第7話 うちの海馬がモテすぎて困る
「うぅぅ寒ぅー」
「なんで学校にはストーブしかないのかねえ」
最近は気温が氷点下まで下がるようになってきた。
「俺新しい服欲しいわー。冬服買い占めようかな……」
「流石金持ち。私も欲しいなー」
「誰が金持ちや。あそうだ!」
「なに」
「山城も一緒に買いに行こうよ!」
「え!行きたい!」
「よっしゃ決まり!じゃあ日曜日に駅集合で!」
「了解!」
(やば超楽しみぃ!)
〈日曜日〉
「お待たせー!待った?」
「全然!俺も今来たとこ」
「それ待った時にイケメンが言うセリフやん」
「いやそんな事ねえから」
「あーあ、海馬イケメンだからなー。逆ナンとかどっかの事務所スカウトされちゃうんじゃないの?」
「そんな世の中甘くねえよっ」
「海馬のイケメンが世間に知られてしまうー!」
冗談のつもりだったのに……
電車に乗れば
「ねぇ、あの二人イケメンじゃね…!?」
「え…!?どこどこ…!?マジじゃん…!」
(早速見られてるー!うんうんわかるよ。イケメンだもんね、スタイル良いもんね、かっこいいもんねー!あの二人イケメンって…。そりゃうちのエースですから(?)ん?二人?ってなんで私もーーー!?)
街に降りれば
「すいませんそこお兄さん達!今お時間ありますか!良かったら私たちと一緒にお茶とかどうですか!」
(今度は逆ナンー!?早い!フラグ回収が早すぎる!うんうんわかるよ!こんなイケメンとお茶したいよね!お茶しばきまわしたいよね!お兄さん達って…ん?待って、なんで私もーーー!?)
「あーごめんなさい!今からこいつと買い物で!」
「そうなんですね!こちらこそ急に話しかけてすみません!」
「いえいえ、また機会があれば!」
「はい!」
そう言って別れた。
「お前イケメンすぎるだろ」
「そう?普通だろ。てかあの子たち可愛かったなー」
「おい。今日は私とショッピングだからな!」
「はいはーい」
買い物を終えて帰ろうとしたら
「ちょっとそこのお二人さんいいかね?」
「はい、なんでしょう」
「私、こういうものでして」
そう言って差し出してきたのは有名俳優事務所の名前が書かれた名刺だった。
「えっ、これって!」
「そう。二人ともかっこいいから是非うちに来てくれないかな。まあいわゆる、スカウトってやつ!」
(次はスカウトー!?本当にされてんじゃん!冗談のつもりだったのにー!!!しかもめっちゃ有名じゃん!二人ともかっこいいからって…まあこんなイケメンいたらそりゃお迎えしたくなるわ…ん?二人とも?だからなんで私までーーー!)
「えーっとー…」
二人で何も言えないでいると
「もちろん、今すぐ決めてとは言わないよ!ゆっくり考えて、もし入ってくれるなら連絡してくれればいいから!特にそっちの君!犬飼柊って俳優に似てるね!君がうちに入ってくれたら違う事務所に犬飼柊が二人!って有名になると思うんだ!まあ考えておいてくれよ」
事務所の人が立ち去ろうとした。
が、考えるより先に口が動いた。
「すみません!」
事務所の人がびっくりして振り返った。
「私はこの事務所に入ることはできません!本当にごめんなさい!」
事務所の人は
「あぁ、悪かったな」
と言った。
「僕もです!僕はこの事務所には入りません!僕は僕のことを僕個人として考えてくれている所に入りたいので!」
海馬が続けるように言った。
そう言って立ち去った。
そこから駅まで何も話さずただ気まずい空気が流れていた。
何か話そうと思い、話題を考えていると海馬が口を開いた。
「山城」
「はい!」
びっくりして大きい声を出してしまった。
「さっきの、ありがとう」
「え?」
「俺が嫌だってわかって言ってくれたんだよな」
「あぁ、うん。まあ」
「ありがとう」
そう笑う姿はどこか儚かった




