十字路には魔が潜む-1
もう木枯らしも吹こうかという秋も深まるとある日の朝、彼ーーー八月一日拓真はいつものように通学のため、自宅近くのバス停に向かって歩いていた
拓真は苗字以外は特に変わったところのない、高校二年生である
容姿は良くも悪くも普通で、成績は学年平均程度か少し上、特にモテる訳でもなく、そろそろ決めなければならない進路について悩みつつも普段どおりの生活を送っていた
そんな彼がいつものように信号のない、小さな交差点に差し掛かったとき、僅かな違和感を感じて足を止めた
「あれ、急に静かになった・・・?」
先ほどまで風に吹かれてざわめいていた木々も、いつもなら聞こえている小鳥の囀りも
・・・自分から出る音以外、何も聞こえないのだ
もし、すべての音が聞こえないのなら難聴を疑っただろう
しかし彼は両親から『耳は大事にするように』と口酸っぱく言われ続けてきたため、音楽を聴くときにはあまり大きな音を出さないように気をつけていたのだ
それに、ヘッドフォン以外が原因の突発性難聴でも、『周囲の音だけが聞こえない』状況がおかしなことには彼も気がついていたのだ
しかし、僅かな時間の後、彼はその原因を知ることになる
今まで何の変化もなかった風景、それが急に歪みだし、浮遊感にも似た妙な感覚の中で目を閉じ・・・次に目を開けた時には見覚えのない風景に変化していた
先ほどまで外にいたはずの彼がいたのは、大きなレンガのような形の石を積み上げて作られた広い部屋の中
窓はなく、壁のやや高い位置にほぼ等間隔で燃えている炎がその異様な部屋を薄暗く照らしていた
混乱しながらも状況の把握に努めようと周りを見回していた彼は、正面の奥、その周囲よりも少し高くなっている場所の椅子のような場所に誰かが腰掛けていることに気がついた
拓真がその人物の容姿を把握し、声をかけようとする前に向こうの方から声を掛けてきた
『人間よ、我と戯れよ』
拓真自身も感じたことのない威圧感と共にその言葉を放ったのは、雄山羊のような角を即頭部から生やしたヒト型の生物であった
彼は酷く混乱していた
突然見知らぬ場所に来たことでも、頭に角の生えた人間を見た事でも、ましてやその生物が意味の分からない事を言ったことに対してでもない
『どうした?まだ理解できておらぬか』
その言葉を発したものが、酷く幼く見えたからであった
東方二次小説の大幅な書き直しのための練り直しの設定を考えていたら別の考えと謎の融合を果たして出来た話、果たして作者は忘れることも飽きることもなく続けられるのか?
主人公・八月一日拓真について
苗字を除けば作中の記述通り、目立ったところは何もない高校生
身長は170cm代前半の痩せ型、特に筋肉質ということもなく、容姿にも特に目立ったところはない
誕生日は8月29日(現在17歳であると考えて執筆開始時から17年前の2000年8月29日が丁度旧暦の8月1日)
家族構成は両親と彼に弟が二人で、両親の小さくも大きくもない持ち家暮らし
今のところ作中に書く気がない設定はこの程度です