ゆうしゃはうえからやってくる
俺の双子の兄は優秀だった。
回復魔法なんかそこらの神父より使えたし、攻撃魔法だってお手の物。
兄はいつも言っていた。大賢者となって、勇者とともに魔王を倒すんだって。
俺は不出来な弟で、回復魔法なんか使えないし、攻撃魔法だって大した威力も出ない。今ならそこそこ戦えるけれど、当時は魔力もクソみたいな量しかなくて、まあ、捻くれてた。
だから旅に出たんだ。兄のことは尊敬していたけれど、あの村は居心地が悪すぎて、逃げ出したかった。兄と比べられるのはどうにも辛かったから。俺はどこまでも弱くて、雑魚だったんだ。
蛇の顔が、逆さに見えた。違う、俺が逆さまになっているんだ。
俺を食べようとしているのだろうか。馬鹿なモンスターだ。こんな俺を食べたって大した腹の足しにもならないだろう。
毒が体中を巡って力が入らない。呪文をとなえるどころか指一本も動かないのだ。俺は、ここで死ぬのかもしれない。
何で格好つけてモンスターの前に出ちゃったんだろうな。
兄ちゃんみたいに格好良く人を助けて、感謝されたかったんだろうな。
とことん馬鹿な自分に笑えてくる。
そうだ、ヒヨコ。
魔王を倒すなんて、馬鹿みたいな目標を言っていた弱虫。雑魚。
ヒヨコは、ちゃんと宿から抜け出せただろうか。
いや、あいつのことだ、怖くて宿の中で泣いているに違いない。
どうか、ヒヨコがこのモンスターに見つかりませんように。
その瞬間、雷光が一瞬にして町中を照らした。
急に俺の身体は宙に放り出されて、地面に突き落とされる。
ドシンっと地震のような音がした。でも地震じゃない。蛇のモンスターが、地面に倒れたんだ。
俺は動かない体を無理やりに動かして、蛇を見た。
蛇の頭に、剣が突き刺さっている。誰かが蛇の頭を一突きにしたのだ。
ゆっくりと剣が引き抜かれて、剣はおさめられた。
月の光に照らされて、その英雄の顔がはっきりと映し出された。
「ハル、ダイジョブ……?」
ヒヨコは、まるで勇者様みたいな顔して、俺のことを見下ろしていた。




