第5話 小さくてもドラマ
いよいよ文化祭当日。全員が揃い、琉玖のクラスの番に。
ステージ袖には琉玖と海馬が先頭に並んでいた。
「体調大丈夫?無理しないでね。」
「うんありがとう。でも実は体調不良で休んだ訳じゃないんだよね。」
「え?じゃあなんで…。」
「だって柊くんが来るんだよ!?下手な演技見せられない!」
「なーんだそんなことか。心配して損したわ。」
「えっ、ごめん。まあそういうことでずっと練習してた。」
「うそうそ冗談。」
そう笑う海馬は緊張を解してくれた。
「そういえばさ、海馬が決めゼリフ言って教室出るところあるじゃん。」
「あぁ、あるね。」
「その後取り残された私アドリブ入ってたんだよね。」
「えっ!?アドリブ!?」
「まあ練習の時に考えたからアドリブではないんだけどね。」
「だとしてもすげぇよ…。」
「ちゃんと見ててねっ。あーやっぱ見ないで。」
「どっちだよ。」
「いや見てて欲しいけどー、そんな良いセリフ言えないと思うぅぅ。」
「まあ見てるわ。」
そんな会話をしていたらナレーションが始まった。
練習通りに進み、いよいよ海馬の決めゼリフに。
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『俺は、誰がなんと言おうと──』
『世界で1番あいつを愛してる!好きで好きで堪らないんだ!』
『じゃあその気持ち、ちゃんと言葉にしなきゃダメだろ。ライバルにそんなこと言われて悔しくねぇの?』
『あぁ、そうだよな。ありがとう。お前はいつまでも最高のライバルだよ。』
『ふっ、そう言うと思ってた。あいつは今、屋上にいる。』
『えっ。』
『行けよ。』
『…わかった。ありがとう。』
そう言って、教室を飛び出した。
『ごめんな。本当は全部知ってたんだ。あいつが好きなのは俺じゃなくて最初からお前だったんだよ。』
『何が最高のライバルだよ…。俺はどこまでも─』
『最低のライバルだよ。』
教室に1人、空を見上げた。
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その後、物語は進み、無事終了した。
会場は拍手に包まれ、海馬と琉玖は顔を見合せ、微笑みあった。
「海馬ぁ!めっちゃ良かった!」
「いやこっちのセリフな!あれほんとにアドリブかよ!てか演技上手すぎな!?人の事言えねえから!」
「マジで!?めっちゃ嬉しい!」
「そういえば兄貴来てるよ。」
「えっそうじゃん!どこどこ!」
ステージ袖から客席を見ていると、後ろから肩にぽんっと手が置かれた。
振り向くとそこには、
「柊くん!?」
「初めまして。迅がお世話になってるね。あ、ライブ来てくれてるから初めてじゃないか。」
笑う姿は画面の中で何回も見てきた笑顔だった。
「マジで柊くんだ…!やっぱ画面の中で見るのとライブで見るのとも違う…!本物だよね…!?」
「あはは!山城ちゃんおもしろ!可愛いー本物に決まってるじゃん!あ、ごめんマネから電話。この後すぐ仕事なんだよねー。またね!山城ちゃん!」
「あっはい!可愛いって言った…?言っ…たよな…?」
「はいはい兄貴に惚れるのそこまでー。」
「あぁごめんつい。」
「しょうがない、今日は許してやる。」
「今日はって何。」
笑っていると海馬がそっと手を出した。
2人で声を揃え、手を重ねた。
「「いぇーい!」」
パァン!
ハイタッチした手は少し痛かった。




