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奴隷の少女は公爵に拾われる  作者: 笑い顔
奴隷の少女は公爵に拾われる 第3章 お目見え
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奴隷の少女は公爵に拾われる 62

「てめぇ、いきなりお嬢に服脱げだ!?てめぇらいい加減にしろよ――って、お嬢!」

 ツツィーリエは特に抵抗する様子もなく服を脱ぎ始めていた。

「お嬢!せめてどこか別の部屋で脱いでください!」

 ツツィーリエは木綿のシャツを頭から抜いて、目だけで”なぜ?”と問いかける

「そういうところをしっかりするのが慎み深いってやつだからです。お嬢は国守の公爵の娘なんですから!」

 ツツィーリエが脱いだシャツをモヌワに渡す。

『脱がないと先に進まないんなら脱ぐわよ。いいじゃない。涎たらしてこっち見る男がいるわけじゃないんだから。見られて減るもんじゃないし』

「そういうのは減るんです!」

 受け取ったシャツを脇に抱えながらモヌワが叫んだ。

『じゃあ、誰かとお風呂に入ると私は石鹸みたいに小さくなるわけね』

 そのまま下のスカートもまったくよどみなく脱いでモヌワに預ける。

「そういうことじゃないんです」

「でかい図体にでかい声で、けたたましい奴だな。何もやましいことなんかしねぇから黙って見てなよ」

 モヌワはスカートを受け取りながら何かしゃべり出そうと口を開く。が、声が出る前にメジャーを持ったムクラがツツィーリエの前に膝をついた。

「ほら、おちびちゃん。手を横に広げな」

 その言い方にモヌワの顔が怒りに赤く染まるが、ツツィーリエが素直に腕を横に広げてモヌワを見たのでそれ以上何も言えなかった。

「おやじ、今から計測値言うからメモしろ」

「今更確認しなくてもいいんだよ。時間ねぇんだからさっさといいな」

 デックは紙に簡単な表を作って椅子に座って待機していた。足の長い椅子に座ってやっと大きな机を使える高さに体が来る。

「言うぞ。身長が―――」

 メジャーをものすごい速さで動かしながら身長などの大きな長さや二の腕、手の形、足の角度などかなり細かいところまで計測していく。それをデックは一度も反復させることなく一度聞いた計測値を紙に書き込んでいく。

 計測はあっという間に終了して、ムクラはメジャーをしまいながら作業机にいるデックの所にすたすたと歩いていく。モヌワが急いでツツィーリエに服を渡し、ツツィーリエはそれをまたその場で着る。

「ちょっと時間かかるから、そこらへんで適当に座っといてくれや」

 とデックが一声かけるだけで、しばらくムクラとデックはツツィーリエたちの方への意識を遮断したかのように真剣に相談し始めた。

 作業机にいるデックとその脇で計測値を見るムクラが、計測値を見ながらデザインを相談していく。その相談をもとに、デックの節くれだった太い指がペンで以て何枚も候補のデザインを上げていった。

「年の割に背が高くて腰回りが細いから体の線を出すドレスを中心にだな」

「あんまり出し過ぎても問題だろ。今年の流行はレースだ。あんまり細いシンプルな奴だとレースが合わせづらい」

「無理に服につけなくてもいいだろ。小物にワンポイントで」

「あと若い奴があんまり細いのを付けると化粧と一緒に服に着られるぞ」

「そこらへんはここを膨らませて、少し幼い感じを出せば」

「じゃあそこにレースを付けて、色味はここら辺で」

 ムクラが棚から絵具を数種類だして紙の上に混ぜて一瞬で色を作っていく。

「それだとむしろここに膨らみを入れて」

「それだと小物にレースで合わせられんだろ。それに3回前くらいの流行りのファッションに似てる。流行遅れはまずい」

「まだ回帰してないのか、これ」

「あと数回先だろ。それよりもここにリボンつけて」

「ガキがきるべべみてぇだな」

「じゃあどうするんだよ」

「やっぱりここは―――」

 二人が周囲を無視してものすごい枚数の候補のデザインを挙げていく。あっという間に大きな机の上が埋まり、古いデザイン候補から机の下に無造作に積まれていく。

「あ、そういえば公爵の服のデザインってどんなのなんだ。それと組み合わせて考えないと」

「お、忘れてた。候補のデザインはだな…」

 作業机の棚の中から、下書き用などではないしっかりした材質の紙をデックが取り出す。

「これだ。もう色も付けてある」

 ムクラとデックが机の上に広げられたものを数秒見つめる。

「………なんで早くこれださねぇんだよ」

「てめぇが急くからから忘れてたんだ」

 デックとムクラが溜め息をつく。

「……今までのは全没だな」「だな」

 ムクラが机の上に置かれたデザインの紙をすべて机の上からたたき落として、新たに紙の束を抱えて歩いてくる。

「じゃあこれに合わせるんなら、あの子の髪の色と目の色も合わせて色味はこんな感じ、デザインはこれだ」

「それだと肌の露出が多すぎる。若い奴の肌の露出は滑稽だぜ」

「肌きれいだし大丈夫だろ」

「そういうのはもっと色気が出てからでいいんだ。それよりこういう感じでだな」

 物凄い勢いでまたデザインがたまっていく。そんな話し合いを、2時間近くしていた。

 それを見ながら、ツツィーリエ達は最初こそ興味深そうに見ていたが、すぐに飽きたように周囲を見渡す。

 と、ツツィーリエのお腹からグーッと腹の虫がなく音がした。

「お嬢さま、おなかすきました?」

 マーサが尋ねると、ツツィーリエがためらいなくうなづく。

「どうしましょ、とりあえずいったん公爵邸から何か持ってきます。その間少し待ってくださいね」

 マーサが急いでデックの家から出ようと扉の方を向いたところで、その扉が外から開いた。


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