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【序章】―出会い―

どうも、NOマルと申します。


この度、オリジナル小説を投稿させていただきました。だいぶ前に投稿した物を設定から考え直して書き上げました。


文章や設定の部分で理解に苦しむ場面もあるかもしれませんが、どうか読んで下さったらと思います。

――――

少年は一人、途方もなく歩いていた。


「――――ここ、どこ……?」


周りを見渡す。見たこともない景色。

まだ十にも満たない男の子は、トボトボと地面の上を歩く。

風に揺られ、周りの草木がギシギシと鳴り出す。太陽は隠れだし、時は夕方になり始めている。

親も連れず、ただ一人森の中を歩いている少年。


「誰か……いないの……?」


表情は崩れだし、不安と恐怖心からか、体を抱き合う様に、踞る。

いつ崩壊してもおかしくない。そんな状況だった。おそるおそる歩いていると、踏み出した足が空を切る。


「うわぁっ!!」


バランスを崩してしまい、片足だけでなく、体全体が下へと持っていかれてしまった。そのまま流れる様に、下へ下へと落下していく。

ゴロゴロと転落し、砂煙を出しながらようやく停止した。


「うっ、うう……!」


白のシャツに半ズボンが泥で汚れ、肌は擦り傷が出来てしまった。

石などにぶつかり、体の節々がズキズキと痛みだす。


どうやら穴に落ちてしまったらしい。

視界が遮られた、暗闇の世界。唯一の明かりは、自分が落ちた場所であろう、頭上の穴だ。高さは約三メートルはあるだろう。しかも、傾斜がかなり厳しい。まだ幼い男の子が登るには酷だ。


自分は何故、こんな場所にいるのだろうか?何故、独りなのか?何故、名前以外、何も分からないのだろうか?


分からない。わからない。ワカラナイ。


「ぅぅ……ぅぁ……!」


溜まりに溜まった感情が爆発し、嗚咽の後、少年は泣き出した。


少年の叫びが洞窟内に響き渡る。泣き止む様子はなく、更に泣き声が強くなっていく。




そんな時だった。




「――――誰だ?」




低い声が耳に入り、思わず泣き止む少年。涙はすっかり引っ込んでしまった。


今の声は一体?


誰かいるのだろうか?


何も見えない為、恐怖心が勝っている。身を抱き、ガタガタと震え出す。


「……誰か、いるのか?」

「……だ、だれ?」

「………いるんだな。声からして、ガキか?」


徐々に目が慣れていき、少年は声がする方向に顔を向ける。

意外と広い空間の中、前を見ると、そこには人の姿はなかった。代わりに、“ある物”が目に写る。


一言だけ言おう――――“ボール”だ。


だが、普通のボールではなかった。


“紅”、“蒼”、“翠”、“黄”、“紫”、“灰”。

色鮮やかな配色が施されており、見た目は虹色に彩られたボールそのもの。

それに加え、一切の濁りがない、純白の鎖が何重にも括り付けられており、厳重に拘束されているのがわかる。

そんな得体の知れない球体が、地面より少し浮遊していた。


「こんな所にガキ一人か。一体何しに来たんだ?」

「…………」

「何年振りだろうな、こうして喋るのは……」

「う、うぁ……」

「ん?おい、坊主?」

「うああああああああああ!!!」


急に大号泣の涙を流す少年。謎の球体も何がなんだか分からずに動揺し出す。


「ちょ、ちょちょちょちょちょっと待て!おい!いきなりどうした!?」

「怖いよぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「はあ!?……まさか、俺ぇ!?」

「ボールが喋りだしたよ~!お化けだよ~!!食べられちゃうよ~!!」

「ボールでもお化けでもねぇ!それと取って食いやしねぇから、泣き止めってもう!!」


虹色のボール?は、必死に少年をあやす。繰り返す事、十分経過。

嗚咽が小さくなっていき、少年はようやく泣き止んだ。手の甲で涙を拭いながら、鼻を啜る。


「あ~……やっと泣き止んだか」

「ボール……お化け、じゃないの?」

「さっきから言ってんだろ?分かったらもう泣くな。余計めんどくさくなる」

「ご、ごめんなさい……」

「まあ、とりあえずどっか座れよ。立ちっぱなしもなんだしな」

「う、うん……」


座る様に促され、少年は球体の横に移動し、壁に腰かける。

まだ警戒心は解けていないが、明かりがある方が安心する。それと同時に、色彩豊かなボールに目を奪われていた。

とても綺麗な光を放っていたからだ。見る者をすべて心地好く癒していく。そんな感覚だ。


「で、だ。坊主、何でこんな所に来たんだ?」

「……落ちちゃった」

「落ちた?……なるほど、俺と同じだな」

「えっ?」

「俺も、気がついた時には、ここに落ちて…………ずっとこのままだ」


その声音は低く、哀愁が漂っていた。


「だがまあ、直に親が助けに来てくれるだろう。それまで待てば―――」

「……いない」

「なんだって?」

「お父さんも……お母さんも……いない」


ボールは、失言だったか、と内心愚痴るが、もう遅い。塞き止めていた物が溢れ出す様に、少年の頬から何粒もの雫が溢れ落ちる。


「気がついたら、森の中にいて……何も、分からなくて……!」


膝を抱え、顔を埋める。その体は小刻みに震え、またも嗚咽が聞こえ始める。


すると、体に温もりが優しく伝わってきた。


横を見ると、ボールが寄り添っていた。


「言ったろ。もう泣くな。お前は一人じゃない――――俺がついてる」


唇を噛み締め、必死に涙を堪える。そのまま、もたれる様にボールに抱きつく。

ボールは何も言うことなく、ただただ、少年の悲しみを受け止めた。



それから数分後。



「おいおい……寝ちまったよ」


泣きつかれたのか、少年はボールにもたれたまま、眠りに落ちていた。


寝顔は年相応のものであり、すやすやと穏やかな寝息をたてている。

どかそうにも、起こしてしまう事に抵抗を感じてしまう。諦めて、ため息をつきながらそのままにする。


「……にしても、さっきから何なんだ―――――この“腕輪”は」


ある事が気になっていた。


そう、少年の右手首にはめられている、白色の腕輪。目立つ装飾などはなく、代わりに六つの窪みが彫られていた。


見た目はどこにでもある様な飾り物の腕輪だ。だが、どこか違和感を感じる。


そのまま、腕輪を凝視する――――



「――――ッ!?」



突如、体の中を電撃が迸ったかの様な衝撃に襲われる。思わず声を上げてしまった。


それだけではない。


視界―――いや、脳裏に“あるもの”が焼き付いて離れない。



「あれは――――龍……?」



全身が光に包まれており、全貌は確かめる事は出来なかった。


だが、見上げる程に巨大な体躯。左右に広げられた両翼。研ぎ澄まされた鋭利な手足の爪。全てを食らい尽くす為の牙。

心の中を全てを見透かしてしまうのではないかと思わせる、澄んだ水色の瞳。


その純白に輝いた龍が、逆光を浴びながら、映像として頭に残っている。


「あれは……一体?」


一人、混乱に陥る中、少年は未だに夢の中に旅立ったままだった。






この少年と“モノ”との出会いが、全ての運命の始まりとなった――――



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