第2話 オタク特有の早とちり
「山城!」
呼び止めたのは迅くんだった。
(なんで迅くんがァァァ!?)
「これ…ノート…!渡し忘れてたから…!」
「ごめんごめん!ありがとう!」
(何勘違いしてんの私ーーー!そうだよノートだよ!ん?待てよ?)
「今山城って、なんで私の名前知ってんの?初対面だよね?」
「あぁ、話しかけてくれた時に名札見た。友達が琉玖って呼んでたからどっちで呼ぶか迷ったけど。」
(イケメンにも程があるだろ。)
「じゃあまた明日ね。」
「うん!ありがとう!」
友達と別れる時はそんなこと思わないのに、今日は何故か「また明日ね」という言葉がやけに嬉しかった。
次の日、いつもより少し早く学校に来た。迅くんは学校に着くとすぐ囲まれてしまう。返すタイミングを逃す前に話しかけなければいけないのだ。
迅くんが学校に来た瞬間話しかけた。
「おはよう!これノート。マジでわかりやすかった。」
「おはよう、役に立ったなら良かった。」
会話が終わるとすぐ囲まれていた。
勉強をしていると囲んでいるところから会話が聞こえてきた。
「ねぇ迅くんって犬飼柊って人に似てるよね!私最近その人推してるんだけどめっちゃ似てる!」
「俺も見たことあるわ。似てるかも。」
(私以外にも思ってた人いたーーー。)
なんて返すのか気になって盗み聞きしていると迅くんが口を開いた。
「へー、よくわかんないけどありがとう?」
めっちゃ無関心ーーー。くっそ興味無さそう。
(もうちょい柊くんのこと話したら興味持ってくれそうではあるんだけどなぁ。)
そんなことを思ってたら数日が経った。
ある日、生徒会の仕事で居残りをしていると迅くんに会った。
「あ、山城。お疲れ。」
「迅くん!お疲れ!」
「まだ迅くんって。呼び捨てで良いって。俺も山城って呼んでるし。まあ俺が勝手に呼び捨てにしてるだけなんだけどな。」
「良いの?じゃあ海馬で。」
「やったー。距離縮まった感ー。」
(柊くんのこと話してみるか。)
「そういえば海馬に似てる人がいるんだけど。」
「それって犬飼柊って人?」
「やっぱ言われる?」
「まあねー。」
「Eternixってグループの人でイケメンでかっこいいよ。そのグループの中ではダンスやってるんだけど歌も上手い。」
「イケメンに似てるなら良かった。」
あんま興味変わってなさそう。
気まずさを紛らわすように話を変えた。
「でも!身長も声も海馬の方がちょっと低いし、海馬は頭良いけど柊くんは馬鹿で可愛い。海馬は笑うとえくぼ出るし、まあ私が柊くんの限界オタクってこともあるけど、よく見ると似てないところもあって、柊くんも好きだけど、海馬も好きだよ。」
「え?」
「へ?」
(何言ってんの私ーーー!?これじゃ普通に告白しただけじゃん!違うんだ海馬!いや違くはないけど!)
「いや違くて!そういう意味じゃ!」
「ぷっ、ははは!」
海馬は吹き出したように笑った。
「ごめんごめん、必死すぎて…!あははは!」
「うん…誤解を生まなかったなら良かった。」
そこから数分は笑っていた。
この出来事が2人の人生を大きく変えるきっかけになったことはまだ誰も知らない。




