1:結転承起
真勇者に覚醒したハーレントは遂に終幕の魔王に一撃を加える。
「グッポア!! バカな! 我は闇と光の力を持つもの……混沌の神となったはず……! なぜ我に貴様が触れられる! なぜ我が血を吐く……! この我に血など不要……なのに何故! 」
終幕の魔王は血を吐きながらも忌々しい顔をする。ハーレントの一撃を受けたこと、そしてその一撃で自らが血を流した事、その全てが終幕の魔王のもはや顔とは呼べなくなた顔を歪ませる。
「たしかに、あんたが人を……心を……世界を……そして血を憎む気持ちはわかる……でもな、それがなきゃ何の意味もねえ! たしかに人は良いところばかりじゃねぇ、たしかに人は幸せだけを感じて生きることはできない! でもな人はただ立ち止まるだけじゃねぇ……! うつむくだけじゃねぇ……! 人はあんたが思っているほど悪くも弱くもねぇんだよ」
ハーレントは今までの出会いと別れの軌跡を振り返る。その一つ一つに心振るわせる。この心のビートを失うわけには行かない! そのためにハーレントは全力で戦う!
「これで終わりだ! 終幕の魔王……いや、フォーレント」
ハーレントは自らが持つ剣に、今まで苦楽を共にした相棒に力と想いをこめる。
「その名で……その名で……! 我を呼ぶなァァァァ!!! 」
フォーレントは両の手に絶対の光と究極の闇をこめる。
混迷の理。今ならば理を越えた理を打ち破ることができる! ハーレントは根拠は無いが、迷いもなくそう思う。
そしてその双方が世界を揺るがす力と力をぶつけ合った。
しかし、僅かに僅かに届かない。フォーレントの力が押し始める。
「フフフ……これが我の力、希望、絆……脆いものよ」
フォーレントに余裕が現れる、がハーレントの顔に絶望はない
「な……なんだこれは……!? 」
ハーレントに何かが集う。
「これが希望……そして絆だ! 」
もはや世界を覆い尽くさんばかりとなった力はフォーレントを優しく包む。
「これが希望……これが絆……」
フォーレントは消えた。
「ようやく終幕の魔王を……! 」
ヒルトは感慨深そうに呟く。
これで……ようやく世界が平和に……。
その瞬間
「危ない! 」
エトルトはハーレント押す。
そしてハーレントは見たエトルトの胸に大きく禍々しく神々しい槍が痛々しく刺さっていることを。
「誰だ! 」
ハーレントがそう叫ぶと
「フフフフフフフ…………」
何者かが姿を現した。
「貴様……! 」
ハーレントは勢いよく斬りかかるが。手応えがなかった。
「バカな!? 」
ハーレントは目を丸くする。
「フフフ……森羅万象を切り伏せる剣も私を切ることは叶わぬ、私は無で有るがゆえにな……」
そのものは感情の感じない笑い声をあげる。
「ぐ……! 」
俺は何もできないのか! 彼女を殺したあいつに何も……!
ハーレントが己の無力感を呪うがそれで何が変わるわけでもない。
「フフフ……その女の死が悲しいか……」
するとエトルトは胸に刺さっていた槍は消え傷が塞がり、息を吹き返した。
「な……!? 」
その場に者全てが驚く。
「フフフ……人は脆いな」
「貴様……! 」
ハーレントは人の死を弄ぶ奴を睨む。
「さて遊びはこのぐらいにして世界を討たねばな、失敗作に変わってな」
そう言って手を突き出す。
まずい。俺では勝てない……!
ハーレントは目を閉じ覚悟するしか無かった。
ザ……ザザ…………ザ……ザザザザ
そのものは揺らいだ
「今はこれが限界か、ならば2年後また会おう」
そう言い残し消えた。
2年……真の悪を討つための猶予はそれだけであった。