和梨の孤児 ローデ・ベス国編「寒暖」
風が吹きすさぶあばら家の中で少年は藁で編んだ敷物の上に縮こまる。その傍らには大きな図体を横にして少年の暖となっている犬が一匹。それはまだ寒さを知らない秋口のことだった。
「暑いねーもう秋だってのにまだこんなに熱を持ってるよ」
「仕方ないよ、最近はどこの国でもこんな感じらしいし」
「でも夜から朝にかけては毛布を被るようになったな」
いつものように天気の話なんてしながら進む旅の途中、俺たちは小さな村に立ち寄った
ここはミラベル国の街の先、小さな丘を越えたところにある農村である
この辺りの建物は土で造られた家が多いな。壁の中はなんだろうか石だろうか、木だろうかそれとも藁?
曇り空の下、そんなことを思いながら村を見て回る。時折人々とすれ違うが、穴が空いていたり破れていたりした服を着ている。おそらく毎日は洗濯できていないのであろうそれを大事に着ている、というよりかは代えがないのかもしれないと考え直す。それだけでもこの村の経済力を測れてしまう自分に嫌気がさすのであった。
それでも目を背けていては歩いて渡れない。
途中、小川が流れており水には困らないであろうことに少しだけ安堵した。
向こう岸から老人がひとりと荷車を大きな図体で引きながらこっちに向かってくる犬が一匹。老人は武骨な手で犬を撫でていた。
すれ違い様に見たひとりと一匹の目は遠くを見ており熱を感じさせなかった。
村の外れにあばら家ひとつ。
中には誰もいない。当たり前か、こんなところに住む人なんていないだろうと見当違いなことを思う
背後で声がした。
「うちに何か用ですか?」
「えっ……あ、いやどこか休めるところを探していただけだよ」
「あ、じゃあうちへどうぞ。なにもないところですけど。もうじき雨が降ります、雨宿りしていってください」
そう言うと少年はマッチを取り出し崩れかけのろうに明かりを灯す
たったそれだけなのにその優しさに暖められた。さっきまでの熱とは違う心地よさに俺たちはただ漂うだけだった
しばらくすると少年の言ったように雨が降りだし、束になり雫となって上がる
届く先では微笑みを湛えた天使が受け取る
俺たちはお礼にと毛布を渡す
少年が冬を越せることを願って……
いや、越さない方が幸せなこともあるのかもしれない
俺は光が橋のようにさす天上を見つめることでやり過ごすのだった




