act.3 剣と槍
戦闘シーンあり
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
「星宿、私と決闘しなさい!」
眼前に仁王立ちしている美少女。
ーなんで、こんな事になったのか・・・
事の始まりは十数分前に遡る。
退屈な座学の次は武術の時間だ。
この時間では当然ながら、起きている。
いや、寝たら指導官のシバキがくるしな・・・正直俺的には座学よりも苦手な時間だ。
武術の授業は基本的に何でもありの実践方式だ。
魔法や特殊能力の使用も認められている。
戦闘訓練の授業があるのは、別にこの学園だけが特別なのではない。
卒業しても、命の危機ー魔物から身を守る為だ。
魔物ーそれは世界樹から湧き出る、セカイの虫だ。
魔物は強い順に、SS級、S級、A級、B級、C級、D級、E級と分けられていて、姿形も様々だ。
だが、千差万別な魔物達にも唯一の共通点がある。
-人を殺すという本能だ。
先程は世界樹から湧き出ると言ったが、決して出現場所が世界樹周辺とは限らない。
多くは山や森、草原、海などにも生息している。
そのままでは勿論、生活に支障が出るので討伐して数を減らし、開拓していく。
その際、活躍するのは冒険者であり、彼らは冒険者ギルドに所属している。
だが、極稀に人里に降りてくる魔物がいる。それらは大抵、C級からE級までの魔物の大群や、S級またはA級の単体だ。いかに、雑魚であろうとも数で圧されたら危ういし、高ランクの魔物などは数で圧そうとも質が伴っていなければ一撃で壊滅する。
なので、一般人でもある程度の戦闘訓練をし、避難または戦えるようにしなくてはならない。
そのための武術の時間だ。
とは言っても・・・
「ホントに役に立つのかこれ・・・」
俺としては甚だ疑問な時間でもある。
幾ら魔法や特殊能力もアリだからといって、所詮は対人戦であり、むしろその戦闘パターンに嵌まってしまったら余計に危険だ。
素人に毛が生えたぐらいの戦闘技術では、魔物と戦うべきではない、俺はそう思っている。
「星宿、その言葉本心から言ってるの?」
気がついたら、大林が俺の前に立っていた。
どうやら、俺の先程の独り言を聞いてたようだ。
「ねえ、この私達にとって重要な授業を無駄だとでも思ってるの?」
「いやぁ、そんなつもりで言ったわけではないんだけど・・・」
「じゃあ、どんなつもりなの?」
「だってさ、所詮学生同士のチャンバラだろ」
あ、ヤベ本心出た。
案の定、大林は怒った顔をしている。
「ふーん、あなたは努力している人を馬鹿にして楽しいんだ」
「何でそうなる・・・」
「星宿、私あなたみたいな奴嫌いだって今まで思っていたけど、訂正するわ。大嫌いよ」
別に親しくない奴に嫌いだと思われてもなぁ・・・
それに嫌いなら絡むなよ・・・
俺のぼやきがしっかり聞こえてしまったらしく、大林のこめかみに青筋が立った。
「そこまで、私を馬鹿にするあなたはさぞかしお強いのでしょうね。
なら、私と戦っても問題ないのでしょう。
星宿、私と決闘しなさい!」
-めんどくさいことになったな・・・
あの後、決闘騒ぎを聞きつけた教官はそれに賛成し、他の生徒の訓練を中止させて訓練場の中心で戦闘が行えるように手配した。おそらく、大林の戦う様子を生徒達にお手本とさせるためだろう。
え、お俺?完全に空気ですが何か?
他の生徒達も、優等生対劣等生という構図に興味津々だ。
中には、俺が何秒保つか賭けている奴らもいる。
おい、お前ら締めんぞ、コラ。
そんな訳で、俺は絶賛孤立無援の中、戦わなくてはいけないのだ。
「いーい!開始の合図が出たら始まりだからね!
といっても、あなたはすぐ負けるでしょうけど」
「はいはい」
「ちゃんと聞きなさいよ!」
「話しているのはいいが、そろそろ始まるんじゃないか?」
「・・・」
訓練場の中心、俺と大林は10m程間隔をあけて立っている。
大林の手には槍、片や俺の手には片手剣だ。
まともにやり合ったら、武器の相性で相手にするのは難しい。
そう、まともにやり合ったらの話だ。
教官がコインを上に投げた。下に落ちたら、始めだ。
下に落ちたかも確認せず俺は一気に距離を詰める。
大林はつい、コインを目で追ったらしいー予想通りだ。
しかし迫り来る俺に気付く。と同時に、突きを繰り出す。
ーだが、遅い。
俺は槍を剣で払うーように見せ掛け、上体を深く屈める。
大林は攻撃を避けられたショックで次の攻撃にはいれない。
今まで、避けられた事などなかったんだろう、ご愁傷様だ。
そして、その隙に、そのまま攻撃圏内に入りー
「試合終了!勝者は・・・
雅 大林!」
「ありがとうございました!
俺達は互いに礼をする。
大林は顔を上げ、何かを問いかけるようにこちらを見つめた。
俺はそれを敢えて無視した。
ーああ、いい汗をかいた。
次の授業でも、きっとよく眠れるだろう。
用語解説
魔物 E~A、S、SSとランク付けられている。
他の生き物に対し非常に敵対的。
冒険者 主に魔物を討伐する事で生計を立てている者達のこと。
魔物と同様、ランク付けられている。
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