朱(あか)い荒野-3
目を覚ますと、見慣れた自分の部屋の天井が見えた・・・などということはなく、見慣れない天井がそこにあった
少しの倦怠感に抗うように上体を起こすと布団の音が聞こえたようで、こちらに向かってくる足音が聞こえた
「おう、目が開いたか」
見えた顔はやはりテリーのものであった
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「すまんな
手っ取り早く教えようと思ったはいいが、体外から魔力を取り込むときに量を調整しなきゃならない事を教え忘れていた」
水と粥を持ってきたテリーが開口一番に放ったのがこれである
自分のものとは異質の魔力に晒され、その後取り込むのに成功したまでは良かったが、制御に慣れていない大量の魔力が体内を循環した為に暴走寸前だったらしい
寸でのところで魔法として体外に排出することは出来たが、膨大な量の力を扱うことになった体のほうがダメージを受け、倦怠感と疲労が抜けきるまでは絶対安静なのだという
そこで、ふと疑問に思ったことを訊いてみた
「そういえば、外はあれだけ濃い魔力が漂っていたのに、どうして室内には殆どないんですか?」
「簡単なことよ、建物自体に簡単な結界の機能を持たせている上に、室内に入り込んだ残りの魔力は俺が取り込んでるからな
他にも、部屋によっては小さい観葉植物を置いているが、その殆どは魔力を取り込んで成長する特殊な植物だ
所謂魔草と呼ばれているものだが、魔物の放出した魔力に比べれば幾分かは人間にも取り込みやすい性質に変えるらしく、葉から抽出したエキスは魔力回復薬として取引されている」
それだけ話をしてから、テリーに差し出された粥を口にした
空腹感がなかったのと倦怠感からあまり食べ物を受けつかないかと思っていたが、思いのほか体は栄養を欲していたらしく、器に入っていた分はあっという間に無くなっていた
何度もおかわりすることを想定してか、鍋ごと持ってきたそれの量が半分以下になるのにさほど時間は必要なかったらしい
「さて、ある程度腹も満たせただろうし、どうせ魔力を扱う練習も魔法も使えないんだ
この前の特殊能力の話の続きでもしようか」
「この前・・・僕はどのくらい眠っていたんですか?」
「三日だ、体内で魔力が暴走しかけていた割には短いほうだから安心しな
それで、話の続きだが・・・」
テリーの話の中身はこうである
まず、レアリティランクの1と2はほぼ単属性の魔法補助系で、ローリスクローリターンを地で行くようなスキルばかり、発現比率も高いのがこの2段階だという
火属性サポートの繰火・繰炎、水属性の繰水・集水、風属性の繰風・微風、地属性の繰砂・繰岩が該当し、繰火・繰水・繰風・繰砂は補助比率は低いが、発現比率は最も高く、それに次ぐのが繰炎・集水・微風・繰岩だという
ランクが3になると途端に数が減り、四大元素系は暴炎、洪水、強風、砕岩に加え、四大元素系全てに少し補正の掛かる全属補正が加わるという
特異系もここから増え始め、生物の時間の感覚をずらす事が出来る感覚操作、魔法ではなく物理面で補正の掛かる鋼の拳、テリーの持つ観察眼など、種類こそ少ないがリスクも無視できる範囲に収まるのが特徴である
拓真の持つ条件不死も特異系の能力だが、ランクで言えば4『相当』なのだとか
ランク4ともなると発揮できる能力は高くなるが、リスクも無視できないものになる
四大元素系の究極系である業炎・激流・暴嵐・星砕は暴炎・洪水・強風・砕岩をより極端にしたようなものであり、補助対象の魔法に必要な魔力は大きく減少するが逆にそれ以外の魔法行使に必要な魔力が極端に多くなるという代償を持つ
また、全属補正ほどの使用魔力減少はないが四大元素系もそれ以外も関係なく補正のかかる天の加護、感覚ではなく時間そのものを操ることの出来る時間操作、物理的な『不可能』が存在しなくなるといわれている境界認識、長い詠唱を必要とする上に使用時間に応じて自力では動けなくなる代わりに使用可能魔力・魔法制御能力・身体能力が大きく跳ね上がる暴走などが現在把握できているものらしい
ランクごとの発現比率を数値にするとランク1が60%、2が35%、3が4.8%、4は0.2%程らしい
ランク全体の発現比率がこの数値なので当然各能力ごととなるとかなり低くなるのだそうだ
更に、特殊能力そのものは『人族としては』強力な魔法能力を持った者が特定の術で魔族化すると消滅するが、そもそもその術自体が禁忌の秘術とされている為に一般的には失伝されているという
「そうそう、魔族化の話をしたついでに魔族についても少し話をしておくか
俺達人族以上の魔法能力を持ったヒト型の生物ってのは話したから・・・」
魔族の括りについてはこうである
元々は知能に関係なく、魔法能力の低い順に下級魔族・中級魔族・上級魔族と分けられていたが、後に一部の魔族が知能も含めるべきだと主張した結果、知能と魔法能力の両面で判断されるようになり、ランクも下級・中級・上級・特級となったらしい
下級魔族は基本的に魔法使い族(人族が魔族化した種族)のような、知能はそれなりにあるが魔法能力の低い者が該当する
中級は小妖精族であるドワーフやゴブリン、ハーフエルフ、小人の他、猪人族など
上級はエルフを含む妖精族と獣人族の殆どが該当する他、悪魔族、鬼族の内比較的非力な小鬼族が
特級には分類の再定義の発端となった吸血族の他、精霊族の中でも特に突出している四大種族の炎精・水精・風精・地精、上級個体のエルフよりも更に高い能力を持つハイエルフ、鬼人族が該当すると覚えても問題がないそうだ
「この世界で生きていくための大雑把な知識はこれくらいか
後は魔法がまた使えるようになったときにでも改めて教えるが、射出系の魔法に組み込むものに『圧縮』ってのがある
要は魔法術式で組み立てた魔法を小さく纏めることで有効距離を伸ばす方法だな
たとえば火炎球をそのまま打ち出しても良いんだが・・・」
テリーが指を向けたその先にはいつの間にか標的用の鎧が立てられており、その指先から放たれた橙に輝く火の玉は命中すると同時に鎧の表面を少し焦がした
「圧縮することで威力も有効距離も伸ばすことが出来る」
再び指先に火の玉が出現するが、金属板同士が擦れ合うような甲高い音と共にその橙の球は小さくなり、色も白みを増したものとなった
僅かな時間の後、鋭い飛翔音を伴って放たれた白い球は鎧の装甲を穿つように小規模な爆発を起こした
「本来なら術の構築に圧縮も組み込むからここまで分かりやすい変化を目にすることはないが、教えるならこの方が分かりやすいだろう?」
説明回




