ゆうしゃのめざめ
「いたぞ! 勇者の住む村だ!」
「けけけ! 俺たちは魔王様の手下だ! 焼き払ってやる!」
真っ赤に染まる故郷。村人たちの悲鳴。
手を引かれる、小さな子ども。魔法の炎に身を焼かれ、魔物の牙に身を割かれて、ボロボロの身体を引きずるようにして少女は走っていた。
「ここに隠れてなさい」
母親に言われて、少女は狭い狭い地下室に身を隠した。
「必ず成し遂げるんだ」
父親が強く肩を揺さぶった。少女はわけもわからず、頷く。
「いつか必ず、お前が魔王を」
真っ暗闇の中、微かに地上から聞こえてくる音が、徐々に、小さくなっていく。
気が付けば、少女は目を閉じ、眠ってしまっていた。
母親と父親が、必ず助けに来てくれることを祈って。
「……」
パチッと目を開き、ぼんやりと天井を見上げる。陽の光が入ってきて明るい室内。自分は一体何をしていただろうか。身体を起こそうにも上手く力が入らない。
そうして戸惑っていると、ガシャン! と大きな音がした。びっくりして、首だけを動かしてベッドの横を見る。
そこにいたのは見知らぬ老人。彼は長いひげを震わせ、目を開き、わなわなと震えていた。その手に持っていたのは花瓶のようで、床に落ちて転がり、床が水浸しになっていた。
「目覚めとる……」
「……」
「目覚めたんじゃな!!」
老人は心底嬉しそうに笑顔でそう言って、目に涙を滲ませながら少女に近づく。
「もう、目覚めなかったらどうしようかと……名前も知らぬお嬢ちゃんを拾って毎日毎日祈っておった。神よ、どうかこの子を救いたまえと……」
「うう……すまん、涙が……」
「わかるか? おお、無理に身体を起こすでない」
「お主は、もう10年も眠ったままじゃったんじゃ」
「……ママ……? パパ……?」
これは、中身6歳の少女が、魔王を倒す旅に出るお話である。




