


「ティア、そこにいるんだろう?出ておいで。」


少女が虚空につぶやく。

別に少女が鍛錬で疲れすぎて幻が見えているわけではない。

その証拠に茂みからぴょこん、と不機嫌そうでいて嬉しそうな小さい女の子が出てきた。


「もー、お姉さまはなんで私が隠れているってわかるの?

 ちゃんと草を揺らさないようにしてたし、地味な色の服も着てきたのに。」


この小さい女の子のお姉さま、という表現は年上の女性、という意味ではなく血縁的な意味での姉である。

まあ、いわゆる腹違い、というものなのだが。


「はは、ティアは練習しているといつも来るからね。なんとなく分かるようになったんだ。」


そういいながら少女は妹のふわふわの金髪をなでる。

なでられたティアはなでられてうれしいし、見つけてくれてうれしいけど、隠れて見に来たはずなのにあっさり見つかってちょっと複雑だった。女心は難しいのだ。

まあ、なでなでで喜んでくれるので基本ちょろいが。よく言えばそれだけお姉さまのことを好きなのだ。

ちなみに妹の髪が金色なのに対して少女の髪色は黒色だ。

両方とも母のほうに似たらしく髪の色が全く違う。


「お姉さま。はいどうぞ。」

「いつもありがとう。」


ティアはその大好きなお姉さまに家からもって来た水筒を渡す。

ちなみにその中身はただの水ではなく、メイドが作ったほのかに果物の風味がするものである。

ちなみに少女はただの水を鍛錬後に飲むのも好むため、どちらかが入っているかは用意するメイドの気まぐれである。

なお、用意したものを味見・・することは黙認されているため、甘党なメイドが用意する時は果物風味の物が多かったりする。


「んぐ、んぐ、んぐ、」


激しい運動の後に一気に水分をとると体に悪いと少女は聞いたことがあった気もするが、気にせず一気飲みする。

水筒の口の端からこぼれた水が少女の顎を伝い流れ落ちていく。

それを何とはなしに眺めていたティアがぽつり、と


「お姉ちゃんってなんかエロいよね。」

「ん、ぶはっ。ごほっ、ごほっ。い、いきなり何言いだすの!」


いきなり年端もいかない妹からのエロい宣言。さすがに噴き出すしかなかった。


「あのねー」

「あっ、そうだった。お父様が呼んでたよ?早くいかないとお冠になるよ?」


・・・意外と小悪魔なのかもしれない。

お父様に呼ばれたとあっては妹の突然の宣言に物申している暇ではない。

だから少女は急いで家に向かうしかなかったのだ。

ちなみに、この林、実は少女のうちの所有物なのでここも家の庭、といえばそうなのだ。

なお、お父様がいる本館までは微妙に距離があったりする。


「ん?ティアって走ってきたりしてないよね?」

「うん、歩いてきたよ。お姉さまに渡す水筒を落としてはいけないし。」


さー、っと少女の顔色が悪くなった。

お分かりだろうか?微妙に距離がある本館、小さい女の子であるティアの歩行速度、寄り道していないとも言い切れない。


少女は走り出した。

剣の鍛錬の後で体が疲れていることも忘れて。

忘れていたから剣の重みで足がもつれた。こけた。


「くぎゅっ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


沈黙が流れた。

少女は地面に倒れたまま決してティアの方を見ようとしない。

ティアはどう対応したものか斜め上のほうを見ながら悩んでいる。

二人の間をしろいちょうちょが飛んでいった。


「お姉さま、かわいい。」


ティアは悩んだ結果誉めた。

少女は赤面して動かない。

二人の間をカエルがぴょんぴょんはねていった。


少女は剣を放って駆けだした。


「あっ、お姉さま!」


ティアは駆けだした姉を追って走り出そうとした。

しかし、姉が放り出した剣が目に入って止まった。

姉の走っていったほうを見る。剣のほうを見る。

ティアの頭に二つの光景が浮かんだ。

剣を持っていってお父様に会った後の姉に頭を撫でられる光景。

剣を無視して姉を追いかけたけど追いつけず、そして剣も持って行ってないため別に怒られもしないが、誉められもしない光景。


ティアは剣を持っていくことにした。

一応少女の体格に合わせて作っているため、もてないほどではない。

最初は大人の剣の重さになれるために大人の物を使おうとしたが、今は解雇した騎士団の人物で指南役の人が変な癖がつきかねないから自分に合ったものを使ったほうがいいといったためにこの時、ティアは何とか剣を持てたのだった。



もしもあの時、妹ちゃんのなんかエロい宣言に対してちゃんと訂正していればあんなことには・・・・・・などということはないだろうから安心して続きを読むよろし

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