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僕と晃の極秘指令2

「それにしても、道隆君と一緒に登校は久しぶりだねっ。入学式以来かなぁ?」


「ああ、言われてみればそうだな。入学初日に一緒に行ったら変にからかわれたっけか。」


「ふふっ。みんながみんな言ってくるから一緒に登校はやめておこう、って道隆君が言ったんだよっ。なのに朝メール見てびっくりしたよ。道隆君から『たまには一緒に行かないか?』なんて。」



 ひまわりのような笑顔を振りまくまきる。肩に届くか届かないくらいの髪は、今日も元気な持ち主の動きに合わせて空を舞う。

 珍しくまきると登校したのは訳がある。言わずもがな、晃からのメールだ。



「まあ、たまには良いだろ?流石にみんな今更感があるだろうし。」


「そうだねー。あ、でも、未だに『付き合ってるの?』って聞かれるよっ。」


「まだそういうやつがいるのか?」


「やっぱりそういう話が女の子は好きだからねー。」



 朝、晃からのメールには続きがある。



“それで、今日向島さんを誘うにあたって、聞き出して欲しいことがいくつかある“


“なんだ?“


“まずは指定の日、今週の土曜日の予定が空いているか、ということだ。“


“自分で聞いた方が良いんじゃないか?“


“そんな事をしてもし空いていなかったら、俺はその場で爆発するかもしれん。それでも良いか?“


“ああもう面倒なやつだな!分かった、聞いてやる。“


“ありがとう心の友よ因みにまだ2、3個頼みたい事があるからよろしく。“



 といった内容だ。正直非常に面倒臭い。だが一度引き受けた以上やらないのもバツが悪い。男、杉村道隆に二言は無いのだ。

 早速まきるに質問する。



「なあ、まきる。今週の土曜って暇か?テスト明けの。」


「土曜日?んー、土曜は陸上の練習があるから暇じゃないよ。どしたの?」


「いや、暇じゃなければいい。忘れてくれ。」



 えー気になるなぁ、と言うまきるを流して携帯を取り出しメールを打つ。ドンマイ晃。



“残念だったな、空いてないそうだ。“



 送信。歩きながらポケットに入れようとすると携帯が震えた。開くと晃からだった。早すぎるだろ。


“次の日の日曜日はどうか聞いてくれ。“



 まあ乗り掛かった船だ。まきるに再度質問する。



「それじゃまきる。その次の日の日曜日は暇か?」


「え?んとね、多分陸上は休みだったから暇だけど……。」


「そうか、分かった。」



 ねえねえ、さっきからどうしたの?、と聞いてくるまきるを、なんでもない、と流す。晃に送信。



“その日は空いているらしい。“


“分かった。次は遊ぶ場所は遊園地で良いのか、それとなく聞いてくれ。“



 相変わらず早すぎる返信。それとなくって適当だなおい、と思いながらもまきるにそれとなく聞いてみる。



「そういえばまきる。最近、遊園地とか行ったか?」


「遊園地?中学校の入学祝いにみんなで行ったきりだから……三年近く行ってないかなぁ。ほら、うちの家族と道隆君の家族みんなで行った時。」


「あー、あれか。そういえばもう三年も経つんだな。……翔子さんが迷子になって、放送で呼び出されたときは申し訳ないけど笑ったなぁ。」


「あれはあたしも本当に面白かったよっ。だってさ、係員の人が『向島翔子ちゃんが迷子になっています。向島翔子ちゃんが迷子になっています。保護者の方は迷子センターに至急お越し下さい』だってっ。」



 くふふっ、と堪えきれずに吹き出すまきる。つられて僕も笑ってしまう。



「それで行ってみたら翔子さんはぶすーっとしてて。トドメに係員さんがまきるに『お姉ちゃんかい?もう妹さんを離しちゃダメだよ。』って翔子さんの目の前で言うんだもんなっ。……くははっ、いかん、あの時の翔子さんの顔を思い出したら………っ!」


「ふふっ、お母さんが悪いから何も言えないもんねっ。……あははっ!思い出したらまた行きたくなってきたなぁ。」



 しばらく笑いの発作は抜けず、二人で笑いあいながら歩いた。そんなつもりは無かったが、図らずもまきるは遊園地に行きたい事が分かった。晃にメールする。



“まきるは遊園地に行きたいらしいぞ“


“そうかっ!分かった、ありがとう。次は学校に着いてから頼む。“



 携帯を閉じてポケットに戻す。まだまきるは笑っている。



「……はぁ、笑ったー。でも、何でいきなり遊園地の話?」


「いや、ちょっとな。」


「さっきから気になるなー。……もしかして連れてってくれるの?」


「僕にそんなお金は無い。聞いただけだから本当に気にするな。」



 えーけちー、と笑いながら言うまきる。僕はそれを無視して先を歩く。多分、僕の顔が笑っていることをこの幼なじみは知っている。まきるが隣に追いついて僕を見ながら言った。



「入学式の次の日から今まで一人だったけどやっぱり、誰かと一緒に登校するのは楽しいねっ!」



 まきるの満面の笑み。無意識のうちに僕は言った。



「そうだな。どうせなら明日から一緒に行くか?」


「いいのっ!?やったー!実は一人で学校行くの、結構寂しかったんだー。」



 あ、晃に誤解されるかも、と思い、やっぱ今の無し、と言おうとしたが、その言葉はまきるの心底嬉しそうな顔のせいで喉の奥に消えていった。晃にはきちんと説明しよう。まきるが僕の前に回り込んで言った。



「えへへ、今日はなんか良い点数が取れそうだよっ。」



 50点は超えろよ、とまきるの横を抜けながら言う。あ、待ってよー、と言いながらまきるは僕の右隣まで小走りし、また二人並んで歩き出す。


 何はともあれ、晃の最初の指令はとりあえずクリアだ。


 まきると話しながら学校へ歩く。報酬は毎朝こいつと話す権利ってとこか。晃に高く売れそうだ、と頭の片隅で考えた。



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