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僕とテスト2日目3



 まきると別れ家に帰って来た。玄関を開け居間に入る。



「おかえり、道隆。」


「ただいま、ニア。」



 寝転がってテレビを見ていたらしい。横になったまま顔をくるん、とこっちに向けて言うニア。僕は鞄を置いてちゃぶ台に座る。時間は昼過ぎ。テレビを見ると、画面には見たことの無い昼ドラが流れていた。何となく猫と2人でそれを見る。



『美加さん!どうしてあんなやつを選ぶんだ!僕の方が顔も良いし経済力もある。なのに……なんで!』


『……ごめんなさい、弘さん。あたしは真さんが好きなの……。だから、あなたは選べないわ……。』



 そう言って去るヒロインらしき女性。残された脇役らしき男性の泣き顔が映る。そしてエンドロール。なんだ終わりか、と思うとニアが話しかけてきた。



「初めて昼ドラなんて見たが結構……凄いな。」


「凄い?」


「うん。掻い摘んで説明すると、冴えない主人公とヒロインは両想いだが恋人ではない。しかし主人公は、主人公の事を好きな別の女性の策略でその女性と一夜を共にする。一方ヒロインはさっきの男性に言い寄られる。親もそれを望んでいる。その男性はエリートで金持ちで一途なんだが、ヒロインは男性の事を悪くは思わないものの好きにはなれない。主人公の浮気を知った男性がその事をヒロインに告げ、交際を迫るが断られる。そしてヒロインは真偽を確かめるために主人公の所へ……が大まかなあらすじらしい。」


「そいつはなんともまぁ……凄いな。」



 昼ドラというのは全部こんなのなのか、と首を傾げながら言うニア。僕も見ないから分からない。



「道隆、何故このヒロインはさっきの男性を選ばないのかな?」


「そりゃ、好きでも無い男と付き合いたくはないんだろう。それにテレビだし。ヒロインは主人公とくっつくもんだ。」


「ふむ、そういうものか。」


「そういうもんだ。」



 地位も名誉も心さえも、全て捧げても手に入らないものがある。でもそれは彼が脇役だから。ヒロインは主人公と結ばれると決まっている。



「でも仮に……。」


「ん?」



 ニアが考えながら言葉を紡ぐ。



「でも仮に、これが現実ならヒロインはこの男性を選ぶというのもあるんだろうな。付き合うことが親にとってもプラスになるなら、主人公を捨ててでも。その方が、みんな幸せかもしれない。」


「まあ、かもな。」



 まったく、男女関係は複雑だな、とニアは言った。僕は言う。



「でも仮に現実なら、親も男性も主人公も全部捨てて通行人Aと駆け落ち、なんてのも面白いかもな。」



 黒猫が笑った。



「ははっ、そうだな。現実は無制限で無限大だからな。誰かの思い通りよりそっちの方が断然面白い。」



 夕食でも作るか、と思い席を立つ。テレビはバラエティの再放送を流し始めた。



「道隆、今日の夕食は何なんだ?」


「今日は一人暮らしの味方パスタだ。おまえも食うか?」


「ん、そうだな。貰おうか。少しで良いぞ。」


「あいよ。」



 そう言って料理に取りかかる。




 もし、次に桐原さんを見掛けたら、思い切って話しかけてみよう。



「あ、ニア。そろそろ一度風呂に入るぞ。最近獣の匂いがしてきたからな。」


「なにっ!?そんな…………ちょっぴりニアちゃん傷付いたぞ。前はよく『なんかいい匂いがするー。これがフェロモン大人の色気!?』と評判だったのに……。」


「風呂に入らないお前が悪い。飯食ったら入れてやるよ。」



 麺を茹でる間、布団に寝転がる。



「もう私に怖いものなど無い!乙女の尊厳玉砕粉砕アタック!」



 寝ている僕の顔にぐりぐり背中を押し付けるニア。やっぱり獣くさい。無言で抵抗する。それでもニアは止めない。


 こういう事をしてきたのは初めてだ。仲良くなったのか舐められているのか。


……―一度、上下関係を分からせるか。







 その攻防はパスタのアラームが鳴るまで続いた。









僕とテスト2日目    了

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