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僕と幼なじみ2



「やっほーっ!道隆君の部屋も久し振りだねっ。入って良い?」



「ストップ。その前にちょっと片付けさせてくれないか?少し散らかってるんだ。」



部屋の前、鍵を開ける前にまきるに言う。不安要素しか無い現状、先にニアとだけでも相談しておかなければ。



「んー?あたしは気にしないよー?」


「僕が気にするんだ。5分だけ待っててくれ。」


「でもー……、…はっ!し、仕方ないな~!早めにね?」



男の子だし、しょうがないよね。そんな事を小声で言いつつ、目を伏せて頬を染めているまきるは無視してドアを開け中に入る。

ふっ、僕のコレクションは本棚の裏だ。それよりニアと話さなければ。



「ああ、おかえり。道隆。」



テーブルの上で行儀よく座っている黒猫。相変わらず暑さを感じさせない涼やかな雰囲気だ。僕の時間が止まった。



「どうした?道隆。ああ、これか。いやなに、人の趣味を否定するつもりは無い。『ドキッ☆巨乳だらけのメイド館~~今日はスクール水着で少林拳~~』は少々斬新だと思うが、これはこれでなかなか……おふぅ!……ちょっとこれは凄いな……にゃ~。」



テーブルの上で僕のコレクションを恥じらいつつめくる黒猫。めくるな。



「~~~~~~っ!どこでっ!?なんでっ!」


「今朝見送ってから暇だったんでな。やっぱりここは定番の部屋荒らしかなーと……にゃ!?にゃんという複合合体技っ!」


「やめぃっ!!」



ニアから僕のコレクションを取り上げる。顔が熱い。ニアが良いとこだったのにもっと読ませろー、とべしべし足を叩いてくるが無視する。

とりあえずコレクションは布団のタオルケットの中に隠す。



「はっ!?ニア、こんな事をしてる場合じゃ無かったんだ!」



「なんだ?何かあるのか?」



コレクションを隠した所でどうにか冷静さを取り戻す。ニアがタオルケットに潜り込もうとするのを、全力で防ぎながら言う。



「今、外に大家さんの娘を待たせてる。」


「む。」


大事な話なのが分かったのかニアがこっちを向き居住まいを正す。



「大家さんの娘だからって無理やり追い出そうとしてくる訳じゃないし、普通に良いやつだ。お前がここに住むのに反対どころかむしろ賛成してるトコもある。ただ……。」



「ただ?」



「……すごく動物の扱いが下手なんだ……。」



「なんだ。そんな事か。大丈夫、このスペシャルキャットのニアさんにかかれば、少しのあいだ人の相手をするなんて造作も無いことだ。」



胸を張るニア。まあ、こいつなら大丈夫か。



「……そうか。俺も出来るだけサポートするから。……死ぬなよ?」



あれっ、そういう問題っ!?ニアが騒ぐが気にしない。


そう、問題はまきるがニアを気に入るかではなく、ニアがまきるに耐えきれるか、なのだ。

大丈夫、こんなに心意気のある猫だ。お前の死は無駄にしない。




 まだ~?暑いよー、と声が聞こえる。



「ふー。よしっ。覚悟は出来た。君との生活のためだ。人柱ならぬ猫柱にでもなろう。……その代わり、終わったら本の続きを読ませてくれ。約束だぞ?」



つぶらな瞳でこっちを見るニア。……僕も覚悟は出来てる。



「分かった。好きなだけ読めばいいさ。さあ、僕達の聖戦ジハードだっ!」


「にゃーっ!」



僕達に奇妙な連帯感のようなものが生まれた。


ねえねぇ、まだー?と、ドア越しに声が聞こえる。



「待たせた、今開ける。」



 ごくり、と猫の喉が鳴る。

何故だかいつもより重く見える扉が今、開かれようとしていた。

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