僕と遊園地と友人の知人
布団は暖かい。布団は偉大だ。暑い夜はエアコンを強めに設定して、あえて布団でぬくぬくするのが最高だ。そう考えるとエアコンも布団と同じくらい偉大かもしれない。
夢と現実の狭間。体全体で安物の布団を感じとる。少しざらざらした表面も悪くない。
「道隆、朝だぞ。サンデーモーニングだぞ。遊園地だぞ!準備は出来たのか?」
澄んだ女性の声が聞こえる。最近になって良く聞くようになった声。嫌いじゃないけど、今は僕の眠りを妨げる敵だ。
僕は寝返りを打った。
「起きないか…………。よし、この迸るテンションを力に変えてやってやる!必殺、呼吸困難安楽極楽アタック!」
顔に何か暖かいものが乗る。肌触りはこの布団が比べものにならない程良い。むしろ眠気を増幅……………っ!
「…………ぷはっ!ニア、洒落になってないぞ!」
僕の顔に貼りついていた黒猫を剥がす。
「天国に昇るような気分だったろう?さあ道隆、遊園地に行こうじゃないか!」
首を掴まれて宙に浮いている黒猫はゴキゲンだ。
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朝の支度を終え、そろそろ出発する時間。荷物を持ち玄関に立つ。地面に置いた移動用の手提げ袋に入ったニアが話しかけてきた。
「道隆、本当に私は遊園地に入れるのか?昨日は翔子と2人でまかせろ、なんて言ってたが。もし、遊園地まで行って入れなかったら泣くからな?本気だぞ?」
「大丈夫だ、多分。僕達の計画に穴は無い。さあ、出発するぞ。」
僕はそう言ってニアの入った袋を持つ。この猫は日中も家に居る。運動不足で太らないか心配だ。
「ニア、そろそろ運動しないとな。」
「何っ、私が太ったとでも言うのか?私に限ってそんなはずは………………あるかもしれない。道隆、今度から朝の散歩を一緒にしよう。」
「んー、そうだなー。起きれたら川沿いまで行くのも有りかもな。朝に行くと結構気持ちいい場所だぞ。あ、そういえば夏休みは……………」
他愛の無い話をしながら玄関を開ける。押し寄せる熱気は夏そのものだ。曇った空を背中に僕は駅に向かった。
駅に着く。約束の時間より少し早く着いてしまった。
どこか適当な所で時間でも潰そう、と考えていると後ろから声がかかる。
「おっす道隆、早いね。今日はあたしも誘ってくれてありがとう。遊ぶからには目一杯楽しませて貰うよ。」
さばさばした姉御口調。褐色の肌。ポニーテールを風になびかせ、周防亜希は白い歯を見せて笑った。